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Vol.3 損なわれつつある従業員ウェルビーイング

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2021年6月号

 

 

【図表2】施策前後の各指標の変化

 

 

手段としての健康施策

 

このような状況を背景に、ウェルビーイング経営として注目したいのが、1段階目に対する施策を通じて2段階目を高めるという取り組みです。

 

例えば、私は2016年4月から2017年3月にかけて、健康増進施策を従業員のモチベーションや組織への愛着に結び付ける取り組みに関する産学連携の研究会を行い、17の企業で共通の健康増進施策を実施しました。この研究会では、100日間の健康増進活動を、専用のSNSを活用しながら各組織内のチーム単位で競争してもらいました。また、活動の前後で、健康意識やモチベーション、組織への愛着についての質問票調査を実施しました。

 

結果、健康増進活動の実施率を高く維持できたことはもとより、協力意欲や組織への愛着の指標が高まることが分かりました。(【図表2】)なお、仕事そのものに対するやりがいを捉える内的モチベーションが高まらなかったことを踏まえれば、この結果はジョブ・クラフティングなどの別の切り口の重要性も同時に示唆しています。この考え方については今後の連載でご紹介します。

 

健康増進活動の取り組みは、「健康をキーワードとした組織開発の取り組み」と理解することもできます。近年では情報技術の発達に伴い、仕事がパソコンの中だけで完結して、職場での直接のコミュニケーションが少なくなるケースも増えています。また、人材の多様化や働き方の柔軟化に伴い、「みんなが同じ場所で同じように働く」ことによるコミュニティー意識の醸成が難しくなってきています。

 

読者の方々の職場においても、健康というキーワードで職場のチーム活動を行ってみることで、職場を良いコミュニティー・組織へと変えることができるかもしれません。

 

 

※仕事の向き合い方や行動を主体的にすることで、仕事をやりがいあるものと捉える手法

 

 


 

 

筆者プロフィール

武蔵大学 経済学部 経営学科 教授
森永 雄太(もりなが ゆうた)
神戸大学大学院経営学研究科博士後期課程修了。経営学博士。立教大学助教、武蔵大学経済学部准教授を経て、2018年4月より現職。専門は組織行動論、経営管理論。近著は『ウェルビーイング経営の考え方と進め方健康経営の新展開』(労働新聞社)。

 

 

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