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vol.10 部品を作る企業の欧州進出

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2019年8月号
 

今回は部品や機械など、製造業に関わる企業の参考になるような内容を展開したい。この分野の市場開拓について、日本のメディアではアジアを取り上げがちで、欧州は少ないように感じる。リアルな現状とヒントを紹介する。

 
 


 
 
日本の中小企業の海外市場開拓と言えば、アジア市場開拓の事例紹介記事が多く、欧州市場の場合は生活雑貨や食品・酒の記事が目に付く。他方、アニメやファッションなどは、数年前に比べると減少気味という印象を持つ。これは政府のクールジャパン政策の軌道修正の影響なのだろうか。
 
しかし、その生活雑貨や食品・酒の記事にしても、実際のマーケット感覚とはかけ離れた「煽り」系の記事が少なくない。それらは輸出を試みる企業を惑わせるとも言える。
 
そこで、本連載では、生活雑貨の輸出の際に目を向けるべき現実について、これまで書いてきた。
 
もう一つ、日本の中小企業が考えた方が良いアプローチでありながら、ほとんど触れられていないことがある。部品や機械に関わる企業の参考になるような内容だ。そういう記事は、アジア市場を対象にしたものばかりである。
 
例えば、日本企業がドイツ大手の組み立てメーカーに部品を納入したといった実績を誇るニュースがないわけではないが、ポテンシャルのあるクライアントへいかにアプローチするか、それをどう長い取り引きへつないでいくかについての戦略を示唆してくれる記事に乏しい。従って、今回はこの点に関するアイデアを提示していく。
 

クラスターと小国に注目する

 
欧州で市場規模を語る時、それは四つの国に限られる。ドイツ、フランス、英国、イタリアである。消費財の市場を開拓する場合、これらの国々が筆頭候補に挙がる。いくら北欧のデザインセンスに見どころがあっても、あるいはオランダに面白いスタートアップがあると話題になっても、これらの市場に焦点を合わせて戦略を考えることはまれだろう。
 
人口は、ドイツ8300万人、フランス6700万人、英国6600万人、イタリア6000万人。一方、オランダは1700万人である。スペインにしても4600万人だ。市場規模が違い過ぎる。
 
しかし、部品や機械を売ろうとするなら、極端に言えば、市場規模とは無関係にアプローチすることが考えられる。人口の少ないどこの国でも、それなりの企業が欧州市場全体を相手にビジネスをしている。
 
ポイントは二つある。一つは、クラスターを探していくこと。そして、もう一つは小国にある企業と協力関係を持ち、そうした企業と大手メーカーをつなぐ道筋をつくることだ。
 
クラスターと言うと、代表例としてIT 産業を中心とした米シリコンバレーがよく引き合いに出される。日本であれば、名古屋市周辺や浜松市の輸送機器を核にした例が分かりやすい。あるいは福井県鯖江市の眼鏡もよく取り上げられる。
 
国際見本市に参加する、あるいは見学するだけでなく、ある分野に特化しているクラスターを、ビジネス機会として狙う。これが私の提案だ。
 
クラスターは欧州各国にたくさんある。自動車・バイオテクノロジー・通信・化学から衣服・靴・家具に至るまで、同業種の企業が集まる地域がある。そこには大学や公的な研究機関があり、その地域の産業をバックアップしていることが少なくない。本誌の前連載「Made in Italyの経営戦略」Vol.9(2018年1月号)で紹介した事例について、ここでもう一度、触れておきたい。
 
発泡酒のカテゴリーで世界一の販売量を誇るのは、イタリア東北地方で生産されるプロセッコである。数年前からフランスのシャンパンの販売量を抜いている。グレラという種類のブドウをヴェネト州とフリウリ州だけで栽培し、この地域の1000を超えるワイナリーが発酵・ボトリングして、3000億円以上のビジネスを行っている(そのうち輸出は約2000億円)。
 
このビジネスを支えるのが、地元にあるパドヴァ大学である。農学部の先生が栽培から発酵までのプロセスに研究を重ね、ワイン造りの人材育成にも貢献している。一方、経済学部の研究者は、プロセッコのメーカーの組合に対して、ブランドから流通までアドバイスしていく。
 
またヴェネツィア大学も同地域にあり、そこの学生が論文のテーマにプロセッコを選ぶ。こうした研究実績もビジネスを下支えする。
 
 
 

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