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【対談】

チームブランディング:新しい“モノ語”をつくろう

タナベコンサルティンググループのコンサルチームがクライアントのブランディングやプロモーションを支援。プロジェクトの施策と成果を紹介します。
対談2020.09.30

三菱地所:大手総合デベロッパーが挑むサステナブルで豊かな街づくり

 

サステナブルな街づくりを目指して、さまざまな取り組みを進める三菱地所。街全体を巻き込み、SDGs実現へ向けて取り組むプロジェクトなどを推進している。

 

 

持続可能な社会の実現に注力

 

東京の表玄関である大手町、丸の内、有楽町(通称:大丸有地区)をはじめ、全国の中核都市で街づくりを展開する三菱地所。ビル事業、生活産業不動産事業、住宅事業、ホテル・空港事業、不動産サービスなど多彩な事業を展開する同社は、日本を代表する総合デベロッパーだ。

 

そんな同社は近年、街づくりを通じたサステナブルな社会の実現に取り組んでいる。

 

「三菱地所では、三菱グループの経営理念である『三菱三綱領』、つまり『所期奉公』『処事光明』『立業貿易』を創業以来、大切にしてきました。この三菱三綱領を現代風に翻訳すると、『グローバルな視野に立ち、フェアな事業を通じ社会に貢献する』という趣旨になります。これはSDGsのグローバルな社会課題の解決に向けた2030アジェンダとも共通します」

 

同社がサステナブルな社会づくりに積極的に取り組む背景について、サステナビリティ推進部プロモーションユニット副主事の長井頼寛氏はそう語る。

 

 

廃プラを減少させる「エコ弁プロジェクト」

 

大丸有地区では、三菱地所が中心になって立ち上げた各種団体と連携しながら、さまざまな環境保全活動を行っている。中でも「丸の内エコ弁プロジェクト」は、プラスチックごみとして問題になっている弁当容器のリサイクルを推進するため、2015年に試験的導入、2016年より本格始動した活動。現在、担当としてこのプロジェクトを推進しているのが長井氏だ。

 

「丸の内エリアでは年間約260万個もの弁当が販売されています。その弁当の容器に使われているプラスチックのリサイクル率は低く、ほとんどが焼却されていたのが実情。当然、排出される温室効果ガスも少なくありません。

 

丸の内エコ弁プロジェクトは、丸の内で販売されている弁当容器にP&Pリ・リパックという「はがせる」リサイクル容器を導入し、食べ終わればフィルムを剥がし、きれいな状態の容器を専用ボックスで回収する仕組みです。回収された容器は溶かして再生原料となり、約70%のリサイクル原料率を達成することができます」(長井氏)

 

使用後にフィルムを剥がすだけなので水洗いなどの必要がなく、利用者にとって負担が少ない上、水資源の節約にもなる。エコ弁が普及すればするほど、廃棄物が減る仕組みだ。

 

「このプロジェクトのすごいところは、当社がさほど関わらなくても、飲食店とユーザーが自然に取り組んでいる点。とはいえ、回収率の伸び悩みなどの課題も見えてきているので、今後はさらなる利用促進に向けて手を打っていく予定です」(長井氏)

 

丸の内エコ弁プロジェクトには、丸の内エリアの多くの飲食店(15件)が参加。回収ボックスもエリア内の各ビルに設置し、利用者の利便性を高めている。こうした協力体制の確立や回収ボックスの配置も、街づくりを手掛ける総合デベロッパーだからこそ可能なプロジェクトと言えるだろう。

 

また、2020年5月には、大丸有地区で三菱地所、農林中央金庫、日本経済新聞社、日経BPなどが実行委員会となり、「大丸有SDGs ACT5」プロジェクトを始動。「サステナブルフード」「気候変動と資源循環」「WELL-BEING」「ダイバーシティ」「コミュニケーション」の五つのテーマに基づく複数のプロジェクトを約5カ月にわたり実行し、SDGsを街の中で根付かせていく取り組みである。

 

 

 

 

三菱地所 サステナビリティ推進部
プロモーションユニット 副主事 長井 頼寛氏

 

 

携帯エコバッグを製作し全社員に配布

 

2020年7月1日、プラスチック原料のレジ袋の有料化がスタートした。これを機に、同社では携帯用のエコバッグを製作し、全社員に配布。社員に、環境への意識をよりいっそう高めてもらうことが狙いだ。

 

「特に意識したのは男性社員です。女性社員はすでに自前のエコバッグを持っている人も多いのですが、男性はエコバッグを持つこと自体、まだまだ習慣化されていません。そこで男性が携帯しやすいものにしたくて、タナベ経営の協力を仰ぎました」(長井氏)

 

このエコバッグは、コンビニエンスストアや飲食店舗での弁当購入時の利用などを想定している。開発に際しては社員の意見も取り入れながら、男女問わず利用しやすいデザインや色になるよう意識したという。コンパクトで折り畳みやすく、十分なマチのある設計にもこだわった。「男性は女性に比べて昼食の量が多いので、ボリュームのある弁当も入る、ある程度容量があるエコバッグにしたかった」(長井氏)からだ。

 

こうした開発コンセプトが社員のニーズを捉え、「使いやすい」「畳みやすく邪魔にならない」など評判も上々。すでに多くの社員が愛用しているという。

 

現在は新型コロナ禍の影響により中断しているが、将来的には大丸有地区でのエコバッグの展開も視野にある。街中の随所にエコバッグを設置し、使用済みのバッグは回収してクリーニングを行い、再びリユース(再使用)できる仕組みを構築していく計画だという。

 

 

ラグビーW杯に協賛
応援グッズで海外観光客をおもてなし

 

三菱地所と言えば、ラグビーのスポンサーとしても有名である。日本中に感動と興奮を与えた「ラグビーワールドカップ2019」のオフィシャルスポンサーとして大会を支えたことは記憶に新しい。

 

ワールドカップ開催期間中には、大丸有地区の外構にラグビー関連のユニークなオブジェを設置したり、丸ビル外構部に「丸の内ラグビー神社」を建立するなど、街づくりを事業として展開する総合デベロッパーならではの応援を行ってきた。

 

さらに、ラグビーの魅力と出合える仮想の街「丸の内15丁目PROJECT.」をインターネット上に開設。ラグビーにちなんだメニューを開発した飲食店の紹介、ラグビーとビジネスをテーマに多彩なゲストが繰り広げるトークセッションなど、街に見立てた設計のサイト内でコンテンツを充実させている。ワールドカップ後もラグビーの魅力を発信し、ファン同士の交流を継続するのにも役立っているという。現在は約2万人が丸の内15丁目の「住民」として登録している。

 

自らも学生時代はラガーマンとして活躍した長井氏は、広報部ラグビーマーケティング室副主事を兼務しており、一連のラグビープロジェクトを推進してきた一人である。

 

「ラグビーワールドカップでは、試合が行われた全国の会場に三菱地所のブースを設置し、ラグビーの応援グッズを観客の方々に配布しました。タナベ経営の協力を得てさまざまなグッズを作ったのですが、中でもハチマキと筆ペンは海外観光客に大人気でした」(長井氏)

 

ハチマキは、三菱地所が手掛けた全国各地のランドマーク的な建物や、日本を象徴する富士山などのイラストが描かれたデザインが特徴。自分の名前を書くための筆ペンもハチマキとセットで配布した。ブースのスタッフは、海外から訪れたラグビーファンに名前を聞いて漢字の当て字を教え、筆ペンでハチマキに自筆してもらったという。日本の文化を体験できるよう工夫されたおもてなしとともに、和を感じるハチマキ、筆ペンとも大好評となった。

 

「インクがにじまないよう、ハチマキの生地の織り構造から工夫していただき、名前を書くペンも海外の方に日本を感じてもらうために筆ペンがいいと提案していただきました。こちらが選びやすいように必ず複数案を提案いただけますし、要望を出しても対応が早いので感謝しています」(長井氏)

 

2020年4月からはラグビー日本代表オフィシャルスポンサーとなり、日本のラグビー普及と発展のためにさまざまな活動を行っている三菱地所。サステナブルで魅力ある豊かな社会の実現を目指し、同社の挑戦はこれからも続いていく。

 

 

 

ラグビーワールドカップ日本大会(2019年)などの応援グッズ(上)/インターネット上に開設した仮想の街「丸の内15丁目PROJECT.」(左)/左から三菱地所の長井氏、タナベ経営の小谷(右)

 

 

PROFILE

  • 三菱地所(株)
  • 所在地:東京都千代田区大手町1-1-1 大手町パークビル
  • 設立:1937年
  • 代表者:代表執行役 執行役社長 吉田 淳一
  • 売上高:1兆3021億円(連結、2020年3月期)
  • 従業員数:9619名(連結、2020年3月現在)

 


 

同社の担当として非常に誇りを持っています。タナベ経営のさまざまなノウハウを通じて、「企業の発展貢献」だけでなく「社会貢献」をサポートできるからです。

 

地域・空間と機会(スポーツやイベント)を創造している同社は、今後もますます発展していくことでしょう。

 

また、グループ全体のリソースを活用して行う各プロジェクトには目が離せないものも多く、地図や歴史に残る活動も多数。私自身も日々勉強し、ワクワクしながら活動支援を行っています。今後も、より力強くサポートしてまいります。

 

 

マーケティングコンサルティング本部
デザインプロモーション部 部長
チーフコンサルタント
小谷 将主

 

 

 
 

 

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