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Vol.1 パンデミックを契機にマネジメントを再考する

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2021年4月号

 

 

【図表】ウェルビーイング経営の目的

 

 

リモートワークという働き方が急速に広がり、組織のコミュニケーションやマネジメントの課題が顕在化し始めた中、企業の持続的成長に資するマネジメント手法として、「ウェルビーイング経営」があらためて注目されている。

 

 

皆さん、初めまして。今号から「ウェルビーイング経営のススメ」という連載をお届けする森永雄太と申します。

 

「ウェルビーイング経営って何だ?」と思われた方も多いと思います。一言で説明すると、ウェルビーイング経営とは、従業員のウェルビーイング(個人またはグループが身体的、精神的、社会的に良好な状態であること)を高めることを通じて、中長期的に高い組織成果を持続していくことを目指すマネジメントのことです(【図表】)。

 

本連載では12回にわたって、この考え方について詳しく紹介していきたいと思います。

 

 

再注目され始めたウェルビーイング経営

 

2020年から2021年にかけて、私たちは新型コロナウイルス感染症の大流行を経験しました。この原稿を書いている2021年1月時点でも、東京都に住んでいる私は2回目の緊急事態宣言の下、これまでとは違った形での生活を強いられています。このような状況の中、多くの管理者が、従業員の健康・安全を確保しつつも、組織として成果を上げていくことの難しさに直面したのではないでしょうか。

 

例えば、コロナ禍により浸透した「新しい生活様式」の1つにリモートワークがあります。これまでリモートワークは一部の職種に限られた働き方でしたが、2020年4月に発出された緊急事態宣言を契機に、多くの従業員が経験することになりました。

 

リモートワークの普及によって自宅から出掛ける機会を減らすことができれば、従業員の感染リスクは低減できるかもしれません。一方で、「仕事の成果を出す」という意味では難しいと感じた人も多かったようです。

 

私が監修者として関わった、福利厚生や健康支援サービスを提供するイーウェル(東京都千代田区)の調査結果によると、緊急事態宣言下でリモートワークを行っていた従業員のうち、「今後もリモートワークを継続したい」という回答(「強くそう思う」と「そう思う」の回答の合計)は約60%に上り、好意的に受け取られていたことが分かります。感染リスクの低減以外にも、「通勤時間がなくなり、負担が減る」「自分のペースで働くことができる」という点で、仕事と家庭を両立しやすくなるなど、メリットを感じる人が多くいました。

 

一方、リモートワークで「仕事の質が下がった」という回答(「大きく下がった」と「やや下がった」の回答の合計)も約40%ありました。「思い通りに仕事がはかどらない」「コミュニケーションが取りづらい」といった成果面の課題やデメリットを感じた人が多かったようです。

 

このようにコロナ禍は、私たちが健康で安全に働くことと、成果を出すことへのジレンマを感じる大きな契機になったと言えます。しかし、私たちが気を付けなければならないのは、「従業員の健康と組織成果の両立は、感染症の大流行に伴う問題に限った話ではない」ということです。

 

現代の従業員の働き方とそれを強いるマネジメント手法は、「従業員が持続的に成果を出し続ける」という点で大きくバランスを欠いていることが近年少しずつ認識されるようになってきました。例えばヤフー(東京都千代田区)は「コンディショニング」、丸井グループ(東京都中野区)は「ウェルネス」というキーワードを用いながら、この課題に取り組み始めています。

 

 

 

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