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【研究リポート】

イベント開催リポート

タナベコンサルティンググループ主催のウェビナーやフォーラムの開催リポートです。
研究リポート2019.07.31

建設・住宅フォーラム2019
ゲスト:国土交通省、橋爪紳也氏、ゼムケンサービス、加和太建設、エヌ・シー・エヌ

タナベ経営は5月21日、「建設・住宅フォーラム2019」(会場:グランフロント大阪、大阪市北区)を開催した。深刻な人材不足が続く建設・住宅業界の未来に関し、有識者や経営者などが貴重な提言を行った。会場には42社77名の受講者が集い、熱心に耳を傾けた。

 

上段左から、国土交通省 近畿地方整備局 建政部 建設産業第一課長 髙城辰哉氏、大阪府立大学 特別教授(大阪府・市特別顧問)橋爪紳也氏、ゼムケンサービス 代表取締役 籠田淳子氏
下段左から、加和太建設 代表取締役社長 河田亮一氏、エヌ・シー・エヌ 代表取締役社長 田鎖郁男氏、タナベ経営 常務取締役 中村敏之、経営コンサルティング本部 本部長 山本剛史

 

業界の変身に必要な「三つのA」

フォーラムの冒頭、国土交通省近畿地方整備局の建政部建設産業第一課長・髙城辰哉氏が来賓あいさつを行い、建設業界の担い手確保に向けた国交省の取り組み(「建設キャリアアップシステム」推進、外国人労働者制度、女性活躍推進など)について紹介した。

続いて行われた基調講義では、タナベ経営の常務取締役・中村敏之が登壇。中村は、「建設だけでなく運営でも稼ぐ」というコンセッション事業が世界的トレンドになりつつあることを強調し、建設企業は「変身する」姿勢が必要であると述べた。

その変身に向けたキーワードとして、「アクティブ」(女性が活躍する現場カイカク)、「アカデミー」(新入社員を定着させる正しい教育とケア)、「アライアンス」(社会課題解決と向き合う、新たな企業連携の在り方)という「三つのA」を挙げた。

また基調講義後、大阪府立大学特別教授(大阪府・市特別顧問)の橋爪紳也氏が登壇し、同氏が基本構想と計画立案に携わった「2025年大阪・関西万博」や、インバウンド活性化に向けた都市開発などについて講演を行った。

建設×ダイバーシティー

続いて、3社の経営者をゲスト講師に招いたソリューション講義を実施した。1番目は、女性活躍で知られる建設会社「ゼムケンサービス」(福岡県北九州市)の代表取締役・籠田淳子氏。

大工の娘として生まれた籠田氏は、1級建築士の資格を取得して「これから建築業はサービス業になる」と考え、父と共に工務店を立ち上げた。同社の女性活躍推進の取り組み(JKDT 女性建築デザインチーム)は、内閣府の「女性のチャレンジ賞」(2013年)を受賞している。

1級建築士の合格者(製図)のうち、女性が占める割合は26%(2018年)。4人に1人が女性と、近年は女性合格者の増加が著しい。そんな女性建築士のロールモデルをつくり、離職しても戻りやすい環境を整えることが必要だと同氏は説く。2018年4月にはインターネットと研修所を併用した女性向け講座「けんちくけんせつ女学校」を開設し、建設業界に女性の活躍を広げる活動を進めている。

建設×人材育成

2番目に登壇したのが、「加和太建設」(静岡県三島市)の代表取締役社長・河田亮一氏。同社は創業73年の建設会社で、土木工事、農地の土壌整備、建築不動産などの事業を展開している。

経営ビジョンは、「静岡東部エリアを世界中の人が注目する街にしていくこと」だと言う。そこには「建設業の魅力を多くの人たちに届けたい」という願いと、「競合他社との差別化・働きたい人に選ばれていく」との思いが込められている。同社では「一番の軸は社員の元気」(河田氏)と考え、社内制度の充実に努めている。その一つが、自己成長の支援制度「クラウドシステム」である。これは、「社員は地域の一員であり、何ができるかを本気で考えて生きてほしい」という河田氏の願いから始まった。

一方、「加和太アカデミー」を設立し、大学のようなカリキュラムを取り入れることで、社員一人一人が人生を切り開けるように育てている。また、「働き方改革支援制度」として、さまざまな働き方ができる環境を整えた。「多くの人にとって建設業を魅力的なものにして、まちづくりに貢献したい」と河田氏は語った。

建設×木構造

3番目の登壇者は、「エヌ・シー・エヌ」(東京都港区)の代表取締役社長・田たくさり鎖郁男氏。同社は、木造建築物の耐震設計と関連部材の販売を手掛ける会社である。2019年3月には東証ジャスダック市場に上場を果たした。

田鎖氏は、新設住宅着工戸数の減少傾向が続き、世帯数・人口も減少していく経営環境の中、成長を遂げるチャンスは木構造分野にあると言う。

2010年の「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」の施行で、原則禁止だった木造の公共建築物が解禁となったことを背景に、非住宅木造建築物の市場規模は2020年度に約8000億円まで拡大すると予測されている(工事費予定額ベース、矢野経済研究所)。また現在、鉄骨の高力ボルトの供給不足によりS造から木造への設計変更依頼が増えていることも、同市場の成長を後押ししている。

「日本の建築行政の大きな方針転換に対応し、受注規模と領域をしっかりと選別すれば、既存の経営資源を活用して非住宅木造という新規事業で成長することができる」(田鎖氏)とのことである。

経営者3名の講義終了後、タナベ経営の山本剛史(経営コンサルティング本部本部長)が総括を行った。山本は「難しい仕事はベテラン社員、簡単な仕事は若手社員、では成長が加速しない。仕事に人を合わせるのではなく、人に仕事を合わせることが大切」と述べ、フォーラムを締めくくった。

 

 

 

 

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