TCG Review

サイト内検索

vol.18 米大統領選挙の側面
田中 秀憲

1 / 3ページ

us_banner
2017年3月号
 
※本コラム「ワールドワイド トレンド」は、アジア編・ヨーロッパ編・米国編の輪番で毎月掲載しています。


 
 
米国流ビジネス モデルの終わり?
 
 
2016年、世界のスポーツビジネスを揺るがす2つの出来事があった。1つは、米スポーツ用品チェーン大手・スポーツオーソリティー(以下、TSA)の経営破綻(2016年3月)、もう1つはスポーツメーカーの双頭・ナイキとアディダスのゴルフ用品事業撤退である。
 
ナイキのゴルフ用品といえば、タイガー・ウッズが同社のクラブを使用していることで知られる。また、アディダスもゴルフの一流ブランド「テーラーメイド」を子会社に持ち、セルヒオ・ガルシアやジェイソン・デイなどの一流プロと契約を結んでいる。有名プロと契約し、多額の宣伝費用とギア開発コストをつぎ込んできたゴルフ事業を、ナイキとアディダスは手放すというのである(アディダスはシューズとウエア事業を残す)。
 
これは、従来の米国ビジネスの潮目が変わりそうな兆候とも見て取れる。また一般ビジネスにも大きな示唆をもたらす“事件”といえるだろう。従来、米国では、あらゆる製品やサービスにおいて、マスメディアを主体とした大掛かりな広告宣伝を展開し、認知度を高めて市場を刺激。より多くの拠点で販売機会を増やすというのが典型的なビジネス手法だった。
 
ところが、今ではインターネットをはじめとした多様な情報発信ツールが存在する。消費者は、サイトやSNSを通じて製品・サービスのユーザーレビュー、また投稿内容から情報を得て購入を決定する。そのためナイキのクラブを使うタイガー・ウッズがテレビ画面に映っても、それがTSAの店舗売り上げに直結しなくなったのである。
 
これはスポーツ用品市場に限らず、他の市場においても見られる。消費者は家電製品を購入するときでも、またラーメン店を探す際にも、誰もがスマートフォンからサイトやSNSにアクセスし、製品・サービスにまつわる情報を入手している。有名タレントを起用したテレビCMの大量出稿という従来の手法では、企業が期待するほど消費者や市場の関心を集めることができなくなっているのだ。
 
現在の消費者と市場が求めているのは、より詳細で正確な情報提供と、きめ細かいサービスである。そこに対応できないビジネスは淘汰される。企業側が自らに都合の良い情報ばかり提供していると、かえってネット上での情報が重要視され、結果として信頼と市場を失う。このような悪循環の末に、TSAは破綻せざるを得なくなったのだ。
 
先に行われた米大統領選挙でも、こうした傾向が見られた。結果はすでにご存じの通りだが、筆者が注目したのは、多くの主要メディアがこの結果を予想していなかったという点である。つまり、これまで世論をけん引してきた大手メディアは、現在の“市場動向”を読むことができないという事実が明らかになったわけだ。先述したケースと同様、インターネットなど別の手段で情報を入手し、それを行動の際の指針としている人々の動きが分からなかったということである。
 

201703_wwt-01

破綻後に閉鎖されたスポーツオーソリティーの店舗。大型チェーンビジネスは従来型の経営を継続することが困難となりつつある

1 2 3