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【メソッド】

メンタルアップコミュニケーション 人が辞めない職場づくり

日本メンタルアップ支援機構代表理事の大野萌子氏による連載。職場におけるコミュニケーションの注意点や、ストレスマネジメントの方法など、健やかに毎日を過ごすヒントを紹介しています。
メソッド2019.09.30

Vol.2 リーダーに必要なセルフケア

疲れに気付けなくなる前に

部下のワークライフバランスに配慮したり、「働き方改革」を推奨したりしているリーダー自身が、それらと相反する生活を送っていることは少なくありません。今回は、セルフケアについてお伝えしていきます。

リーダーには、細部にわたり業務全体を把握することが求められます。時間は有限ですので、効率よく取り組むためには、体はもとより頭もフル回転させなければならないでしょう。また、何かを決定したり、新たな関係性を築いたり、情報を収集したりするときには、常に緊張が伴います。緊張状態が長く続くと弛緩が難しくなり、疲れをため込みやすくなります。

常にフル回転で仕事をしていると疲労に気付きにくくなり、心身の疲労が知らないうちにたまっていくとケアをすることさえも忘れ、いつしかメンタルや体に異常が出てくるのです。

心も体も、調子が良いときもあれば、悪いときもあります。だからこそ、無理のない働き方を心掛けていく必要があります。この先ずっと健康に仕事をしていくためにも、心身の健康に目を向けて、自身に合う働き方を見つけることが大切です。

下記チェック表に、皆さんはいくつ当てはまるでしょうか。一つでも当てはまれば、ストレスがたまり始めているサインです。ストレスは、体温や血圧のように数値化することができません。明確な自覚を促す手段がないため、見逃してしまう傾向にあります。これらの項目を参考にチェックしてみてください。そして、当てはまる項目があれば、積極的にストレスケアを取り入れてみましょう。

6つのストレスサイン
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気分転換を意識したストレスケア

ストレスケアには、リフレッシュが大切です。皆さんはどのようなストレス解消法をお持ちでしょうか。

手っ取り早いのは、食べる・飲む・眠ることですが、意識して取り入れていくことも大切です。ただやみくもに酔っぱらったり、やけ食いをしたりするのではなく、好みのお酒を選ぶ、好きなものをおいしくいただくなど、気分転換であることを意識するのが大切です。

効果的なリフレッシュのポイントは三つ。一つ目は「適度」に「自分が好きなこと」に取り組むことです。人が「良い」と言っていることでも自分には合わないことがありますし、体を動かすのが苦手な方が無理やり運動をしても、かえってストレスの原因になってしまう可能性もありますので、自分本位で選びましょう。

二つ目は、「夢中になれること」を取り入れることです。カウンセリングを行っていてよく感じることですが、心を病んだり、疲れをため込んでしまったりする人の特徴に「気持ちの切り替えが苦手」という傾向が見られます。常に仕事のことを考えてしまうような状況だと気持ちの切り替えができず、リセットのタイミングを逃してしまいます。

本来は、毎日リセットの時間が持てるとよいと思いますが、難しい場合は週単位で考えてください。とにかく、その時だけでも他のことは忘れられるように「没頭」できることを、短時間でよいので取り入れてみましょう。夢中になれるような趣味があれば良いですが、思い当たらない方は、スポーツの観戦や映画の鑑賞、携帯ゲームをするのもお勧めします。だらだらと長く取り組むのではなく、短時間で集中することが大切です。強制リセットすることで、気分転換を図れるようになります。

三つ目は「心の弛緩」です。緊張が続いたり忙し過ぎたりすると、常に興奮状態に陥り、気持ちを緩めることが難しくなります。しかし、心をほぐそうと思っても、そう簡単にできるものではありません。

そこで、私がお勧めしたいのは体をほぐすことです。実は、体と心は常に連動しています。例えば、「驚いたときに鼓動が速くなる」「怒ったときに血圧が高くなる」といった具合に、心の変化は体の変化へダイレクトに影響します。反対に、体調が悪いときに気分がめいりやすくなるのを実感している方も多いのではないでしょうか。

体をほぐすことによって心もほぐれるという関係性を生かし、軽いストレッチやマッサージなどを積極的に取り入れることが効果的です。つらいストレッチや痛みを伴うような強いマッサージではなく、体がリラックスする程度が良いでしょう。また、深呼吸も効果があります。

現代人は呼吸が浅い傾向にあり、息を十分に吸えていない方も多いです。昨今は、パソコンやスマートフォンの多用により長時間、前かがみの姿勢を続けている人が多く、肺を圧迫し呼吸を浅くする原因にもなっています。ですから、胸を広げるよう意識をしながら深呼吸をしましょう。1分ほど行うだけでも効果が期待でき、自律神経が整います。

 

 

 

コミュニケーションの基本は自己理解

リーダーは、無意識のうちに「仕事を休む、一息つく=悪いこと」と思っている人も少なくないようです。「止まったらダメ、動いているからこそ元気が出てくる」という気持ちも分かりますが、上手に休みを取り入れることもセルフケアの一つです。忙しいときこそリフレッシュを積極的に取り入れてください。それが、心身の健康と柔軟性にもつながります。

柔軟な思考は、部下への対応にも生きてきます。自分を大切にできる人は、相手も大切にできるのです。人材育成マネジメントを、まずリーダー自身が実践していただきたいと思います。

まとまった時間が取れなくても隙間時間を利用して、緩急を意識した毎日が送れることを願っています。

 

Profile
大野 萌子Moeko Ono
一般社団法人日本メンタルアップ支援機構(メンタルアップマネージャ資格認定機関)代表理事、産業カウンセラー、2級キャリアコンサルティング技能士。内閣府、防衛省などの官公庁をはじめ、大手企業、大学、医療機関などで年間150件以上の講演・研修を行う。著書に『言いにくいことを伝える技術 ~もう振り回されない! ストレスフリーな人間関係を一瞬で手に入れる』(ぱる出版)、『「かまってちゃん」社員の上手なかまい方』(ディスカヴァー携書)など。
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