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Vol.20 言葉や消費行動の先を想像する

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2021年6月号

 

 

マーケティング色が濃い米国のサステナビリティー

 

後日、私はスクエア氏にインタビューを申し込んだ。まずは、サステナビリティーという言葉が限定的に使われていることを、どう考えているかと質問した。

 

「重要な問いだ。人々への尊重と自然環境は互いに関係しており、この両方を同時に考慮しない議論には意味がない。例えば、ハイチ共和国における森林伐採は農園経済によるものだし、ブラジルの大西洋側熱帯雨林もコーヒーや砂糖の犠牲になった。サステナブルブランドは、それなりの価格で販売されているが、私は作り手とそのコミュニティーのことを考えれば当然だと考える」とスクエア氏は返した。

 

次に、前述したスカンディナビア諸国とイタリアの間にあるサステナビリティーの動機の違いを引用し、米国におけるサステナビリティーはどうかと質問した。

 

スクエア氏はやや皮肉な表情で「米国ではマーケティングだ」と間髪を入れずに答えた。「サステナビリティーとの言葉で新しい聴衆を引き付けることに、最も重きが置かれている。実際、ほとんどの企業がやっていることはグリーンウォッシング(環境に良いことをしているフリの意)だ。自然素材を使っていると言っても、よく調べてみると、そうではない商品と同じく害をまき散らしている」と話す。グリーンウォッシングは米国に限らない現象だが、それがより目立つということだろう。

 

やや方向を変えて、私は職人技や原産地を強調する昨今の動向について意見を求めた。

 

「原産地呼称への注目がサステナブルな動きにつながるというのも疑わしい。『私が住んでいる場所で職人の手で作った物だから良い』と語るトレンドは確かにある。だが、これも目を光らせないといけない。素材や一部の材料は国外からきて最終工程だけ表示国で行うことも多い。

 

米国では一種の外国嫌いが動機になっている。例えば、中国産は質が低いと見る人が相変わらず多い。実際には、中国は世界をリードする製造国であり、ラグジュアリー製品もそうでない製品も作れる。中国に対する偏見が、少なくない米国人の中にあるのだろう。

 

ブルックスブラザーズも、ある時期から国外で製品を生産するようになった。国内で作っていたのは一握りのアイテムだけ。だから、これはマーケティングの一手法と見るのが適切だと思う」

 

彼は、マーケティング志向が強い米国の傾向を再びそう強調した。

 

サプライチェーンに関わる国内外の状況を全て把握しないと、どのプロセスで労働基準や環境保護ルールに抵触しているかが見えない。大手企業の場合、国外の製造プロセスを確認するシステムを整えているが、孫請け以降は抜け道も多い。よって、国内プロセスだけはガラス張りにすることで、国外プロセスの不透明さを補完しようとする意図がないとは言えない。第三者には、そう見えてしまう。その点をスクエア氏は指摘していると私は解釈した。

 

 

 

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