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選ばれる会社へ、「決断」を。
【特集】

デシジョンマネジメントシステム

的確で迅速な経営判断が求められる今、社員が質の高い意思決定を行うことができれば戦略実行の精度が上がり、生産性の向上や利益の最大化につながる。管理会計とその運用を含む「意思決定のマネジメント」について提言する。
2022.06.01

KPIが変われば会社が変わる:トラスコ中山、丸井グループ、北の達人コーポレーション、CRISP

3.北の達人コーポレーション
独自の広告最適化システムで利益を最大化

 

 

北の達人コーポレーションの5段階利益管理

出所:北の達人コーポレーションホームページよりタナベ経営作成

 

 

北海道札幌市に本社を構える北の達人コーポレーションは、健康食品や化粧品などのEC事業を手掛ける高収益企業。受注業務やシステム開発などを内製化し、安定成長を遂げてきた。

 

DtoCのサブスクリプション型ビジネスモデルで、「比較検討された結果選ばれる」を基準とする自社ブランド商品開発などの特徴を持つ同社。高収益経営を支えるのは、CPOやLTVを用い採算性の高い広告だけを残すことのできる、独自の広告最適化の仕組みである。CPOとはCost Per Orderの略で、受注1件当たりに要する広告宣伝費。LTVはLife Time Valueの略で、顧客がもたらす生涯売上高を指す。これらの指標を正確に算出・管理し、そこから受注1件当たりに使用可能な広告金額の上限を設定している。

 

同社では独自に開発した「広告最適化のための分析・運用システム」を用い、常時約5000本の広告のCPOを毎日算出。上限CPOを超えた広告は速やかに出稿を停止するという。採算性の高い広告のみが残ることで、ひいては利益の最大化が可能になる。

 

利益を最大化するCPO設定とともに、「5段階利益管理」を徹底することで、売り上げはあっても利益の出ない商品や、販促費がかからず粗利益の高い商品などを洗い出すことができる。利益の上がらない商品を切ることで、経営資源を「高収益を上げる商品」へ集中投下でき、一層の効率経営が可能になる、という善循環だ。

 

こうした経営数値の見える化、最適な業績指標の設定、精度の高いマーケティングにより、同社は安定成長可能な収益構造を実現している。今後は商品のスケール拡大やグローバル展開も視野に、将来的に売上高1000億円、営業利益300億円を目指すという。

 

 

出所:北の達人コーポレーションホームページ

 

 

 

4.CRISP
KPIをリアルタイムで社外に全公開

 

 

JOURNEY お客さまとCRISPがつながる6つのジャーニー

出所:CRISP「CRISP METRICS」よりタナベ経営作成

 

 

2014年に東京で開業したカスタムサラダ専門レストラン「CRISP SALAD WORKS(クリスプ・サラダワークス)」。2022年4月現在、東京都内に20店舗、大阪市に1店舗を展開するほか、サラダのサブスクリプションサービスや、レジ会計不要のサラダストアなども手掛ける“飲食DX”のトップランナーだ。

 

このサラダ専門店を運営するCRISP(クリスプ)は、2021年7月、自社のKPIである売上高や顧客数、LTV(顧客生涯価値)、リピート率、アプリの離脱率などをすべてリアルタイムで見られる「CRISP METRICS(クリスプメトリクス)」を公開した。中でも、「お客さまとCRISPがつながる6つのジャーニー」と題してカスタマージャーニーを6段階に分け、上記のKPIを設定。特にリピート3回目と5回目を取り上げ、丁寧な接客でファンになってもらえること、LTVを上げること、その結果として顧客体験の価値を高めることを大切にしている。

 

模倣されるリスクを取って自社のKPIを公開した理由は、①データ分析やマーケティングのスキルを持つ優秀な人材を採用するため、②データを開示してステークホルダーへの説明コストを減らすため、③売り上げ・客単価・客数という数値だけを指標としがちな飲食店経営を変え、新しい外食の形を創り出すためだという。

 

2021年6月、同社はベンチャーキャピタルのOne Capitalから約5億円の資金調達を実施。2020年の三菱商事からの資金調達と合わせ、累計の調達額は約10億円となった。データドリブンな経営で外食産業を高収益化し、テクノロジーの力で非連続の成長を遂げようとする同社の挑戦は続く。

 

 

 

 

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