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Vol.64 値が張るからこそ
北村 森

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2021年1月号

 

 

ショウワノート「ジャポニカ学習帳」
新1970年代後半からの「ジャポニカ学習帳」。昆虫シリーズは2012年にいったん休止したものの、2020年に復活。昆虫が苦手な児童のためにイラスト版もラインアップに加えた

 

 

コロナ禍でも売れた

 

2020年は、新型コロナウイルスの感染拡大で、数多くの業界が苦境に立たされました。航空、飲食といった分野に限らず、大変な1年だったとお察しします。

 

ただ、そうした状況下でも健闘した業界があるのもまた事実ですね。ホームセンターがその一例ですし、またキッチン家電なども売れました。巣ごもり生活下の関連需要が伸びたという外的要因はありますが、しっかりとニーズを捕まえた点は評価できますね。

 

で、ちょっと意外な商品もまた踏ん張っていたというのが、今回のテーマ。何かというと学習帳なのです。ショウワノート(富山県高岡市)の「ジャポニカ学習帳」と言えば、この分野で50%近いトップシェアを誇る商品ですが、2020年の春から初夏にかけての自粛期間中も売り上げが前年比でまったく落ちなかったというのです。「各地の小学校が休校を余儀なくされていたのに、一体どうして?」と、私は不思議に思ったわけです。

 

しかも、この少子化社会にありながら、年間の売り上げはずっと下がっていないそう。

 

今回は、ジャポニカ学習帳の開発や販売に長年携わってきた、同社の代表取締役会長である片岸茂氏に話を聞いてきました。

 

 

後発組ながら定着

 

まず、念のため確認したいのですが、本当にコロナ禍でもジャポニカ学習帳の売り上げは落ちなかったのでしょうか。

 

「まったく落ちていません。他の文具メーカーでは3~4割の売り上げ減となったところもあると聞きますから、異例でしょう」(片岸氏)

 

自宅学習で多くの児童が同社の学習帳を使った、という話でしょうが、これは指名買いが定着していたことのたまものと分析できそうです。実際、ショウワノートは、指名買いを得ることを大目標に営業を重ねてきたようなのです。

 

そもそもジャポニカ学習帳は、販売価格がライバル商品に比べて高い。同社製品は現在1冊当たり税別190円以上です。流通企業のPB商品よりも100円前後も値が張ります。それにもかかわらず指名買いが続き、コロナ禍でも揺るがなかったのはどうしてなのでしょうか。

 

片岸氏は言います。「当社は、学習帳の分野では後発組なんです」

 

話は半世紀前にさかのぼります。1960年代後半、国内の小学生の数は1600万人に上っていたにもかかわらず、学習帳の市場規模は約60億円にすぎなかったそうです。学習帳の市場へ参入する前だったショウワノートは、この数字に対して疑問を抱きました。小学生の人数に比べて学習帳の市場規模が小さすぎる。それはなぜなのか。

 

答えはすぐに判明します。単純な話でした。学習帳の値段が安かったのです。当時は1冊30円程度の商品が大半だったらしい。

 

「だったら、後発である当社は、あえて50円で勝負しよう、となった」と片岸氏は語ります。

 

その分、表紙周りの紙質を上げ、さらに当時の学習帳としては極めて珍しかったテレビCMを打ちました。すると、指名買いが続出するようになった。値段が他社より高いことはネックにならなかったのです。

 

 

 

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