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【特集】

マネジメントDX

海外では「ビジネスの成果に貢献する付加価値部門」と位置付けられるバックオフィス部門。だが、日本では「下支え部門」という認識が根強く残るのが現状だ。バックオフィス業務の無駄を洗い出し、最新のデジタル技術によって改善を施すためのシステム再構築メソッドを提言する。
2022.02.01

DX推進で収益不動産のリーディングカンパニーへ:プロパティエージェント

社内のITリテラシー向上がDXの質を向上させる

 

コロナ禍をきっかけに、バックオフィスDXを検討する企業は増えている。ただ、DXは打ち出の小槌ではない。目的を明確にすることが仕組みづくりの第一歩となるが、中西氏は「最初から効率化したい作業やスリム化できる業務について、全社的に意見を集めると失敗しがち」と指摘する。

 

理由は、「社内のITリテラシーが低い状態で意見を募っても、『どのくらい費用を削減できるのか』『デジタル化するために、どの程度の費用がかかるのか』といった視点が欠けている」(中西氏)からだ。バックオフィスDXを初めて導入するのであれば、社内で重複している作業を探し、費用と効果のバランスを見ながら導入する方法もある。DXによって仕事が楽になる経験をすると社員の意識が変わり、より現実的な提案につながっていく。

 

中西氏も、「DX推進には、社内のITリテラシー向上が非常に重要です。DXのPDCAを回す中で各部門のITリテラシーが上がっていくと、効率化に対する意識も高まっていきます」と話す。同社では、社員からコスト・工数を意識した提案が出るようになり、DXが業績や事業拡大に貢献している。このPDCAを高速で回し続けていることが同社の成長を支えているが、そこからさらに一歩進めた改革もすでに始まっている。

 

「当社では2021年9月に各部署のミッションを変更しましたが、全ての定常業務のコスト・工数削減を、ほとんどの部署でミッションの1つ目として挙げています。KPIですから当然、業績評価や個人の評価にも影響するよう設計しました」(中西氏)

 

全社を挙げたDX推進への本気度が伝わってくる。

 

プロパティエージェントは2021年にシステム開発を手掛けるアヴァント(東京都中野区)をM&Aでグループ化した。今後は高度な技術を生かしながら、グループ一体でDX戦略をさらに加速させていく考えだ。

 

「社内のDXに関しては、当面はMA(マーケティング・オートメーション)とバックオフィスを重点と考えています。現在、毎月1000件以上の資料請求がありますが、不動産購入に至るのは数パーセントに過ぎません。少しでも成約率を上げるために、PDCAを高速で回しながらMAの精度を上げていくことが重要です。

 

一方、バックオフィスDXについては、賃貸管理などルーチン作業の多い部署にはRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)で効率化できる部分がまだありますし、会社全体で横串を刺した工数や費用の削減も必要だと考えています。例えば、履歴書の情報を総務とひも付けることで人事評価や営業成績などまで一括管理するなど、まだできることは多く残されています」(中西氏)

 

DX推進に「ここまでやれば完成」というゴールはない。同社は今後もDX推進に注力しながら、長期ビジョンである「イノベーションを起こし続ける企業」の実現を目指していくという。

 

 

プロパティエージェント 代表取締役社長 中西 聖氏

 

 

PROFILE

  • プロパティエージェント(株)
  • 所在地:東京都新宿区西新宿6-5-1 新宿アイランドタワー41F
  • 設立:2004年
  • 代表者:代表取締役社長 中西 聖
  • 売上高:275億2300万円(連結、2021年3月期)
  • 従業員数:146名(2021年12月現在)
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