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MARKET STATS

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2021年6月号

 

 

コロナ禍の“メンタルヘルステック”に注目

 

厚生労働省の「人口動態統計速報」で2020年の年間死亡数が138万4544人(前年比9373人減)となり、2009年以来11年ぶりに減少した。高齢者人口の増加に伴い毎年1~3万人のペースで増えていたが、新型コロナ感染防止策の影響で他の感染症の死者数が減ったため、全体の死者数も減少したとみられる。

 

ただ、2020年の自殺者数は前年比912人増の2万1081人(警察庁・厚生労働省調べ)と11年ぶりに増加した。原因・動機別で見ると「健康問題」(前年比334人増の1万195人)が最多。次いで「経済・生活問題」(同179人減の3395人)、「家庭問題」(同89人増の3039人)が続く。(【図表1】)

 

 

【図表1】原因・動機別自殺者数の年次推移

出所:厚生労働省・警察庁「令和2年中における自殺の状況」(2021年3月16日)

 

 

健康問題の62.5%は、統合失調症やうつ病などの精神疾患(6367人)だった。コロナ禍による外出自粛の影響でストレスを発散できず、メンタルヘルス不調となって精神疾患が悪化し、自ら死を選んだ人も相当数含まれている可能性が高い。

 

ネオマーケティングが全国の男女1000人に実施したインターネット調査によると、コロナ禍でメンタルヘルス不調を「感じている」(「やや感じている」を含む)と答えた人は、全体で46.4%と半数近くに上ったことが分かった。(【図表2】)

 

 

【図表2】新型コロナウイルス流行後にメンタルヘルスの不調を感じているか(n=1,000)

 

 

性別で見ると、男性が40.0%、女性は52.8%と、女性の方がメンタルヘルス不調の割合は高い。また、自分の体調・健康管理について全体の72%が「不満や不安がある」と回答。男性(67%)より女性(77%)の方が体調・健康管理に不満・不安を持っている傾向は強い。

 

一方、コロナ禍を機に、「従業員の健康管理」に対する経営者の意識が向上している。大同生命保険が全国の1万社以上の中小企業経営者に行ったアンケート調査によると、7割強(73%)の経営者が「従業員の健康への意識が向上した」と回答。また、従業員の健康保持・増進に向けた取り組みについて、9割弱(87%)が「実施している」と答えた。(【図表3】)

 

 

【図表3】従業員の健康保持・増進に向けた取り組みの実施状況(n=11,336)

出所:大同生命保険「中小企業経営者アンケート『大同生命サーベイ』2020年11月度調査」

 

 

しかし、具体的な取り組み内容を見ると(複数回答)、マスク着用や検温・体調チェックなどの「感染症対策」(63%)は多くの企業が実施していたものの、「健康診断」は42%にとどまり、前年調査(2019年8月、79%)に比べ37ポイントも減少した(【図表4】)。取り組みが大きく減った背景には、新型コロナ感染拡大に伴う“受診控え”が影響したとみられている。

 

 

【図表4】従業員の健康保持・増進に向けた取り組みの実施状況の具体的内容(n=11,336)

※2019年8月調査では「感染症対策(予防接種の費用補助等)」として選択肢を設定
出所:大同生命保険「中小企業経営者アンケート『大同生命サーベイ』2020年11月度調査」

 

 

コロナウイルス感染拡大に対する緊急事態宣言が繰り返される中、行動の制約とコミュニケーション不足の影響で人々の不安とストレスは募るばかりだ。メンタルヘルスカウンセリングを行うティーペックの調べによると、電話・Webによるメンタルヘルス相談で「死にたい」「誰かを傷つけたい」など自傷・他害をほのめかす相談件数が2020年8月以降で顕著に増え、9、10月にかけては前年比1.7倍に上ったという。同社は、「コロナによる不安や社会的閉塞感に加え、有名人の相次ぐ自死などが増加の要因となった可能性」を指摘している。

 

コロナ禍のメンタルヘルス不調対策として、ロボット・AIを活用した“メンタルヘルステック”が有望かもしれない。日本オラクルの調査結果※1によると、不安やストレスの相談相手としてロボットを受け入れる人の割合が8割(87%)に達したそうだ。また49%の人が、仕事上のストレスや不安を上司よりもロボットやAIに話したいと答えた。

 

人間のカウンセラーやセラピストより、ロボットやAIに頼りたい理由として「ジャッジメント・フリー・ゾーン(無批判区域、決め付けのない環境)を与えてくれる」「問題を共有する上での先入観のない感情のはけ口を提供してくれる」「医療に関する質問に迅速に回答してくれる」などが挙がっている。生産性向上を目的にDX(デジタルトランスフォーメーション)へ取り組む企業は増えているが、業務プロセスだけでなく従業員の心の安寧にもDXの導入が必要だ。

 

日本は病床数が世界で最も多い国として知られるが、実は精神病床数も世界一である。近年は精神疾患の総患者数(2002年:258万人→2017年:419万人)が大幅に増え続け、人口10万人当たりの自殺者数を示す「自殺死亡率」も18.5人(2015年)と先進7カ国(G7)中で際立って高い。日本は世界有数の“メンタルヘルス不調大国”なだけに、産官学医の連携による早急なDTx※2への取り組みが求められよう。

 

 

※1…日本オラクル・2020年11月4日付プレスリリースより

※2…デジタルセラピューティクス(DTx):デジタル技術やIoTを使って疾病予防や診断・治療を行うもの