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Vol.37 口うるさい上司に突っ込まれがちな言葉

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2018年10月号
 
「割愛」してどんどん飛ばす?
 
教員採用試験で実際に出題された「役不足」「煮詰まる」をはじめ、本来とは逆の意味で使われることの多い言葉(慣用句)を2016年7月号でいくつかご紹介しました。今回は第2弾として、「本来とは逆の意味」ではなく、「本来の意味とは異なる意味」で使われることの多い言葉をクイズ形式でご紹介していきます。軽?い気持ちでお付き合いください。
 
早速、第1問!「割愛」の本来の意味は次のうちどちらでしょうか?
 
①不要なものを切り捨てる
(例)「これは前の話と重複しますから割愛します」
 
②惜しいと思うものを手放す
(例)「大事なんですが、時間の都合で割愛します」
 
「どっちでもいいじゃない!?」と思われがちですが、口うるさい上司などから「本来はだね、君」と思わぬツッコミが入るのを予防するため、くらいに考えてください。では、シンキングタイム!5、4、3、2、1、ここまで!正解は「②惜しいと思うものを手放す」。ここで当然ながら不満の声が聞こえてきそうです。
 
読者A「仕事のできるビジネスパーソンがプレゼンなんかで①を使っているじゃないですか!要点だけに話を絞り込んで、さまつなところは小気味よくカットする場面で」
 
読者B「大した差がない気もする」
 
実は私も「どっちだっていいじゃないか」くらいに思っていましたが、あらためて辞書を引いて見ると、ほぼ全てが②の意味のみで説明していました。言葉の変化を柔軟に受け入れ、いち早く取り入れることでおなじみ、私が大好きな『三省堂国語辞典第7版』(三省堂)にあったのは「おしみながら、はぶく、手放すこと」との②の語釈だけで「不要なものを切り捨てる意味で使われる」という①を支持する記載は一切ありません。
 
また、『明鏡国語辞典第2 版』(大修館書店)も「惜しいと思いながら、思い切って捨てること。例:文章の一部を割愛する。もと仏教語で、愛着の気持ちを断ち切ること」とあり、「不要」「切り捨て」という無慈悲な①を匂わす記載はありません。
 
大型辞書『日本国語大辞典』(小学館)では「『愛着の気持ち』を断ち切ること、おもいきること」「『惜しいと思いながらも』省略したり捨てたりすること」(以下略)という具合で「不要だから切り捨てる」というドライな感じを表す表現はなく、「いとしい、惜しい」を大前提とする気高い行為なのだと知りました。『デジタル大辞泉』(小学館)も「惜しいと思うものを手放す」はあっても「不要なものを切り捨てる」とビジネスライクな表記はありません。
 
国語辞典を見る限り、①の「不要なものを切り捨てる」ではなく②の「惜しいものを手放す」こそが本来の意味だと言わざるを得ません。②と答えた皆さま、お見事! おめでとうございまーす!……と、なるところですが、一方で面白いデータを、文化庁が毎年行っている「国語に関する世論調査」(2011年度)から拾い出すことができました。
 
本来の意味は②、と決着がつきましたが、実際はどちらの意味で使っている人が多いのでしょうか。膨大なデータとお金を使って調べている同調査を見ると、①を間違いと切り捨てることに、若干の疑問を抱く気持ちも出てきます。
 
調査を見れば、割愛の本来の意味と、実際に国民が認識する意味が逆転しているケースが少なくない、むしろ圧倒的に多いという事実が綴つづられていました。例えば、先ほどの第1問では、本来の意味は②でしたね。ところが調査の結果では、①が明らかに多数派との数字をたたき出しているのです。
 
前述の同調査によると、「割愛」を本来の「惜しいと思うものを手放す」との意味で使う人はたったの17.6%。本来の意味でない「不必要なものを切り捨てる」で使う人が65.1%です。本来ではない意味の方が、本来の意味の3.7倍も多く使われているのです。
 
 
 

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