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vol.1 世界最大の時短国家・ドイツ

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2018年9月号
 

プライベートな時間を確保しながら効率よく働き、生産性を上げるにはどうすればいいのか――。ドイツ流の働き方から、日本の新しい働き方へのヒントを探る。

 
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「働き方改革」は、いま日本人が最も関心を持っているテーマの一つである。大手企業の若い働き手の過労死や過労自殺をきっかけに、労働時間についての議論が盛んに行われている。2018年6月29日には、残業時間を減らすことを目的とした改革法案が参議院本会議で可決された。過労死や過労自殺を防ぐために、初めて残業時間の上限が設定されることは喜ばしいことだ。
 
だが、同時に高収入の社員には労働時間の規制を撤廃する「高度プロフェッショナル制度」も導入された。このため市民の間からは、「新しい法律が施行されることで本当に残業時間が大幅に減るのだろうか」という疑問の声も上がっている。
 
 

営業社員が3カ月の育休を取れる国

 
 
働き方について日本とまったく違う道を歩んできたのがドイツだ。「なぜドイツ人はこんなに労働時間が短いのに、経済が回るのでしょうか?」。私は1990年からドイツに住んでおり、この国へ派遣された日本企業の駐在員からよくこういう質問を受ける。
 
日本企業からドイツ企業に出向中の山田氏(仮名)は、毎日午後6時にはオフィスがほぼ無人になり、管理職くらいしか残っていないのを見てびっくりした。深夜まで残業をしている社員は1人もいない。
 
6月27日、サッカー・ワールドカップのドイツ対韓国戦が午後4時(ドイツ時間)から行われたが、午後3時には大半の社員が家で試合の生中継を見るために退社してしまった。この会社はフレックスタイムを導入しているので、社員は「時間口座」の収支が期末でマイナスにならなければ、何時に出社、退社しても構わないのだ。ドイツでは大半の企業がフレックスタイムを導入している。
※労働時間貯蓄口座:例えば製造業界の所定労働時間は週35時間(旧西ドイツ)。1日の所定労働時間は「35時間÷5日」で7時間となる。1日の労働時間が7時間を超えると、労働時間貯蓄口座にプラスの時間が記録される。7時間よりも少ないとマイナスの時間が記録される。
 
社員たちは交代で2週間から3週間の有給休暇を取っている。山田氏が驚いたことに、課長や部長も2週間の休みを取る。有給休暇を残す社員はおらず、管理職を除けば消化率は100%だ。女性社員だけではなく、男性社員が2カ月から3カ月の育児休暇を取ることも日常茶飯事だ。しかも企業は育児休暇を取っている社員のポストを別の人で埋めてはならない。山田氏は、ドイツ人の営業社員が3カ月の育児休暇を取るのを見て、「これでよくお客さんが怒らないな……」と感心した。
 
労働時間が短いのはこの会社だけではなく、ドイツの大部分の企業が似たようなシステムを取っている。
 
ドイツは世界で最も徹底的に時短を進めている国だが、経済は絶好調である。1時間当たりの労働生産性や市民1人当たりの国内総生産(GDP)は日本を上回る。この国に長く住む日本人からは「ドイツの方が日本よりもワークライフバランスが良い」という声をよく聞く。実際、ドイツでは長時間労働による過労死や過労自殺、残業が恒常化したブラック企業の存在は日本ほど大きな社会問題になっていない。
 
もちろんドイツと日本の企業文化や商慣習、顧客に接する態度、メンタリティーの間には大きな違いがある。このためドイツのやり方や法制度を100%日本に移植することは難しいと思う。それでも、ドイツ人たちの働き方や法制度には、日本人のヒントになるものがいくつかある。
 
この連載ではドイツ人たちの働き方だけではなく、高い労働生産性を可能にした社会的背景を詳しく紹介しながら、日本でも採用できる働き方のヒントについて考えていきたい。
 
 
 

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