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10億円の負債から復活した老舗旅館
-ITの活用でCSとESの向上に成功-
陣屋

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2018年2月号
 
従業員の働き方を変える独自の基幹システムを開発
 
夫婦で経営を立て直そうにも、互いに旅館業は全くの門外漢。さらに、経営経験も皆無だった。そんな2人が出した答えはシンプルそのもの。売り上げを上げて経費を下げることだった。
 
この基本方針を念頭に、業務の洗い出しを行ったが、山のように問題が出てきたという。まずは従業員が多く、人件費が経営を圧迫していたこと。もう1つは、情報が個人にとどまり、共有化されていないことだった。
 
「わずか20の客室しかない旅館なのに、パートやアルバイトを含めると120名もの従業員が働いていました。限られた仕事しかしていなかったため、お客さまを迎える太鼓をたたくだけ、という従業員もいたほどです(苦笑)。また、情報の共有化も全くできていない状況でした。例えば、顧客情報は女将である義母の頭の中にしかなく、誰も分からない。料理の原価管理は厨房任せ。厨房の従業員は食材が不足しないよう、多めに仕入れるので廃棄ロスが出る。さらにそのコストがどのくらいになるかも管理していないという状況で、まさに丼勘定でした」(知子氏)

 
そこで、120名いた組織や役割を組み直し、1人の従業員が複数の仕事をこなすマルチタスク制に変更した。従業員一人一人の負担は従来よりも増加するため、それを下支えするために基幹システムの導入に踏み切ったのである。

 
前職がシステムエンジニアだった従業員を採用し、独自のクラウド型経営管理システムの開発に取り組んだ。まずは予約管理に手を付けた後、顧客管理、売上管理、会計管理、勤怠管理、設備管理、社内SNS、経営分析など、さまざまな機能を一元管理し、全ての情報を従業員が共有できる仕組みを構築していった。この基幹システムを「陣屋コネクト」と命名。全ての従業員が閲覧できるように、スマートフォンやタブレット、パソコンの中から各自が利用しやすい端末を選んでもらい、1台ずつ支給した。
 
インターネットや電話での予約を一括管理することで、予約管理業務が大幅に軽減した。勤怠管理や売上管理を、それまで紙ベースで行っていたため、人事や経理担当者が集計に何日もかかっていた。しかし、ほぼ自動で行えるように改善したことで、即座に集計・グラフ化ができるようになった。

 
このように、陣屋コネクトによって業務の効率化を図ることで、マルチタスクで働く従業員の負担を軽減していったという。
 
システムの導入だけでなく、設備やサービスなどアナログな分野の改善も進めた。例えば、それまで食事は各部屋で提供していたが、レストランで提供するスタイルに変更。厨房から客室まで料理を運ぶ負担や、料理が冷めてしまう心配もなくなったのである。

 
「業務改善と並行して行ったのが賃金アップです。2009年当時の従業員の平均年収は288万円でした。これを8年間で約40%アップの398万円まで押し上げることができました」(知子氏)
 
年収の増加によって従業員満足度(ES)が向上したのは言うまでもない。
 

全スタッフで顧客情報を共有することにより、ミスや無駄のないきめ細やかなサービスを提供できる

全スタッフで顧客情報を共有することにより、ミスや無駄のないきめ細やかなサービスを提供できる


 
 

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