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100年先も一番に
選ばれる会社へ、「決断」を。
【対談】

チームブランディング:新しい“モノ語”をつくろう

タナベコンサルティンググループのコンサルチームがクライアントのブランディングやプロモーションを支援。プロジェクトの施策と成果を紹介します。
対談2020.03.31

淵本鋼機:Web戦術で伝えるCI。長岡の商社、70周年ブランディングへの挑

 

機械工具の提供を通して、長岡(新潟県長岡市)のものづくりの現場を支えてきた淵本鋼機。70周年を迎えた2019年、経営ビジョンを社内外に示すとともに、社内に向けて自社の歴史や強みを共有できるインナーブランディングに着手。70周年CI(コーポレート・アイデンティティー)コンセプトの策定や動画制作を通して、自社の強みや目指すべき姿を明確に打ち出すことに成功している。

 

工場を支え続けて70年。
機械工具の専門商社として100年経営の第一歩を踏み出す

 

新潟県長岡市に本社を構える淵本鋼機は、1949年に機械工具の専門商社として創立された。戦後間もない時代に誕生した同社は、創業者・淵本正作氏の「日本のものづくりを復興させる」という強い意志の下、切削工具を中心とした機械工具を顧客に提供することで、信越地方のものづくりを支えてきた。

 

その営業姿勢は、顧客との密接なコミュニケーションを通じて「最新、最高よりも『最善』の機械工具」を提供すること。「工場のツールドクター」として、切削工具などの適切なアドバイスを行い、多くの顧客に貢献してきた。

 

2代目社長・淵本正剛氏は、市場の変化に合わせてナショナルブランドの取り扱いを開始するなど、「マーケット開拓者」として事業領域を拡大。そして、3代目となる現社長・淵本友隆氏は海外展開サポート事業を展開。2014年にはタイ・バンコクに駐在事務所を開設し、「グローバルサポーター」として、海外進出企業へ機械工具・機器の提供をはじめとする総合的な物流支援を行っている。

 

国内外を問わず幅広い営業活動で顧客の事業を支えてきた淵本鋼機は、2019年に設立70周年を迎えるに当たり、その記念事業を計画することになった。

 

「タナベ経営に経営コンサルティングを依頼しているご縁で、SPコンサルティング本部(現マーケティングコンサルティング本部)を紹介いただいたのがきっかけでした。お願いしたのは、70周年CIコンセプトの策定と、それをベースにした販売促進ツールへの落とし込み、当社が毎年開催している展示会『プロダクティブフェア』への集客などです」

 

淵本氏はそう振り返る。2018年6月のことだった。目的は二つ。一つは70周年事業を機に、企業ビジョンを社内外に向けて明確に打ち出すこと。もう一つは、淵本鋼機と顧客の重要な交流の場であり、商談機会でもあるプロダクティブフェアを70周年事業として、より活性化させることであった。

 

ホームページのトップ画像も、70周年を機に刷新。左から順に、同社で数十年前に取り扱っていた工具を時系列で並べ、最後は最新の工具を配置。同社の過去、現在、未来を右肩上がりで表現した

 

 

70周年事業で顧客と社内に経営ビジョンを示する

 

周年事業は社外に対して自社の姿勢をアピールする機会でありながら、インナーブランディングを図る上でも重要な機会となる。つまり、経営方針を共有し、自社の理解を深めてもらい、社員に仕事へのモチベーションを高めてもらうのである。対外的なPR効果と社内ブランディングという二つの目的を果たすべく、淵本鋼機の70周年事業が進められた。

 

「タナベ経営 SPコンサルティング本部に私の思いや経営の方向性を伝えました。提案いただいたビジュアルを自社サイトのトップページに掲載したことで、当社が目指すべき方向性を内外にアピールできたと感じています」(淵本氏)

 

同社ホームページのトップにあるメインビジュアルは、同社が販売する主要製品である切削工具が右肩上がりに並べられ、過去から未来に向かって成長していくイメージを表現。このビジュアルに「ビジョン実現パートナーとして会社の未来をともに創る~Challenge to “Only be Chosen”~」というメッセージが添えられている。

 

これは、製品提供のみならず、適切なアドバイスなどソフト面も含めたプラスアルファのサポートで、顧客のあるべき姿を実現するという淵本鋼機の経営姿勢をストレートに表したもの。その姿勢を広く伝えるために、同ビジュアルはリーフレットやポスターにも展開されている。

 

また、70周年を記念して社史や会社概要を紹介する動画の制作も、タナベ経営に依頼した。動画は社員の研修旅行などで活用されているが、こうした制作物によって社内にも変化が表れ始めているという。

 

「私は3代目社長ですが、初代や2代目の現役時代に入社した者も在籍しており、幅広い年代の社員が働いています。時代背景や仕事に対する考え方の違いから少なからず世代間ギャップもありましたが、それを埋めるツールとして効果を発揮しています。また、若い社員は以前よりも主体的に行動するようになるなど、私自身の思いが社員に浸透してきている実感があります」(淵本氏)

 

今まで築き上げた販路網を図解化し、デザインの一部としたホームページのトップ画像2枚目。販路網の拡大を「未来で輝く光の繋(つな)がり」として表現

 

 

フェア会場の様子。来場者が熱心にメーカーの展示物を確認している

 

メルマガ活用によりフェア来場数が過去最多に

 

社外に対するアピールに関しては、確実に効果が上がった。というのも、2019年4月開催のプロダクティブフェアには507名が来場。これは前年度の約1.5倍、5年前の倍以上に相当する過去最多の数字である。そんな好結果をもたらしたのが、メールマガジンの有効活用だった。

 

「もともとセールスフォースを導入し、クラウド上で顧客情報を管理していました。どうにかして顧客リストを活用できないかと思っていたところ、SPコンサルティング本部にライティング面でサポートいただけると知り、メールマガジン配信サポートを依頼した経緯があります。

 

プロダクティブフェアについて、これまではダイレクトメール(DM)でお知らせしていましたが、DMはコスト上の課題があって基本的に1回しか送付できません。一方、メールマガジンなら複数回、送ることができます。そうすることで、お客さまの目に留まる機会が多くなり興味を持っていただいたことが、来場者数の増加につながったのだと考えています」(淵本氏)

 

メールマガジンは従来のDM発送よりも早い時期からスタートし、合計4回配信。メールマガジンの文章は、毎回新たな情報を追加することで顧客の興味を引くよう工夫を凝らした。

 

また、メールマガジンは、既存顧客に加えて休眠顧客や新規顧客にも送信することで集客拡大を狙ったという。そんな集客拡大施策が功を奏し、好結果をもたらしたのだ。

 

 

70周年記念ブランディング動画も制作。社内向けだが、フェア会場でも限定放映した

 

 

創業100年を目指す社長の目に映る未来は、
「経営改善に繋がる提案ができる商社」

 

淵本鋼機はプロダクティブフェアにおいて、製品展示以外にセミナーも開催している。日頃、感覚的に行っている金属加工の作業を理論的に理解してもらうための、座学中心のセミナーで、金属加工現場で働く顧客企業の社員向けに行われるものである。「ベテラン社員が感覚的に覚えてきたことを論理的に理解し直すこと」を促す内容とも言えるセミナーであり、その評価は高い。

 

「メールマガジンの配信によって、セミナー参加者は昨年の倍以上になりました。製品を販売するだけでなく、お客さまの抱える課題を解決することも当社の大切な役割の一つです。それが『唯一無二の選ばれるパートナーを目指して』という企業ビジョンにもつながると考えています。最善のソリューションを提供する場でもあるセミナーに、多数の来場者を迎えることができたのは大きな収穫でした」(淵本氏)

 

2019年のプロダクティブフェアで、大きな成果を収めた淵本鋼機。すでに次年度に向けた取り組みも進めており、タナベ経営では、会場に訪れた顧客に対するアンケート調査やヒアリングを通して要望を整理中だ。さらに、顧客に満足してもらえるセミナーづくりを二人三脚で進めているところである。

 

次の10年、そして、その先の100周年を目指して、顧客との強固な関係づくりを進める淵本鋼機。その歩みは今後さらに加速しそうだ。

 

 

淵本鋼機 代表取締役社長 淵本 友隆氏

 

 

PROFILE

  • ㈱淵本鋼機
  • 所在地:新潟県長岡市四郎丸4-7-12
  • 創立 : 1949年
  • 代表者:代表取締役社長 淵本 友隆
  • 売上高:41億円(2019年5月期)
  • 従業員数:54名(2019年11月現在)

 


 

2019年のプロダクティブフェアは、集客面で過去最多の成果が上がりました。70周年を機にCIコンセプトを自ら策定し、積極的に推進される淵本社長の姿を見て、あらためて頼もしさや親近感を抱いた社員の方も多くおられると思います。2020年のフェアにおいては、今までと異なるアプローチ、「淵本鋼機社員の力を存分に発揮し、全力でつくりあげるフェア」という位置付けで設計を始めました。私たちの役割は企業の魅力を社内外問わず伝えること。「伝えるプロ」として、引き続き淵本鋼機の発展に貢献していきたいと考えています。

 

 

 

マーケティングコンサルティング本部
SPコンサルタント
藤島 安衣

 

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