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訪日外国人旅行者の6割超が訪日2回以上の「リピーター」

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2018年9月号

 

 

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訪日外客数が好調だ。2017年は2869万人(前年比19.3%増)と5年連続で過去最高を更新した。LCC(格安航空会社)の航空路線拡充やクルーズ船の寄港増加、査証発給要件の緩和などが背景にある。

 

いまやインバウンドは、日本経済にとって外貨を獲得する重要な“輸出部門”となっている。17年通年のインバウンド消費額(訪日外国人旅行者による国内消費額)は、前年比17.8%増の4兆4162億円と過去最高だった。これは日本の総輸出額(78.3兆円=2017年)の5.6%に相当する規模だ。輸出品目との比較では自動車に次ぐ水準で、電子部品や自動車部品、鉄鋼などの輸出額を上回る。(【図表1】)

 

 

【図表1】訪日外国人旅行消費額と主要製品別輸出額との比較(2017年)
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出典:観光庁「訪日外国人消費動向調査 平成29年(2017年)年間値(確報)」
財務省「貿易統計(2017年)」

 

 

インバウンド需要は国内だけにとどまらない。訪日観光を機に、帰国後もインターネットを通じて日本製品を買う外国人が急増している。観光庁の試算(「2018年版 観光白書」)では、自身の訪日観光がきっかけとなった越境EC(国を越えた電子商取引)の購買規模が約6300億円(2017年時点)に上る。さらに知人や家族の訪日観光が引き金となり、越境ECで日本製品を買った金額も約1500億円と見込まれ、合わせて約8000億円の旅行後消費が生まれているという。

 

インバウンドの増加は、さまざまな産業に恩恵を与えている。例えば、宿泊業と建設業だ。17年の外国人延べ宿泊者数が前年比12.4%増の7800万泊(過去最高)となり、宿泊需要が拡大。そのため飲食サービス業や住宅メーカー、アパレルなどの異業種企業がホテル運営や「民泊」事業に参入するケースが相次ぎ、宿泊施設の建設投資が活発化している。

 

民間建設投資の先行指標である「建築着工統計」(国土交通省)から「宿泊業用建築物」の工事費予定額の推移を見ると、16年は6333億円(前年比約2.5倍)、17年も9431億円(同48.9%増)と急増し、11年(946億円)以降の6年間で約10倍へ拡大した(【図表2】)。今後は、2018年6月に施行した「住宅宿泊事業法」(民泊新法)に基づく民泊対応型マンションの建設やリノベーションも増えると見込まれている。インバウンドの増加が宿泊施設の将来需要を喚起し、建設需要に波及している。

 

 

【図表2】宿泊業用建築物の工事費予定額、外国人延べ宿泊者数の推移
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出典:国土交通省「建築着工統計調査報告」、観光庁「宿泊旅行統計調査」

 

 

こうしたインバウンド需要を創出しているのが、訪日数2回以上のリピーターである。観光庁の調べによると、17年通年の訪日外国人旅行者のリピーター数は前年比23.5%増の1761万人と大きく増加した。一般的に観光客と言えば「一見客」ばかりというイメージが強い。だが訪日外国人旅行者の場合、6割超はリピーターが占めているのだ。(【図表3】)

 

 

【図表3】訪日外客数および訪日リピーター数の推移
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出典:観光庁「平成29年訪日外国人消費動向調査【トピックス分析】」

 

 

訪日リピーターを国籍・地域別(構成比)に見ると、韓国(30%)、台湾(25%)、中国(18%)、香港(13%)などの順に多く、東アジアの近隣4カ国・地域が全体の8割以上を占めている(【図表4】)。リピーターは訪日回数が増えるほど、1人当たりの旅行消費額が増える傾向にあり(【図表5】)、地方を訪問する割合も高くなるという。

 

 

【図表4】訪日リピーターの国籍・地域別構成比
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出典:観光庁「平成29年訪日外国人消費動向調査【トピックス分析】」

 

 

【図表5】訪日回数別1人当たり旅行支出
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出典:観光庁「平成29年訪日外国人消費動向調査【トピックス分析】」

 

 

外国人への対応に慣れていない地方にとって、訪日回数を重ねて日本になじみ、よく消費してくれるリピーターは非常にありがたい存在だ。地方都市におけるインバウンド戦略は、初来日の旅行者が大半を占めるパッケージツアーの団体客ではなく、リピーターが多いとされる東アジアの個人旅行客(FIT)をターゲットにしたい。

 

例えば、リピーター需要を取り込むコンテンツとして「ナイトタイムエコノミー」(夜間経済)が注目されている。日本の観光は「朝と昼」が中心で“夜遊び”は未開拓だが、海外の観光地は夜で稼ぐところが多い。英国・ロンドンはクラブや夜間公演などのナイトタイムで年263億ポンド(4兆円)の経済効果を得ているとされる。

 

外国人旅行者の間では、「日本は夜がつまらない」との不満があるという。しかも地方は都市部に比べて夜が早い。インバウンドを誘客するため、演劇・コンサートのレイトショーやナイトマーケット開催などを企画し、海外OTA(オンライン旅行会社)などへ積極的に情報発信してはどうか。