TCG Review

サイト内検索

10億円の負債から復活した老舗旅館
-ITの活用でCSとESの向上に成功-
陣屋

1 / 4ページ


2018年2月号

調理場の大きな画面には、当日の顧客情報や料理のリストなどがリアルタイムで表示される

調理場の大きな画面には、当日の顧客情報や料理のリストなどがリアルタイムで表示される


 
 

100年の歴史を誇る神奈川県の老舗旅館「元湯陣屋」は、新宿から小田急電鉄小田原線で約1時間の好ロケーションにある。現在は多くの宿泊客でにぎわうが、つい最近まで存続の危機に立たされていたという。危機からの脱出のために選んだ手段は、ITの有効活用だった。

 
巨額の負債を抱えての再スタート
 
神奈川県秦野市の鶴巻温泉にある「元湯 陣屋」は、2018年に100周年(創業1918年)を迎えた老舗旅館。将棋・囲碁のタイトル戦の開催地として全国に知られ、数々の名勝負の舞台になった。1万坪の広大な敷地内には趣のある日本庭園が広がり、特別な1日を過ごすために訪れた多くの宿泊客でにぎわう。
 
愛棋家にはおなじみの“聖地”陣屋が、存続の危機に直面したのは10年前の2008年だった。
 
バブルが崩壊して以降、宿泊客が右肩下がりの一途をたどったことに加え、都心から近い好立地があだとなった。周りはマンションが立ち並び、かつて17軒あった旅館もわずか3軒に減少。温泉街の風情は見る影もなくなっていた。
 
08年には、現在のオーナーである宮﨑富夫氏の父親が他界。翌年、いよいよ経営が立ち行かなくなり、前女将が心労で倒れてしまった。当時、大手自動車メーカーのエンジニアだった宮﨑氏は、いや応なく経営に当たらなければならない状況に陥った。
 
その当時のことについて、オーナー夫人で陣屋の代表取締役(女将)を務める宮﨑知子氏は、苦笑しながらこう振り返る。
 
「そのころに判明したのが、10億円の負債を抱え、経営破綻寸前であることでした。バブルがはじけて売り上げが低迷していたところにリーマン・ショックが起こり、赤字によるキャッシュアウトと借入金返済で資金繰りが厳しくなっていました。M&Aも検討しましたがうまくいかず、残された選択肢は、引き継いで経営を立て直すことしかなかったんです」
 
知子氏は2人目の子どもを出産したばかりだったが、オーナーと二人三脚での経営再建を決意。まさに背水の陣からの再スタートだった。

 
 
 
 

1 2 3 4