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原点回帰し、時代に合う暮らしと空間を提案
平安伸銅工業

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2021年7月号

 

 

 

 

コモディティー化し成長を望めないと思っていた商品が、実は市場拡大の可能性にあふれていた――。突っ張り棒のトップメーカーが独自ブランドで年商を伸長させる挑戦は、ロングセラー商品の提供価値を探求し、潜在するチャンスに気付くことから始まった。

 

 

年間100万本売れる理由を探求

 

「便利なのは間違いない。でも、使いたいと思える商品じゃない」。新聞記者を辞め、父が経営する平安伸銅工業への入社を決めた2010年、代表取締役の竹内香予子氏は、主力商品の「突っ張り棒」にネガティブな印象しかなかった。

 

「白い鉄パイプで、太さや長さのバリエーションが豊富で便利。だけど、家づくりを楽しみたい人にはダサく映ってしまう。使っているシーンは他人に見せたくない。そう考えていた当時の私は、突っ張り棒の本当の良さが分かっていませんでした」。竹内氏は笑顔でそう振り返る。

 

国内トップシェアを誇り、ホームセンターなど量販店向けに「年間100万本以上も売れる」と父が力説する突っ張り棒。だが、自らの直感とのギャップを埋め切れなかった。どのような顧客が、どのような思いで商品を選んでくれるのか。募る疑問の答えを求め、さまざまな仮説を立てて検証を進めた。

 

自社商品の競争優位性を分析すると、「優位性がない」という結果が出た。ニッチ市場で後追いの競合商品がなく、過去の実績から売れているだけだった。

 

「100万本も売れているものの、便利な日用品があふれる市場の中では、そのポジションをいつ失ってもおかしくない。『コモディティー化していて将来性がない』と強い危機意識が芽生えました」(竹内氏)

 

対策として、竹内氏は突っ張り棒が「優位性はなくても、売れる理由」を探求した。自社商品が「お片付けの現場」で使われていると考え、整理収納アドバイザー資格を取得。カリスマ主婦が整理収納のプロとして活躍する姿をモデルに、自ら使い手のコミュニティーに飛び込んでいった。

 

分析すると、想像以上に製品には可能性があると分かった。突っ張り棒を使うだけで押入れがクローゼットに、板と組み合わせれば棚が出来上がり、間仕切りにもなる。くぎやねじがいらない利便性と、空間に新しい用途を創り出す機能性が支持され「生活に必要なもの」と認知されていた。また、一部のマニアを除けば、使い手の多くがまだ上手に活用できていないことを実感。取り外しやすさやデザイン性を向上させれば「もっと選ばれる存在になれる」と気付かされた。

 

また、片付け全般に役立つ情報を発信するメディア「cataso(カタソ)」を立ち上げ、一時は月間50万PVを集めた。

 

「『今の時代の暮らしにふさわしい、突っ張り棒の価値と使い方の提案』という新たな課題が生まれ、その解決が新ブランドの誕生につながりました」(竹内氏)

 

 

「一本の線」から新しい生活スタイルを提案する新ブランド「DRAW A LINE」。商品開発は細部の精度にこだわり、鉄パイプの塗装にマット感を出すため、従来より手間のかかる仕様をあえて選択(左)。突っ張り棒の棚タイプ。長さや耐荷重などバリエーション豊かなラインアップがそろう(右上、右下)

 

 

 

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