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【特集】

SDGsビジネスモデル

「社会性」と「経済性」の両立を目指すSDGsビジネスモデル。持続可能な開発のために解決すべき社会課題を本業に掛け合わせた戦略の構築から、重点テーマやKPI(重要業績評価指標)を明確化し、社内外へ浸透させるまでを一気通貫で設計する方法を探る。
2022.05.02

社会課題を解決する「包む」文化を創造:カナエ

アルミ立体成形のオリジナルパッケージ「コスモパック®」シリーズ。医薬品や化粧品の包装材として多くの企業に採用されている

 

 

パッケージは、使った後はごみになるもの。だからこそ「包む」文化のトップ企業として、SDGsの達成を「事業成長の指標」に据え、持続可能な社会に貢献したい。環境基準をクリアする「サステナビリティ商材」開発とダイバーシティを推進する“総合包装企業”の取り組みを追った。

 

 

SDGsへの取り組みを成長の指標に

 

包装資材商社として1956年に設立したカナエは、包装資材の販売はもとより、受託加工や研究開発、包装機械の設計販売など「包む」をコア事業にトータルサポートを展開。医薬品を中心に、化粧品・食品・メディカル・トイレタリーの5分野で、国内トップレベルのパッケージ総合企業へと成長を遂げてきた。

 

「2015年に国連サミットでSDGsが採択された当初は『サステナブル(持続可能)=環境配慮』という程度の理解でしたが、当社の目指すビジョンが、SDGsを利用することで実現できると気付きました」

 

そう振り返るのは、カナエ取締役会長の中澤孝氏だ。社長を務めていた2019年当時、SDGsを事業成長の指標に位置付ける経営ビジョンを発表し、2022年1月の会長就任後も、SDGs推進の責任者として陣頭指揮を執り続けている。

 

掲げていた10年ビジョンに「持続可能な」というフレーズを追加し、「新しいパッケージで市場を創造し、持続可能な社会に貢献する」を新たな2030年ビジョンに設定。その実現を目指し、SDGsをベースにした3カ年の中期経営計画(中計)が2019年10月に始動した。

 

「クレド『鼎心』で明示しているように、当社には3つの大切な理念があります。CS(顧客満足)とES(従業員満足)、社会貢献や環境対応のCSR(企業の社会的責任)です。CSR方針・指針は、中計始動と同時に、SDGsの達成を目指す活動に取り組む方向性としました」(中澤氏)

 

新たなCSR方針は「『包(つつむ)』で安全安心を創造し、持続可能な社会に貢献する」。CSR指針には、「社員と職場を包む」「お客様と消費者を包む」「ビジネスを包む」「地球を包む」という4つのテーマを掲げた。

 

「新設のCSR委員会にテーマ別で4チームを編成し、委員会メンバーは各部門の担当業務と兼務で取り組んでいます。『ビジネスを包む』のチームは、全社員が当社のパッケージとSDGsがどう関連するかを知り、どうなっていくべきかを考えるために動画を制作して勉強会を実施しています。また、調達基本方針を定め、取引先に当社の考え方とスタンスを啓発するサプライチェーン管理も開始しました」(中澤氏)

 

「社員と職場を包む」チームは、SDGs推進を含めた学びとチャレンジする風土の醸成、安全・安心の職場づくりに向け、管理職のeラーニング研修を実施。中澤氏も自らメッセージ動画を発信した。

 

「お客様と消費者を包む」チームは、各工場で取り組んできた改善活動「なぜ!?何故!?活動」をCSR方針と結び付け、社会課題の解決につながる全社的な位置付けとして明確化。高品質で安全な製品を安定的に供給し、クレーム件数を減らす全社目標を掲げ、教育体制も構築した。

 

「地球を包む」チームは、ISOの順守を中心に、環境対応に特化した取り組みを続けている。

 

「新しい取り組みもありますが、基本的にはもともと各部門・現場でやっていたことを、全社的に結び付けながら高めています。SDGsに基づくCSR活動と連動させていくのがチームの役割です。SDGsという道しるべに向かって、何をどうしていけば良いのか。すでにあるものを関連付け、解釈し直すことが大事です」(中澤氏)

 

長年かけて培った理念やCSRという“自画像”を正しく認識し、SDGsに重ね合わせることが「成長への指標」となっている。

 

 

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