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【特集】

企業内大学

企業にとって最大の経営資源である「人」は、自社の存続・成長に欠かせない大切な存在だ。持続的成長の基盤となる、デジタルとリアルを融合させた総合的な学習・育成システム「FCCアカデミー(企業内大学)」の設立・運営メソッドを提言し、社員の成長を自社の発展につなげるモデル事例を紹介する。
2022.07.01

「オープンイノベーション人材」を育成:竹中工務店

社員交流の活性化を目的にしたオフィスレイアウト・新しい働き方を導入

 

竹中技術研究所のオープンイノベーション人材の育成方法は、研修プログラムの導入だけではない。2019年には職場環境も大きく変えた。それが社員交流の活性化を目的にしたオフィスレイアウトの改修と、仕事内容や気分に合わせて働く場所や時間を自由に選ぶ「Activity Based Working」(以降、ABW)と呼ぶワークスタイルの導入である。研究所メンバー全体の約7割を巻き込んだ議論を経て実現したものであり、他部署との交流がしやすい環境が実現。個別のデスクはなく、社員が好きな場所で仕事ができるフリーアドレスへ移行した。

 

この転換により、他部門との対話が大幅に増加。改善前との比較では、他部門との対話時間が1.9倍に増加し、総対話時間も1.5倍に増加したという。

 

「ABWにより、数値には表れない変化も生じています。部門を超えた交流が盛んになったことで連携しやすくなり、チームビルディングを生かした働き方が身に付いてきました。密にコミュニケーションが取れることで、協働しやすい環境になったことは間違いありません。また、『働きたい場所で働けている』と感じることで生じる自己効力感や作業効率の向上にも効果を発揮しています」(櫛部氏)

 

イノベーション人材を育成するため多面的に社内改革を進めている竹中技術研究所。その成果は社外とのオープンイノベーション活動にも表れており、実際、国内外で他企業とのプロジェクトが次々に立ち上がっている。

 

同社は米シリコンバレーに拠点を持っており、現地のスタートアップ企業との共創にも積極的だ。例えば、建設現場で撮影された360度写真を整理・共有できるクラウドサービスを提供するHoloBuilder社との技術開発をスタートさせている。こうした活動を通じ、世界最先端の技術導入を図るのが狙いだという。

 

また、国内でも異分野・同分野を問わず、他社とのオープンイノベーションを進めている。通信大手のNTTドコモとは、建築現場の工事計画や工事管理などの業務データやバイタル、歩数、位置データなどの「人」に関するIoTデータを蓄積し、生産性の持続的向上や新しい働き方の構築を目指す。その他、鹿島建設とはロボット施工・IoT分野における技術連携などを行っている。

 

こうした取り組みは、意欲あふれる多彩なバックボーンを持つ人材の獲得にも功を奏している。それを裏付けるのが、専門分野が建設関連以外の社員も同研究所に多く在籍している点だ。電気・電子、環境、生態系分野など、多様な専門領域を持つ社員が社内外の専門家と協働しながらイノベーションに挑戦し続けている。こうした人材が、同社を前進させるエンジンであることは間違いない。

 

 

竹中技術研究所 副所長 櫛部 淳道 氏

竹中技術研究所 副所長 櫛部 淳道 氏

 

 

 

PROFILE

  • (株)竹中工務店
  • 所在地:大阪府大阪市中央区本町4-1-13
  • 創業:1610年
  • 代表者:取締役社長 佐々木 正人
  • 売上高:1兆2604億円(連結、2021年12月期)
  • 従業員数:1万3212名(連結、2021年12月期)

 

 

経営者・人事部門のためのHR情報サイト タナベコンサルティング

 

 

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