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6割以上の企業が「働き方改革」を推進
約5割の企業が「経営に支障が出る」との懸念も

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2018年12月号

 

 

【図表1】「働き方改革関連法」のポイント

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〈残業時間上限規制の適用が猶予・除外される事業・業務〉

■建設事業……………………………………2024年4月1日に適用(ただし災害復旧・復興事業では複数月平均80時間以内・1カ月100時間未満の要件を適用しない)
■医師…………………………………………2024年4月1日に適用
■鹿児島県、沖縄県の砂糖製造業…………2024年4月1日に適用
■新技術・新商品などの研究開発業務……医師の面接指導、代替休暇付与などの健康確保措置を設けた上で、上限規制は適用しない
■自動車運転の業務…………………………2024年4月1日に適用(ただし適用後の上限時間は年960時間)

 

【図表2】「働き方改革関連法」の施行で、経営に支障が出るか?

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※小数点以下を四捨五入しているため、必ずしも100%にならない
出典:エン・ジャパン「企業に聞く『働き方改革法案』実態調査」(2018年9月21日)

 

 

いよいよ2019年4月1日(中小企業は2020年4月1日)より、「働き方改革関連法(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)」が順次施行される。内容は多岐にわたり、個々の施行時期も異なるが、ポイントは大きく3つ。「残業時間の上限規制導入」「年5日間の年次有給休暇付与の義務付け」「同一労働同一賃金の導入」である。(【図表1】)

 

同法の狙いは、就業機会の拡大と働きやすい環境づくりによる生産性向上だが、その一方で企業の間では警戒感も強い。人材紹介サービス会社のエン・ジャパンが行ったアンケート調査によると、「経営に支障が出る」と考える経営者や人事担当者が約5割(47%)もいる。また、企業規模が大きくなるほど、支障が出るという回答が増加している。(【図表2】)

 

企業は現在、働き方改革関連法の施行に対し、どのような取り組みを行っているのだろうか。帝国データバンクが実施した「『働き方改革』に対する企業の意識調査」(有効回答企業数:9918社)から、その推進状況を見てみよう。

 

まず、自社の「働き方改革」への取り組み状況については、「取り組んでいる」と回答した企業の割合は37.5%。「現在は取り組んでいないが、今後取り組む予定」(25.6%)を合わせると、6割以上の企業が改革へ前向きに取り組んでいることになる。他方、取り組む予定がないと答えた企業は2割に満たない。(次頁【図表3】)

 

働き方改革に取り組んでいる企業(予定企業を含む)に対し、最も重視している目的を尋ねたところ、「従業員のモチベーション向上」(25.6%)がトップだった。次いで、「人材の定着」(19.8%)、「生産性向上」(15.9%)、「従業員の心身の健康(健康経営)」(15.4%)、「円滑な人材採用」(8.9%)などが続く。社外ではなく、社内(従業員)の影響を重視する傾向が強い。(次頁【図表4】)

 

 

【図表3】働き方改革への取り組み状況

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出典:帝国データバンク「働き方改革に対する企業の意識調査」(2018年9月14日)

 

 

【図表4】働き方改革への取り組みで最も重視する目的

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※働き方改革に「取り組んでいる」「今後取り組む予定」のいずれかを回答した6259社が対象
出典:帝国データバンク「働き方改革に対する企業の意識調査」(2018年9月14日)

 

 

一方、具体的な取り組み内容(複数回答)については「長時間労働の是正」(79.8%)が8割近くに上り、最も多かった。大半の企業が“残業”を課題として捉えていることがうかがえる。また、週休の増加や有給休暇の取得目標設定、記念日休暇などの「休日取得の推進」(61.8%)、「人材育成」(56.3%)などが5割以上を占めている。(【図表5】)

 

このほか、「業務の合理化や効率化のためのIT・機器・システムの導入」(49.2%)や、朝礼・研修などを通じた「職場風土づくり・意識の改善、コミュニケーションの活性化」(48.8%)に取り組む企業も多かった。

 

一方、効果のある項目としては、「長時間労働の是正」(30.3%)や「IT・機器・システムの導入」(21.5%)、「従業員の理解を得ること」(22.2%)などが高かった。

 

今後、新たに取り組む予定の項目については、「休日取得の推進」(24.8%)が最多だった。以下、「人事評価制度・賃金制度の変更、改善」(23.9%)、「多様な人材の採用・登用」(21.2%)、「勤務時間・制度の多様化」(20.9%)、「人材育成」(20.4%)などが続く。

 

 

【図表5】取り組んでいる・効果のある具体的内容(複数回答)

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※「取り組んでいる」と回答した企業3723社が対象
出典:帝国データバンク「働き方改革に対する企業の意識調査」(2018年9月14日)

 

 

同調査の自由回答から企業の声を拾い上げると、「人手不足の状況での働き方改革には無理がある」「人手不足や業務多忙のため、手が回らない」「推進できる人材がいない」など、人手不足が足かせとなって働き方改革を実施できないという意見が多かった。特定人材に推進役を任せるのではなく、各部門から横断的にメンバーを選抜しタスクフォースを立ち上げ、チームで改革に当たらせたり、コンサルタントや社会保険労務士など外部の専門家を起用したりといった取り組みも必要だろう。

 

また、経営トップや役員陣の積極的な関与もかせない。例えば、住友商事系のITシステム開発大手・SCSK(本社・東京都江東区)では、社長自らが取引先の執行役員に手紙を書き、同社の各役員がそれを取引先へ持参して、働き方改革への理解と協力を求めた。企業規模の大小に関係なく、首脳陣をいかにして働き方改革へ巻き込んでいくかが、成功の大きな鍵を握りそうだ。