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vol.8 日本と欧州の工芸技術をデザインに生かすハンズ・オン・デザイン

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2019年6月号
 

文化や習慣の違いから、日本伝統の工芸技術を用いた日用品は欧州で受け入れられにくい。そんな難しい市場でありながら、挑戦を続けているHands on Design(ハンズ・オン・デザイン)の椎名香織氏に話を伺った。

 
 


 

工芸品の販路開拓方法を探る

 
前回(2019年5月号)、日本の漆などの工芸技術をスキー板に適用するブランドの挑戦を紹介した。フランスのパリで日本とフランスの工芸技術の交流を促進してきたが、日常生活で使えるものとしてビジネスを成立させるのはなかなか難しい。そう感じていたレインディアの高木美香氏が、スポーツ分野工芸技術の適用を図っている。
 
この例だけではない。スタートアップや中小企業の海外市場開拓において、工芸技術の継承や発展に貢献するといったテーマはよく目にする。地方の地場産業やローカル価値の活性化が、地方行政の中で注目されやすいので補助金が動きやすい、という背景もあるだろう。あるいは、そうした技術やものにほれ込むとのパターンもある。
 
いずれにせよ工芸品に一律の定義はないが、美術品の範疇からは外れながら、美しく機能性を持った日用品ビジネスの行方はさらに追ってみる価値がある。
 
今回は、2015年にHands on Designというブランドをミラノにおいて立ち上げたShiina+Nardi Designの椎名香織氏に話を伺った。欧州人や欧州に住んでいる日本人のデザイナーとイタリアや日本の工芸技術を使った製品を開発し、日欧で市場をつくりゆく。インタビューでは、この連載の趣旨から欧州市場への戦略や市場の状況に重きを置いた。
 
 

ミラノからデザイン+職人技術の商品を発信

 
椎名氏がブランドを立ち上げたのは、およそ30年近くの長い間、ミラノでデザイナーとして活動する中で、職人が常に気になる存在だったからだ。
 
クライアントとデザインのプロジェクトを進める際は、試作品を作るモデラーの仕事ぶりに注目することが多かった。ものを作るということは、こういうことなのだと腹落ちする経験を積み重ね、その腕の良さに助けられたこともある。
 
2013年にその後の転機となる打診が、ある人からあった。
 
「日本とイタリアが関連する展示内容を考えてくれ、と言われたのです。そこで、ずっと気になっていたイタリアの工芸品を日本人デザイナーがデザインする、というテーマを思い付きました」と椎名氏は思い起こす。
 
それが「J+I本女性デザイナーとイタリアの伝統職人」という名で実現した展示会だ。
 
この年とその翌年、2年間にわたって同企画に関わり、デザインと職人の技術のつながりが高い評価を得ることがよく分かった。
 
また京都でおけを作る中川木工芸の中川周士氏と知り合ったのも、この時期である。これが和風のワインクーラーの開発につながっていく。それまで椎名氏の職人とのネットワークはイタリアに限られていたが、それより日本の職人工房との付き合いが広がる。
 
そして同時に、こうしたものを売りさばく販路を持っていない悔しさも味わうことになる。
 
目の前に作品を欲しいという人がいても、それを売るすべがない。そこで、これまでのデザイン活動だけでなく、商品を売るための法人設立が構想として浮上してきたのだ。Hands on Designの会社設立は2015年であり、自社店舗を同年12月にオープンした。
 
2019年現在、取引のある工房は23カ所で、日伊はおよそ半々である。デザイン事務所は43カ所で、ほとんどが欧州にある。取扱商品数は100を超える。
 
売は自社店舗以外に、イタリア国内で数店舗、スイスのバーゼルやベルナ、フランスのカンヌのそれぞれの街の店舗がHands on Designの商品を扱ってくれている。さらに、インテリアデザイン誌『Wallpaper*』のオンラインショップでも販売されているが、このオンラインの売り上げは全体の1割程度である。
 
ちなみに日本では東京や京都のセレクトショップが販売している。
 
 
 

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