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M&A・ホールディングスフォーラム2020

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2020年12月号

 

 

 

 

次世代に続く事業と組織の成長に挑む

 

 

タナベ経営は2020年9月18日、「M&A・ホールディングスフォーラム」をグランフロント大阪(大阪市)で初開催した。会場には経営者や経営幹部21名が集結。後継者問題の解消や、激しい経営環境での成長に向けたヒントを探る1日となった。(開催後オンデマンド配信を実施)

 

 

ウィズコロナ時代、新常態に対応した企業経営、自社のミッション(存在価値・社会的役割)の再定義が必要になる。とりわけ、「社会課題×高生産性ビジネスモデルの実現」は重点的な経営テーマとなる。

 

持続的成長を遂げるため、企業はDX(デジタルトランスフォーメーション)、M&A、ブランディングへの投資を行うべきである。M&Aに関して言えば、①コロナ禍における企業価格の低下、②事業再編や再建を目的とした売り案件の増加という2つの要因により、検討する企業が増えている。

 

先行きの不透明な中ではあるが、経営者は中長期ビジョンを描く必要があり、そのために中期経営計画の再検討(事業戦略の見直し)、事業ポートフォリオの見直し、事業の成長(M&Aの実行)を行う必要がある。

 

ビジョン達成の要素として、「事業の成長」「組織の成長」「成長を支える経営システム」「成長を実現する経営者(リーダー)育成」の4つがある。とりわけ、分権化した組織への進化は組織全体の成長につながる。そのための究極の組織体制が、ホールディングス体制である。

 

タナベ経営執行役員の福元章士は、基調講演で「今、自社に何が足りないのか。いつまでに条件を整備するのか。その決断が、今後の会社の成長と成長スピードを決める」と提言。続くゲスト講演では、ヨシムラ・フード・ホールディングス、イノチオホールディングスの経営陣が講演。ホールディングス化の取り組みに関する失敗談、M&A実務のポイント、M&A事例などが紹介され、参加者にとって有意義な時間となった。

 

 

 

 

 

ゲスト企業講演

中小企業支援プラットフォームを
活用したM&A・ホールディング経営

 

講師:ヨシムラ・フード・ホールディングス
   取締役CFO
   安東 俊氏

 

当社のビジネスモデルは、事業承継、人材・資金不足、販路拡大といった課題を抱える中小食品企業を子会社化し、「中小企業支援プラットフォーム」により課題を解決して、グループ全体の成長を図るもの。ベンチャーキャピタルや産業革新機構などからの出資を受けながら事業を拡大し、今では国内に16社、シンガポールに4社のグループ会社を有する。

 

「中小企業支援プラットフォーム」とは、グループ会社を「営業」「製造」「仕入物流」「商品開発」など「機能別に統括」することで、相互補完・相互成長を図る仕組み。ノウハウを持つ人材が統括責任者となり、グループを横断的に統括することで、各社の強みをグループ全体で共有し、弱みを補い合うことが可能になる。

 

当社のホールディングス化への取り組みは、①グループ一体感の創出、②シナジー効果の創出、③シナジー効果の追求の3段階に分かれる。

 

現在は③の段階で、「品質管理」「経営管理」「海外販路」など新たな機能の追加や、専門家人材の採用、CMSによる資金の共有化などを実施。また、懇親会実施や表彰制度の導入により、グループ社員のモチベーションアップを図っている。

 

ホールディングス化のメリットとしては、M&Aが実施しやすくなる、役割分担の明確化、意思決定の迅速化(決裁権限の明確化)、経営人材の育成などがある。

 

ホールディングス経営を行う上で大切にしていることは、従業員のモチベーションの維持・アップ、持ち株会社とグループ会社の対等な関係性、グループの一員であることを誇りに思える風土づくり。これからも、グループの方々が誇れるような会社づくりに努めたい。

 

 

ゲスト企業対談

M&Aを活用した事業ポートフォリオの最適化

 

講師:イノチオホールディングス
   常務執行役員
   金田 良弘氏

 

イノチオグループは、1909年創業の農業総合支援企業。愛知県を中心に全国展開し、グループ会社18社を有する。「日本一、農業を総合的に支援する企業グループ」になることをミッションに掲げ、ホールディングスの傘下に「アグリ・クラスター」「プラントケア・クラスター」など七つのクラスター(事業部)を擁する。

 

グループ成長戦略への対応、グループを取り巻く環境変化への対応、事業承継への対応などの観点から、2015年にイノチオホールディングスを設立し、持ち株会社制へ移行した。

 

「2025年に売上高1000億円、経常利益100億円」というビジョンを掲げる当社は、M&Aを活用した成長戦略を採用。M&A活用により、自社経営資源だけでの実行よりも飛躍的な成長が見込める。

 

M&Aの進め方として、まずは買収戦略の立案が必要になる。ターゲット企業の情報収集先としては、金融機関(本店)、コンサルティングファーム・ブティックファーム、仲介会社、事業引き継ぎ支援センター、会計事務所などがある。

 

M&A実務では、プレフェーズ(買収活動に入る前の準備段階)、NBO(ノンバインディングオファー)、LOI(基本合意書)、バリュエーション(M&Aや投資の際に対象企業の価値を算出する手法)、各種DD(デューディリジェンス:財務的なリスクおよび税務上のリスク情報を得るための調査)、M&A契約交渉など、各場面で専門家が必要になるため、彼らと対等に話ができるよう、M&A実務担当者養成の必要性がある。時間はかかるが、積極的にM&Aを考えているなら担当者の養成、また、M&A専門部署設置をお勧めしたい。

 

中小企業においてM&A担当者に向いているのは、経営企画、経理財務、人事労務、総務系の人材。M&Aの本質は「人と時間を買う」こと。また、M&Aはセンシティブなものであり、買収される側の気持ち、人の痛みの分かる人材が適任。上から目線ではなく、対等の立場で話せることが重要になる。