TCG Review

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vol.11 「日本らしさ」を表現したい気持ちをどこまで尊重するか?

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2019年9月号
 

海外市場に進出すると、日本企業は「和風プレゼンテーション」をしがちだ。ビジネス上、メリットのないことが明確な場合でも、感情的な部分で和風をアピールしたくなる。そうした“気持ち”に、海外進出企業はどう折り合いを付けるべきか?「保険」としての「ガス抜き」を提案したい。

 
 


 
 

ローカライズはリスペクトの表現

 
私は「ローカリゼーション」(地域適応)を専門領域の一つとしてきたので、海外市場進出のためのローカライズ戦略についてずいぶんと考えてきた。その間に、私自身の考え方にも変化が出ている。
 
ローカライズは、「すればよい」と簡単に言えるものではない。ブランドの表現ポリシーを安易に壊すのは危険である。市場の人たちがブランドに求めるイメージがあり、市場のテイストに近づけ過ぎると、ブランドのポリシーは何なのか分かりにくくなる。市場もローカライズを歓迎しない場合がある。
 
そのため、特に欧州のラグジュアリーブランドはローカライズをしないことをポリシーにしていたところが多い(最近は事情が変化しつつある)。
 
ローカライズは、市場で機能が発揮するかどうかを別にすれば(例えば、ソケットの形が違えばどうしようもない)、基本的に「市場にいる人々に敬意を表している」との態度表明である。
 
仮に、市場の潜在的要望事項が10あったとしても、その全てに対応するのではなく、「この会社は私たちをリスペクトしてくれている」と思われるために、10項目のうち一つでもよいからインパクトのあるローカライズが効果的である。
 
さて、こうした基本を踏まえ、日本企業が自国文化を前面に出すことに私は常に警戒してきた。製品に付随する文化を出すかどうか――例えば、日本酒をワインボトルに入れるか入れないかではない。本来、機能的には文化性が低い製品なのに、表現言語やプレゼンテーションは和風にこだわる、という領域の話である。
 
言うまでもないが、日本文化の正統派を愛好する欧州人も少なからずいる。しかしながら、それらが小さなコミュニティーであることも確かである。一方、「ニッチを各国から集めて、それなりの数にして市場を形成する」というアプローチもある。日本文化を前面に押し出すのは、この路線と軌を同じくするわけだ。「エスニック(民族的)戦略」とも言える。
 
他方、米国文化やフランス文化は、世界でもメジャーな位置を占めてきて、それなりに普及している。そのため、自国文化を出すことはエスニック戦略にはならず、「インターナショナル戦略」と言える。
 
つまり、自国文化のカラーを付けるかどうかという表現レベルでの文化の比重の問題だけでなく、それぞれの文化の普及度によって戦略そのものの位置付けが変わってくる。
 
さて、欧州の見本市やイベントでよく見かける「和風プレゼンテーション」をどう判断すべきか。これが今回のテーマである。
 
 
 

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