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【特集】

サステナブルロジスティクス

なくてはならない基幹産業・物流業。働き手不足、業界特有の業務効率の悪さ、労働環境の悪化などが大きな課題となっている。持続可能な物流のため知恵を絞る企業に迫る。
2020.07.22

「再現できる」業務手順を顧客が主体となってビジュアル化:スタディスト

スマートフォンで画像や動画を使用したマニュアルを手軽に作れ、閲覧も可能な「Teachme Biz(ティーチミー・ビズ)」。人材の即戦力化の強い味方となるサービスが、好評を博している。導入のメリットについて話を聞いた。

 

 

正しい手順で伝えることが、
企業の生産性を高めることにつながる

 

 

 

ビジュアル型の業務マニュアル「Teachme Biz」

手順書は文字で構成されているものが一般的だが、「Teachme Biz」は画像や動画でビジュアル化する

 

 

手順書の作成・共有・運用を手軽に

 

画像や動画で、分かりやすく使いやすい。作るのも更新するのも簡単――。そんなビジュアル型の業務マニュアルが評判を呼び、累計約2600社で導入されているSaaS型ツールが「Teachme Biz」(ティーチミー・ビズ)である。同サービスは業務を標準化・効率化し、生産性を向上するSOP(標準作業手順書)のマネジメントプラットフォーム。サービスを提供するスタディストが掲げるミッション「伝えることを、もっと簡単に」が具現化されている。

 

「作業の手順や方法が分かりやすく伝われば、簡単に業務を再現できます。どんなに便利なツールも、使いこなせなければ時間を浪費するだけ。その無駄を減らし、生産的で活力みなぎる社会にするのが私たちのビジョンであり、その一つのフィールドがSOPです」

 

そう笑顔で語るのは、創業者で代表取締役の鈴木悟史氏だ。起業前はコンサルタントとして自動車メーカーなどの業務改革システムの構築を担当。顧客の要望で、自ら作成した手順書を納品時に手渡していたが、いつも疑問を感じていた。

 

「PowerPointやExcelで作り、大量の紙に印刷してファイルにとじ込むのは大変ですし、使う人も見たいところを探し当てるのが至難の業でした。そもそも、手順書が現場ではなく事務所の棚の中にあることも少なくありません。必要としている人の役に立てない。その課題を解決できたらと思い、起業を決めました」(鈴木氏)

 

SOPは文字で構成されているタイプが一般的だが、Teachme Bizは静止画や動画でビジュアル化。業務プロセスで何をどうすればいいか、直感的にひと目で分かるのが特長である。作成は、スマートフォンの撮影画像や動画をステップ構造で順番に並べるだけ。マーキングや文字の追加、色・サイズの選択も自在だ。オンライン上で閲覧状況を管理でき、手順書を組み合わせて研修コンテンツを作成するトレーニング機能も備えている。

 

現場で実践した後にメモなどを見ながら復習するのではなく、まずSOPで自習してから実践に入る「反転学習方式」を採用する同サービス。この方式が短期間で理解・習熟を得られ、高い育成成果を上げていると好評だ。

 

単なる動画マニュアルとも異なる。業務手順をステップごとに表示するため、変更があった業務フローだけを更新できる。苦労して動画を編集し直す手間がない。

 

「作って終わりではなく、正しく変えて、伝えることができる。そして、上手に使って、絶えずより良く変え続けることで、本当に役立つものになります」(鈴木氏)

 

SOPが参照される主な場面は「3H」のシーンだ。3HのHは「初めて」「変更」「久しぶり」の頭文字。このような場面で、時間の浪費やトラブルが起きやすい。

 

同社のSOPを活用すれば、初仕事を短時間で習得し、変更した手順を通達し、久しぶりの業務もいい加減にならずミスを防ぐ効果が期待できる。例えば、マニュアルをQRコード出力する機能がある。製造業であれば工場の壁、物流業なら配送車や倉庫などにコードを貼れ、スマホをかざして現場でいつでも確認できる。

 

Teachme BizをSOP作成の代行サービスと勘違いする問い合わせも多いが、スタディストはあくまでも支援サービスの提供に徹する。理由は明快だ。

 

「外注を望むお客さまは多いのですが、大抵うまくいきません。社内業務を社員以上に知る外注先は存在しないからです。その結果、完成した手順書の検品と手直しに多大な労力と時間を費やすことになります」と鈴木氏は説明する。

 

業務負荷を増やす投資ほど無駄なことはない。シンプルに作成・運用できる点が、同社のサービスが選ばれている理由なのだろう。

 

※Software as a Service:インターネットを経由して提供されるアプリケーションやミドルウエアなどを指す。

 

 

マレーシアで人気の回転ずしチェーン「スシキング」でも活用されている

 

 

コロナ禍で人材育成や品質維持に活用

 

新型コロナウイルスの感染拡大により、EC通販の宅配やネットスーパーの配送代行など、生活インフラを支える物流業界でもTeachme Bizの導入が進む。主な用途は緊急採用した人材の教育や、現場での手順確認。営業自粛の飲食業など他業界からの転職者が多い中、初仕事の不安を解消して離職率を下げるとともに、サービス品質の低下リスク回避を可能にしている。

 

「物流業界は荷主ごとに手順が違いますし、活躍する機会が増えている外国人人材は言葉の壁が現場の課題になっています。だからこそ、ビジュアルで直感的に伝わることが大事ですし、荷主の定期監査ではSOPが業務品質の確かな証しとして評価されています」(鈴木氏)

 

小売業界では、巡回臨店できないスーパーバイザーが、遠隔で売り場づくりの作業指示をする際に同サービスを活用。生産を縮小する製造業では、これまで忙しくてできなかった業務プロセスの再構築に取り組むチャンスだと、オファーが相次いでいるという。

 

同サービスを導入する企業は、業種・業態を問わない。用途も社内の業務手順書に限らず、顧客ユーザー向けの操作マニュアルとして利用するなど幅広い。業務負荷やコストを下げる、問題の再発リスクをなくすなど、どの業務シーンを標準化し、手順書を整備するかは企業ごとに異なるものの、スムーズに進まない企業には三つの共通点が見られると鈴木氏は指摘する。

 

第一に、SOPを作る業務範囲を決めずに取り掛かってしまうこと。第二に、長年の慣例やベテラン社員の作業を、ベストかどうかのチェックなく標準と定めてしまうこと。第三には、100%の完成度を求めることだ.

 

「創意工夫や熟練の技を伝承したいと高望みする経営者には、『SOPを作る業務範囲を絞り込んで、着実に効果を上げるようにしましょう』と伝えています。先輩社員の業務を再現できるなど、ベーシックなことからフォーカスし、完成度も最低限の60%を合格ラインにするなどです。そもそも、100%は永遠にないんですよ。業務手順は、ずっと変わり続けるものですから。SOPは最低限の手順を理解でき、記載されている内容でやりにくい作業があればすぐに改善・更新する。それをできるのがTeachme Bizの強みです」(鈴木氏)

 

 

 

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