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Vol.20 言葉や消費行動の先を想像する

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2021年6月号

 

 

ファッションと奴隷制の関係

 

米国東海岸で「ファッションフォワード」というサステナブルファッションやラグジュアリーを専門とするシンクタンクを立ち上げた、サーラ・エミリア・ベルナ氏に取材をした(2021年4月号)。その際、同社の企画は「あらゆる側面でサステナビリティーを基盤にしようとしている」と感じた。

 

2021年1月、私はファッションフォワード主催のウェブセミナーで、ハーバード大学においてファッション史を教えるジョナサン・スクエア氏から興味深い話を聞いた。彼は「ファッションと奴隷制の関係」という、今まで歴史の中に埋もれていた事実を掘り起こしてきたアフリカ系米国人研究者である。奴隷として自由を奪われた人たちが、自由や自分たちのアイデンティティーを表現するためにファッションをどのように使ったか。特に、奴隷にされた人々と米国の公的機関の関係を、ファッションという観点から浮き彫りにすることに焦点を置いている。

 

スクエア氏によると、2020年に倒産した米ブルックスブラザーズのスーツは、米国歴代大統領46人のうち、40人に愛用されてきたそうだ。米国を代表する高級ブランドだったが、そのビジネスは南部にある奴隷制の上に成立していたとのことだった。奴隷によって生地の原料が生産され、北部で最終商品として販売されていたからだ。

 

奴隷は既製服を渡されるか、染色されていない綿やリネン(亜麻の繊維を用いた織物)を使い、自分なりに生地を染めて服を手縫いしていた。また、雇い主のための通常業務以外の仕事、つまり、自分で育てた野菜や魚の採集で得た小銭で、服やアクセサリーを買っていた。

 

雇い主から古着をもらうこともあった。よく働く、気に入られた奴隷ならば、たまに欧州や米国北東部で生産された新品の生地を手にする場合もあった。すなわち、奴隷制度のスムーズな運営のためにファッションが利用されていたのだ。

 

こうしたシステムの上に成り立っていたブルックスブラザーズの服を、南部の奴隷を雇った農園のオーナーが購入していた。それによってブルックスブラザーズは利益を得ていたとスクエア氏は話す。

 

もう1つエピソードがある。

 

1837年、25歳のチャールズ・ルイス・ティファニーは、南部の奴隷が摘んだ綿を加工する米コネティカット州の工場のオーナーの1人だった父親から1000ドルを借り、ファンシーグッズと文具の店を開いた。それが後に宝石や時計で有名になったティファニーの始まりだ。そのため、スクエア氏はティファニーも南部の素材供給、北部での生産と販売とのシステムで成立したブランドであるとの見解を示す。

 

「現在の価値に換算して約2万7000ドルのスタートアップ援助金がなければ、そして一部、無報酬の奴隷による労働がなければ、『ティファニーで朝食を』も生まれようがなかった」とスクエア氏は話す。

 

 

※米国の小説家、トルーマン・カポーティによる1958年出版の小説。1961年にオードリー・ヘプバーン主演で映画化された

 

 

 

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