TCG Review

サイト内検索

建設業界の常識を覆す
丸高工業

1 / 3ページ


2021年2月号

 

 

【図表】「作業の標準化」具体的手法

 

 

ICT(情報通信技術)によって建設業の施工の在り方を大きく変えようと業界が動く中、丸高工業は発想の転換と地道な努力によって変革を起こそうとしている。その軌跡を追った。

 

 

熟練工の激減により作業の標準化を推進

 

「高い障壁に挑んだか」「常識の打破に挑戦したか」。イノベーションに不可欠な条件が並ぶのは、東京商工会議所が主催し、中小企業を対象に顕彰する「勇気ある経営大賞」の選定基準である。2017年の第15回で大賞を受賞した丸高工業は、建設業界の常識に挑戦した企業として業界に知られている。不可能と思われていた「作業の標準化」や「消音・消塵化」に挑戦し、克服したのだ。

 

従来、ビルや家は大工、左官、塗装、建具、クロスなどさまざまな職人が各工程を担って建てられる。つまり、経験豊富な熟練工の優れた技を抜きに建物を造ることは難しい。さらに、工事ではドリルやハンマーなどの工具を多用するため騒音も避けられないというのが常識だった。この常識を覆すことに、同社はなぜ挑んだのだろうか?

 

「当社は主に改修工事を行ってきましたが、リーマン・ショックを契機に建設コストが大幅に低下し、価格競争に陥りました。そのしわ寄せが職人にいき、賃金を下げざるを得ない状況になった。しかも仕事が週に3日、4日しかなく食べていけなくなり、転業や廃業する職人が増えたのです。さらに、2025年には100万人の職人が75歳以上となり、高齢化や深刻な人手不足が予測されます。誰でも作業ができる環境を整えなければならなくなったのが、作業の標準化を始めたきっかけです」

 

当時を振り返るのは丸高工業の代表取締役である髙木一昌氏だ。しかし、ひと口に作業の標準化といっても膨大な種類の作業がある。建設業は約28業種に分かれており、それぞれの業種で長年にわたって仕事をすることで初めて身に付けられる技術もあるからだ。それらを誰にもできる作業にするのは至難の業だが、同社は覚悟の上で標準化に挑んでいった。

 

 

800工程の作業を分析し作業手順書を作成

 

丸高工業が作業の標準化のために、まず行ったのは全工程のビデオ撮影だ。各業種の工程を撮って作業手順書を作成した。職人が行う作業は800工程にも及ぶが、それを分析し、施工に不可欠な「正味作業」、作業するために材料を運んだりする「付帯作業」、そしてなくてもいい「ムダな作業」の3つに分類。その中から正味・付帯作業を同社の社員が行い、彼・彼女たちではできない作業を抽出していった。

 

さらに、できない作業については、作業のやり方を変えたり、工具に工夫を施したりすることで、熟練工と変わらない施工ができるかどうかを試す。

 

「若手社員は工具や施工に関しても経験が浅いので先入観がありません。そのことが思わぬ発想やアイデアにつながるのです」(髙木氏)

 

作業そのものと並行して工具を改善することで、同社は新しい「標準化作業手順書」を作っていった。(【図表】)

 

「当社の若手社員が対象となる作業を分析し、実際に創意工夫をしながら作業した結果、熟練工でなければできない作業は全体の10~15%程度だと分かりました。残りの作業は、標準化されれば誰でもできるわけです。熟練工と標準技能工が分担して作業することによって、熟練工不足という課題を解決できます。さらに、各工程を多工種の専門の職人が入れ代わり立ち代わり作業するのではなく、できるだけ長く少人数が作業し続けることで、業務効率やコスト削減を図れるようになります」(髙木氏)

 

作業を少人数で行えば、どのような効果があるのだろうか。例えば、百貨店の改修工事を行う場合、従来のやり方では、営業時間が終了した午後11時に職人が20名ほど集まる。まず、養生工がビニールで商品の破損防止用の養生を行い、次にとび職が足場を組み、解体会社が天井の解体を行い、それから電気や空調の工事といったように作業を行うため、職人は自分の順番になるまで待機しなければならない。ところが、この作業をできるだけ少人数でできれば複数の職人の待ち時間はなくなり、作業効率アップと人件費抑制につながって収益性が大きく向上する。作業の標準化は建設現場の在り方を大きく変えることができるのだ。

 

熟練工が必要な作業も10~15%程度はあるので、全てを1人で行うまでには至っていないが、少人数で行うことで職人不足の解決や作業の効率化に成功した。

 

 

 

1 2 3