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【特集】

経営人材育成

ホールディングス化、M&A、親族外承継に伴う分社化など、企業経営のスタイルが多様化する中、自社を牽引する複数の経営人材の育成が急務となっている。中堅リーダーの目線を経営視点まで引き上げる、実践型の「未来創造機能」の実装メソッドを提言する。
2022.08.01

部門を超えた交流で一体感を醸成:ピエトロ

福岡市・天神の「ピエトロ本店セントラーレ」での接客の様子(上)。2019年にスタートした新事業、スープ専門店「PIETRO A DAY」の店舗(下)

 

 

社員が新たな事業戦略を積極的に提案

 

NEXT VISION PROJECTにより、幹部候補生たちの主体性の芽生えや、部門を超えた一体感の醸成だけでなく、具体的な施策も生まれている。自社の強みや業界内のポジショニングを分析した中から出てきた複数の事業方針は、ジュニアボードメンバーから出されたアイデアをヒントとして経営陣によって事業戦略へと昇華された。

 

「NEXT VISION PROJECTの終了後、メンバーから頻繁に事業に関するアイデアや提案を受けるようになりました。主体的に会社のことを考える社員が増えた証しと捉えています。そのおかげで、経営陣もいろんな視点から事業を考えられるチャンスが増えました」(高橋氏)

 

アイデアの提案は多岐にわたる。例えば、ピエトロの主力であるドレッシング事業の新しい方針もその1つである。

 

ピエトロのドレッシングは同業他社との価格競争に巻き込まれ、思うような業績が残せないでいた。そこで、NEXT VISION PROJECTが打ち出した「『価格競争』から『価値訴求』への転換」という考え方を採用し、値上げを決断。従来のピエトロが持つ「素材本来が持つおいしさ」を前面に押し出した販売戦略にシフトした。

 

同様に、スープ事業についても、拡大路線を打ち出した。それまではスープ事業は通信販売のみで販売していたが、2019年4月に「PIETRO A DAY」という新ブランドを立ち上げ、本格的に展開することとなった。それを横浜、大阪、名古屋、浦和などの直営店や、レストランの店頭など40店舗で展開した。

 

パスタ事業についてはビジョンを見直し、各カテゴリーの目標値を定めて2020年の売上目標を達成した。同事業に含まれる冷凍商品を強化したり、レストランで使用しているパスタの乾麺の販売を開始したり、新しい収益を創出するきっかけとして、「NEXT VISION PROJECT」が果たした役割は大きい。

 

社員の主体性や全社の一体感を醸成、事業拡大のきっかけとして、さまざまな成果を生んだピエトロのNEXT VISION PROJECT。その成果は時を経るごとに大きくなっている。

 

「タナベ経営に支援いただいて4年、予想を上回る成果を上げることができました。成功のポイントはいくつかあると思いますが、各部門の責任者クラスをメンバーに選抜したのも大きい要因だと思います。

 

次世代が育ってきた時期に、またジュニアボードを実施して人材育成と組織の活性化を図りたいと考えています」(高橋氏)

 

 

ピエトロの代表取締役社長・高橋泰行氏。「『おいしい』の言葉を原点に、これからもお客さまと新しい物語をつくり続けます」

 

 

PROFILE

  • (株)ピエトロ
  • 所在地:福岡県福岡市中央区天神3-4-5
  • 創業:1980年
  • 代表者:代表取締役社長 高橋 泰行
  • 売上高:85億4000万円(連結、2022年3月期)
  • 従業員数:276名(連結、2022年3月現在)

 

 

 

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