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【対談】

未来をつくる人たちへ:戦略リーダーの時代

タナベコンサルティンググループが支援した「戦略リーダー人材」育成の取り組みを紹介。育成システムや人事制度の再構築など、「人づくり」のための施策を追います。
対談2021.01.29

ホクビー:進取・革新の精神で新たな市場創造を目指す

 

 

ビーフレストランからメーカーへ業態転換

 

北海道石狩市に本社を置くホクビーは、オリジナルブランド「メルティークビーフ」を中心に牛肉の加工品を製造販売する食品メーカーだ。創業は1972年。創業者・林茂生氏がオープンした道産牛使用のビーフレストラン「もうもう亭」が人気を集め、8年間で21店舗を構えるチェーン店へと成長。その後、1980年に現在のような食品メーカーへと業態転換を図った。

 

その理由を、代表取締役社長の瀧澤克則氏は「チェーン展開の過程でセントラルキッチンを導入したことが、業態転換のきっかけになりました。製造余力が生まれて外販をスタートした時期が、ファミリーレストランの普及し始めたタイミングと重なって事業拡大。室蘭工場の新設を機に、製造業へと転換していきました」と説明する。

 

今よりも牛肉が高価だった時代。強みとなったのは、適度に牛脂を注入することで牛肉を柔らかくジューシーにする独自技術である。1頭の牛から採れるヒレやロースはごくわずかだ。大部分を占める硬い赤身肉を、いかにおいしく提供するか。付加価値を上げる手法を考え抜いた末、生み出されたのがメルティークビーフだった。

 

「メルティークビーフが開発されたのは、業態転換を図る少し前。当時は、牛肉の消費大国である欧米でさえ、赤身肉を柔らかく加工してステーキにする発想はありませんでした。この発明が、成長のインパクトとなったのは確かです」(瀧澤氏)

 

外食産業からメーカーへ。国内初となる牛肉の加工法に関連する特許を取得した同社は、メーカーとしての歩みを加速させていく。2005年には「メルティーク」を商標登録。独自ブランドとして明確に差別化している。

 

 

ホクビー 代表取締役社長 瀧澤 克則氏(左)
ホクビー 専務取締役 後藤 秀巳氏(右)

 

人事制度を再構築し次世代を担う人材を育成

 

「メルティークビーフの開発は会社の成長だけでなく、当社のDNAを運命付ける意味でも重要な出来事でした。私たちは、世の中にないものを発明して商品化しました。社内には、『ホクビーは独自技術を持つ加工メーカーである』という思いが浸透しています」(瀧澤氏)

 

時代を先取りする先見性と、世の中にないものに果敢に挑戦する姿勢。変化を恐れない企業DNAが同社には根付いている。そうしたDNAを受け継ぎながら、次のステージを目指す同社がここ数年、特に力を注いでいるのが組織経営への転換と人材育成だ。その軸となる人事制度構築を先頭に立って進める専務取締役の後藤秀巳氏は、狙いを次のように説明する。

 

「これまでは、キャリアアップの道筋が明確になっていなかったために、若い社員の意欲が下がったり、どこを目指すべきか迷ってしまったりするケースが見受けられました。新たな制度の特徴は、評価項目を明確にしたことで、キャリアビジョンを見据えながら成長イメージを描ける点。また、それぞれの役割を明確にして職責を果たしてもらい、それをきちんと評価する仕組みを目指しました。以前は社内で取り組んできましたが、新たにタナベ経営にご協力いただいたことで制度全体が体系付けられたと感謝しています」

 

現在は人事制度の構築に加えて、部長職を対象とする幹部研修や若手社員向けのチームリーダー研修、タナベ経営主催の「幹部候補生スクール」への派遣など、社員教育も並行して進める。特に、若い世代の人材育成を強化していく方針だ。

 

「経営を担っている以上、一番の責務は次に会社を担う人材をつくることだと考えています。どの人材にどのような仕事を任せるかで、目標の達成度や人材の成長スピードが変わります。管理職やリーダーが、もっと権限を意識して仕事をすると人が育ってくる。そこは人事制度の要になると考えています」(瀧澤氏)

 

 

変化を先取りし新たな市場の創造へ

 

長期化するコロナ禍によって、外食産業が受けたダメージは計り知れない。その影響は同社にも及んでおり、一時は売上高が前期比3割減まで落ち込んだという。だが、瀧澤氏は「『進取と革新』を経営理念で謳っていますが、まさに今がそのタイミング」と前向きだ。

 

「コロナ禍で、気付きや意識の変化もありました。以前は社内の危機感が希薄でしたが、大変な状況を目の当たりにしたことで、『このままではダメだ』と気付くきっかけになりました。

 

以前から人口減少に伴う国内市場の縮小も懸念されていますが、国内の牛肉消費量は100万t以上と言われており、当社には開拓の余地がまだ多く残されています。胃袋の減少を憂うよりも、胃袋の質が変わったことに目を向ける方が大事。コロナ禍によって、食環境に大きな変化が表れています。メーカーとして、いかに変化を先取りし、それに合わせて変化していけるか。コアコンピタンスである独自技術を生かしながら、新たな商品やマーケットの創造を目指していきます」(瀧澤氏)

 

 

PROFILE

    • (株)ホクビー
    • 所在地:北海道石狩市新港西1-725-1
    • 設立:1972年
    • 代表者:代表取締役社長 瀧澤 克則
    • 売上高:68億5000万円(2020年3月期)
    • 従業員数:277名(2020年3月現在)

 

 

 タナベ担当者より  

「進取と革新の精神」を経営理念に掲げるホクビー。2022年に創業50年を迎える同社には、技術・品質に対する誇りが社員に浸透している。瀧澤社長は、その企業DNAをさらに高みへ導くこと、次世代へ受け継いでいくことを自身の使命と捉え、日々取り組んでいる。

 

人事制度の再構築を皮切りに、階層別教育を推進し、幹部や若手リーダーたちにも意識や考え方の変化が見え始めている。次世代の組織経営の土台が徐々に作られつつある印象だ。創業100年を目指し、ファーストコールカンパニーへ—。同社の今後の発展に期待が高まる。

 

 

 

 

 

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