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【特集】

経営人材育成

ホールディングス化、M&A、親族外承継に伴う分社化など、企業経営のスタイルが多様化する中、自社を牽引する複数の経営人材の育成が急務となっている。中堅リーダーの目線を経営視点まで引き上げる、実践型の「未来創造機能」の実装メソッドを提言する。
2022.08.01

ジュニアボードを活用し、次の100年に向けた若手リーダー人材育成へ:大石膏盛堂

2020年にスタートしたジュニアボードは、2021年10月から2期目に入った。若いメンバーからの自由な発想や提案に期待が高まる

 

 

2期生はより若手で構成
自由な発想で自社の未来を描く

 

2021年10月に始まった2期目のジュニアボードは、1期目より若い35~45歳のメンバーで構成している。1期生は経営陣と年齢の近い課長クラスを中心に選出したこともあり、経営陣に近い考えの社員が多かったため、より若い目線からの自由闊達な意見や提案が出ることを狙った。

 

「2期生はより自由な発想で考えてくれており、報告を受けるのを楽しみにしています。また、メンバーは各部署のトップが選出しますが、選ばれること自体を喜ぶメンバーも多いのが現状です」と伊藤氏は話す。

 

同社はこの数年、新卒採用にも力を入れており、大学卒、大学院卒の若手社員も増えつつある。「eラーニングの導入やタレントマネジメントシステム活用による人事評価制度の構築を進めています。DXをもっと進め、新人教育に力を入れて、若手にチャンスを与えたい」と伊藤氏は意気込みを語る。

 

実際に最近、20~30歳代の係長クラスの人材の活躍が目覚ましいのだという。

 

「業務改善の一環としてプレゼンテーションを行うのですが、とても良い発表をする若手社員が多いのです。それを見た課長クラスが『自分も頑張らないと』という気持ちになっているのが見ていて分かります。

 

当社は老舗というバックボーンがあって順調に成長してきましたが、私は今、現役員や各部署のトップに、『これからは部下たちと同じ目線じゃダメ。3歩先を見て手を打たないと』と言っています。何よりもスピード感を意識してほしいのです。今までのように構えていてはいけない。若手の活躍により生じるリーダー層の“健全な危機感”が、全社活性化につながると思っています」(伊藤氏)

 

伊藤氏は、第3期目、第4期目のジュニアボードメンバーには、20~30歳代というさらなる若手の起用も考えている。

 

「今後の100年は、堅実さと根気強い姿勢だけではやっていけません。変化・挑戦といったアクティブな姿勢が必要なのです」(伊藤氏)

 

 

次なる100年に向けてバトンをつないでいく

 

膏薬の製造・販売からスタートし、家庭用配置薬、病院・ドラッグストアへの販売、後発医療品のOEM展開、そして海外進出と、時代の流れに即して展開し、事業の柱を何本も打ち立ててきた大石膏盛堂。現在はホールディング体制をとっており、今後は新たな事業会社が大石ホールディングスの傘下に入る可能性もある。

 

「特に、既存事業と相乗効果の出せる新しい領域の事業会社化を検討しています。そうなったとき、事業会社のトップをジュニアボード出身メンバーが務める可能性もあります。

 

今期のテーマは“チャレンジ”ですが、それは創業当初から変わっていません。国内では人口が減少し、市場環境は厳しくなる一方ですから、『ニッチでもナンバーワンになれる場』、つまり“戦える場”を海外市場も含めて探していき、新たな柱を立てていかなければなりません」(伊藤氏)

 

また、今期の新規事業の1つである柔道整復師向けの直販サイトは、開始して約1週間で約170件の新規登録者数を獲得するなど、好調な滑り出しを見せている。2021年11月には、男性化粧品の製造・販売を開始するなど挑戦の姿勢を崩さない。

 

「長期的には、私たち現経営陣が次の世代へうまくバトンタッチできるよう準備しておかなければなりません。既存事業は守りつつ、新たな事業を増やしていくため、事業の広がりとともに、経営視点を持った人材の育成は必須です」(伊藤氏)

 

同社は次なる100年に向け、才気あふれる若い人材とともにスタートを切ったばかりだ。

 

 

「自由な発想で自社の未来を描く、経営視点を持つ人材の育成が必須」と語る大石膏盛堂の代表取締役社長・伊藤健一氏

 

 

PROFILE

  • (株)大石膏盛堂
  • 所在地:佐賀県鳥栖市本町1-933
  • 創業:1907年
  • 代表者:代表取締役社長 伊藤 健一
  • 売上高:100億円(2021年8月期、連結)
  • 従業員数:317名(2022年6月現在、連結)

 

 

 

 

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