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建設フォーラム2020リポート

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2020年11月号

 

 

経営戦略の推進状況

※「建設フォーラム2020」参加者へのウェブアンケート結果より(回答数40名)

 

 

三つの突破口で建設業界の働き方を変える

 

 

タナベ経営は2020年6月15日、オンラインセミナー「建設フォーラム2020」を開催した。188社278名の経営者や経営幹部、建設の現場担当者らがオンデマンド配信(配信期間:6月15日~30日)を視聴し、建設業界の働き方を変えるための知見を学んだ。

 

 

リアルとデジタルの組み合わせで現場を変革

 

本フォーラムは、建設業界において働き方改革が必要になる背景などの基調講義(タナベ経営の経営コンサルティング本部・本部長代理の巻野隆宏)」から始まった。

 

働き方改革推進を目的とした「改正労働基準法」により、2024年4月から建設業にも時間外労働時間の上限規制が設けられる。現場単位での「本格的な働き方改革」で、いかに労働時間を減らし、出来高を上げるかが問われる。建設系メディアで「i-Construction※1」が注目されているように、新しい技術や仕組みの導入は必要不可欠な時代だ。

 

建設業界の働き方を変えるには三つの突破口があると、タナベ経営の執行役員・経営コンサルティング本部長である山本剛史は説明する。

 

一つ目は、コア業務や付帯業務といった作業を標準化し、時間配分を付加価値業務に充てる「付加価値業務へのシフト」。「会社に出社する必要があるのか」「現場監督が現場に居続ける必要があるのか」と考えることから新しい価値観=付加価値業務が見つかる。推進ポイントとして、「作業の標準化」「常識(当たり前)を再定義する」「熟練技術者の技術を承継する仕組みづくり」が挙げられる。

 

二つ目は、「デジタル・リーダーシップ」。デジタル戦略のプロに権限を委譲し、デジタルを前提にしたビジネスモデルを構築する組織へ変革することが重要だ。経営トップ直下へのCIO(Chief Information Officer:最高情報責任者)配置率は米国の94%に比べ日本は38%であり、日本ではデジタルが「真の経営戦略」になっていない。推進ポイントは、「自分が使いこなせなくても、ICTツールができることは知っておく」ことだ。

 

三つ目は、「生産性目標の設定」である。出来高や利益目標以外の目標を新しい価値観を踏まえて設定することが重要である。
ICT・AIに過度な期待を寄せるのではなく、「建設現場を変革するのは現場を担う現場監督である」ことも忘れてはいけない。リアル(現場)とデジタル(ICT・AI)両面の組み合わせで建設業界は変わっていく。

 

ゲスト講師は、エクサウィザーズと可児建設の経営陣。AIテクノロジーやICTといった先進的な技術を用いた、建設業界ならではの働き方改革への取り組みを聞いた。ITツールの活用事例を中心に紹介いただいたが、ツールを導入するだけで明日から現場の生産性が飛躍的に上がるわけではない。「現場の改善なくして生産性の向上なし」と、山本は本フォーラムを締めくくった。

 

 

 

ゲスト企業講演

AIテクノロジーの利活用による
建設業界の“リアル”な生産性向上

 

講師:(株)エクサウィザーズ
   執行役員
   AIプラットフォーム
   事業部長

   大植 択真氏

 

AIテクノロジーを中核技術に、製造、医療・ヘルスケア、金融、不動産、飲食、建設など幅広い業界に事業展開をしているエクサウィザーズは、ハード・ソフトの両面から戦略的視点でテクノロジー利活用のサービス提供を行い、産業構造の変革を担っている。建設業界におけるAI活用の可能性は幅広い中、当社は特にAIカメラを用いた「建設プロセスの効率化」「監視・パトロールの自動化」を得意とする。

 

自社開発のAIカメラで現場を俯瞰することで、異常発見や作業員の状況などの情報を抽出。作業者やトラックの出入りなどの導線を解析し、結果を基に効率化に役立てる。例えば、パフォーマンスの高い熟練作業員と新人の作業員の導線を解析し、熟練作業員の動きをモデル化することで現場の生産性を高めている。

 

建設業における労働災害発生率は、他業種と比べても高く、監視・パトロールの自動化は現場の生産性に直結する。当社ではAIカメラを用いることで、作業者のふらつきや危険エリアへの立ち入りを瞬時に補足し、事故を未然に防ぐことができる。

 

さらに、これまでのAI利活用を推進した実績・モデルをプラットフォーム化。多種多様な目的に応じて、幅広いテクノロジーを組み合わせたソリューションを提供する。

 

現在、AIは現場で活用されることが多いが、今後AIの導入が進むと一番影響を受けるのは現場監督である。業務の管理・監督、オペレーションの最適化など、AIの役割が技術の向上に合わせて広がっているからだ。建設業界の働き方改革においては、特に現場監督の業務改善が急務である。

 

 

ゲスト企業対談

中小建設業におけるICTを活用した
技術開発の展開

 

講師:可児建設(株)
   代表取締役
   可児 憲生氏
   ×
   (株)タナベ経営
   経営コンサルティング本部 部長代理
   大裏 宙

 

可児建設は、地域の環境保全・防災推進を担う建設業である。総合建設業として、公共事業の一般土木、地域防災としての耐震補強、インフラメンテナンス、地球温暖化対策に取り組んでいる。特に、映像を活用した情報化施工※2、i-Constructionなどの取り組みは、大学・企業との技術提携により先進的な施工管理技術として評価されている。

 

可児建設の展開する「Visual-Construction」とは、映像デバイスを用いた現場管理である。現場にカメラを設置し、発注者と施主担当者が映像と音声を用いてリアルタイムでやり取りすることで移動や待ち時間がなくなり、管理業務の省力化・少人化に寄与する。言葉や書面に比べ、映像でのやり取りはイメージがつかみやすく、報告では気付けなかった現場のミスも発見できるという。

 

現場技術者の空間認知能力は、時間がたつにつれ曖昧になってしまう。日常的に映像を確認することで、現場の状況理解度が向上した。離れた場所でも現場を「リアル」に認識できるため、この仕組みを「第3の目」と呼んでいる。

 

建設業界の生産性向上においては、本社と現場、高所・難所といった「距離」の壁、作業時間、移動時間といった「時間」の壁、理解度・生産性格差といった「人の能力」の壁が課題だ。今ある技術をどう組み合わせればこの三つの壁を取り除けるかが、建設業の働き方を変える第一歩になる。

 

 

※1…国土交通省が2016年に掲げた「生産性革命プロジェクト」の一つ。測量から設計、施工、検査、維持管理に至る全ての事業プロセスでICT(情報通信技術)を導入することにより、建設生産システム全体の生産性向上を目指す取り組み

※2…建設事業における「施工」において、ICTの活用で各プロセスから得られる電子情報をやりとりして高効率・高精度な施工を実現するシステム