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【メソッド】

梶原しげるのビジネスに効く!会話のヒント

文化放送のアナウンサーを経てフリーに転身。テレビやラジオ番組の司会として幅広く活躍してきた梶原氏が、ビジネスシーンに役立つ会話のヒントをお届けします。
メソッド2017.07.31

vol.23 周りが見えていないと大惨事に!?

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2017年8月号

情報があふれる現代社会だからこそ

「政治家なんてそんなもの。われわれには所属する仲良しクラブなんぞない!」

お怒りの方がいらっしゃるかもしれませんが、そうでしょうか? ある大学の学生たちと、こんな話をしたことがあります。

特定の新聞を「とんでもないことばかり書く、世間知らずなメディア。あり得ない!」と痛烈に批判する「頼もしい若者」がいました。若い世代の「政治への無関心」がいわれて久しい現代。「貴重な意見だなあ」としばらく彼の話を聞きました。

「○△新聞は偏向報道です」

「へえ、○△新聞購読してるんだ」

「今どきお金払って新聞読む学生なんていませんよ。詳しい情報は全てネットで見られる時代じゃないですか」

「じゃ、○△新聞が偏向してるって、どうやって分かるの?」

「ニュースは随時スマホでチェックしてます。知りたい情報やそれに対するリアクションも即更新される。新聞なんか、たかだか朝夕2 回でしょ? しかもダラダラと煮え切らないことを延々読まされるなんてまっぴら。時間の無駄使いじゃないですか」

「時間、大事だもんね」

「それよか、スマホはわざわざ自分で読みたいニュースを探さなくても、知りたいニュースがピンポイントで送られてくる」

ここまで聞いて、彼は「新聞雑誌テレビラジオ」ではなく、「仲良しクラブだけで共有する、自分の好みに合ったニュースだけ」にどっぷり漬かる「今風な情報環境」をエンジョイしていることが分かりました。

米国大統領選挙の際にトランプファンはトランプびいきのニュースだけを受け入れ、クリントン支持者はクリントンびいきの情報にしか接しない傾向があるとしばしばいわれました。これを、「マスメディアからマイメディアへと変化した米国」と評した人がいましたが、日本も米国と変わらない気配です。

Web上で本を買うと、その後、似た論調の本がレコメンデーション機能によって次々パソコン画面上に現れるという経験をしたことがある人は多いと思います。ニュース配信も同じように、「こういう記事を読んだあなたは、こういう『色』の記事がお好きですよね」と傾向でセグメントされ、知らぬ間に仲良しクラブのメンバーに組み込まれるのです。

仲良しクラブメンバー同士では、過激なら過激なほど喝采を浴び、「いいね」をたくさんもらえるから、さらに過激さが増して盛り上がる。

「世間はみんな自分と同じ意見に違いない」。そう錯覚した人が、「別のクラブのメンバー」を前にとうとうと発言して眉をひそめられたり、人望を失ったり、仕事を失ったり。

まるで政治家のように仲良しクラブに足をすくわれ、気が付いたら別のクラブでも同じ振る舞い・発言をして手ひどい失敗を……なんて事態は、われわれの日常でも起こることは大いにあり得ます。

仲良しクラブの危険性、ひとごとではなさそうです。


筆者プロフィール
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梶原 しげる (かじわら  しげる)

早稲田大学卒業後、文化放送に入社。20年のアナウンサー経験を経て、1992年からフリーとしてテレビ・ラジオ番組の司会を中心に活躍。49歳で東京成徳大学大学院心理学研究科に進学、心理学修士号取得。東京成徳大学経営学部講師(口頭表現トレーニング)、日本語検定審議委員も務める。

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