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ブランディングフォーラム2021

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2021年4月号

 

 

パネルディスカッション

世界の地域けん引企業は何を考えているのか

 

講師:商品ジャーナリスト
   サイバー大学 IT 総合学部 教授
   北村 森氏

   モバイルクルーズ(株)
   代表取締役社長
   De-Tales ltd. ディレクター
   安西 洋之氏

   (株)タナベ経営 執行役員
   マーケティングコンサルティング本部
   本部長
   飯田 和之

   (株)タナベ経営
   経営コンサルティング本部
   九州本部 副本部長
   平井 克幸

   (株)タナベ経営
   戦略総合研究所 副本部長
   貞弘 羊子

 

平井 日本国内外の地域をけん引する中堅・中小企業のブランドづくりについてお話しいただき、ありがとうございます。ブランディングに成功している日本とイタリアの企業に、共通点はありますか。

 

北村 企業規模が小さくても成功しているのは、プロダクトアウトの開発です。マーケットの中ではなく自分たちの中に答えがあり、作り手として商品がどうあるべきか見定めた企業が強いと感じます。

 

安西 確かに、自分が愛せないものを顧客が愛するわけがありません。

 

平井 今回の講義にあった網元茶屋やブルネロクチネリのように、地域と深く関わっている点も特徴として挙げられます。

 

北村 世界最高峰の自動車のデザインスタジオで働いていたデザインディレクターに、ものづくりに必要な3つの要素を聞いたことがあります。1つ目は「その土地ならではの風土と文化」。2つ目は「ものづくりの技術」。3つ目は、先述した2つを生かす「ビジネススキル」だそうです。

 

1つ目と2つ目は日本とイタリアの企業に共通していますが、3つ目は日本企業の弱いところだと思います。いかに地域の強みを生かすかが課題です。

 

安西 イタリアにはアルタガンマ財団という、高級ブランドが加入している組織があります。例えば、中小規模のブランドが自社だけで市場調査機関へ依頼するのは費用面から厳しいわけですが、財団から依頼すれば1社にかかる負担が少なくなる上、業界全体で情報が共有されます。

 

国内企業同士のつながりがあることが、老舗だけでなく、スタートアップもラグジュアリー市場でチャンスを得やすい土壌をつくっています。

 

飯田 なぜ日本からメガブランドが生まれないのか。その要因の1つとして「優しくて内向きな日本人の気質があるのでは」と言われています。イタリアの企業のように市場で存在感のあるブランドを構築するためには、日本企業には何が足りないのでしょうか。

 

安西 異なる文化があるという考え方が重要でしょう。日本国内でも、関東と関西で受け入れられるものが違うように、地域によって「良い」とされるものは違います。

 

例えば、日本人はイノベーションや先端性がラグジュアリーであると認識しない傾向にありますが、イタリア人はラグジュアリーであると認識します。異なった見方や認知が世の中にたくさんあると知ることが大切なのです。

 

日頃、ラグジュアリーについてさまざまな世界の人に話を聞く機会があります。インドやイタリア、フランスでラグジュアリーマネジメントを教える先生は、口をそろえて「最初に『異なる文化』を教えている」と言っていました。ブランド論や経営について教えるのは、その後なのです。

 

北村 そもそも、中堅・中小企業がメガブランドになる必要はないかもしれません。何も100万人を相手にしなくても、1万~1000人程度の中規模な市場をターゲットにすれば良いのではないでしょうか。

 

安西さんの講義で、日本企業へのアドバイスとして話されていた「中規模量産」が非常に示唆に富んでいます。質も追求しながらしっかり収益化できるだけの規模で、万人ではなく、ある一定の層にちゃんと刺さるように売っていく意識が大事なのだと思います。大企業ではなく、中堅・中小企業だからこそ「この数でいけば利幅もとれて質も担保できる」と見定めることができるわけです。

 

貞弘 ブランドは作り手の思いから始まり、展開、浸透していく上で文化の違いを理解する。また、使い手に寄り添って、相手や相手の地域の文化を知るというアプローチが大切なのですね。

 

北村 アフターコロナは必ずやってきます。輸出に注力するだけでなく、また訪日外国人が戻ってきた時に何をもたらし、何を提供するのか、今のうちに準備しておくのが重要でしょう。

 

安西 例えば、日本の土産はその土地の人が日常で食べないようなものばかりです。それに対してヨーロッパでは、地域の人々が日常的に食べているのより少しグレードが高いものです。土産一つ取っても、どのようにアプローチしていくのか、戦略を考える必要があります。

 

北村 確かにそうですね。地方のヒット商品を研究する中で、私は常々、地元の人が振り向かない商品を他地域の人たちが買うはずがないと言っています。まずは、地元の人たちに受け入れられる、買ってもらえる、そんなものづくりが求められているのです。

 

平井 コロナ禍で世界的に先行きが不透明な中、日本の中堅・中小企業の活路や可能性を示していただいたことで元気になれた方も多いと思います。本日はありがとうございました。

 

 

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