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【特別対談】異分野から学ぶビジネスモデルイノベーション
早稲田大学商学学術院教授 井上 達彦 × タナベ経営 村上 幸一

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2017年3月号
 

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早稲田大学商学学術院教授
井上 達彦氏 Tatsuhiko Inoue

1997年神戸大学大学院経営学研究科博士課程修了、博士(経営学)。2008年より現職。独立行政法人経済産業研究所(RIETI)ファカルティフェロー、ペンシルベニア大学ウォートンスクール・シニアフェローなどを歴任。研究分野は、ビジネス・モデル・デザイン。主な著書に『ブラックスワンの経営学』(日経BP社)、『模倣の経営学』(日経BP社)、『new combinations 模倣を創造に変えるイノベーションの王道』(日経BP社、2017年3月発刊予定)など。現在WASEDA EDGEで事業創造実践プログラムを展開中。


 

キーワードは「模倣」――。トヨタ自動車、ヤマト運輸、ニトリ。
誰もが名を知る企業も、成功の陰には異分野からの学びがあった。
タナベ経営の「ビジネスモデルイノベーション研究会」リーダー・村上幸一が、早稲田大学商学学術院教授・井上達彦氏に、会社の強みを磨く方法について伺った。

 
製品のイノベーションとビジネスモデルのイノベーション
 
村上 タナベ経営の「ビジネスモデルイノベーション研究会」では、企業がイノベーションを取り入れるため、異分野の革新的なビジネスモデルを学ぶフィールドワークを行っています。イノベーションの重要性をテーマにお話を伺いたいと思います。イノベーションの考え方が広まったのは、スティーブ・ジョブズ(アップル創業者)の影響があると感じています。一般的に、アップルは『iPhone』や『iTunes』(音楽再生・管理ソフト)が革新的だとされていますが、これは製品のイノベーションではなく、製品を含めたビジネスモデルのイノベーションですね。
 
井上 おっしゃる通りです。(携帯型音楽プレーヤーは)ソニーがすでに『ウォークマン』を作っていましたから、「製品イノベーションとビジネスモデルイノベーション、どっちがすごい?」という対比軸が明確に出せるわけです。
 
村上 最先端の技術をアップルが開発したわけではなく、すでにあった技術を持ち寄って、模倣して完成した側面が強い。ソニーにしてもiPhoneやiTunesを作る技術はほとんど持っていました。
 
井上 オハイオ州立大学のオーデッド・シェンカー教授が書いた『コピーキャット』という書籍を以前翻訳したのですが(P79参照)、彼はジョブズのことを「アセンブリー・イミテーター」と呼んでいます。すでにある技術をうまく組み合わせて世の中に出す。だから彼は模倣の達人だ、というわけです。ソニーも『Mora(モーラ)』という楽曲ダウンロードサイトを作っていました。ただ、既存のビジネスとの矛盾があったから、iTunesのようにはならなかった。ビジネスモデルイノベーションを起こしにくい縦割り組織だったんでしょうね。
 
村上 一度プラットフォームを築き上げたアップルは強い。日本は技術もあり、勤勉だけれど、収益に結び付ける力が弱いといわれます。
 
井上 プラットフォームの構築は、日本企業が苦手とするところでもあります。イノベーションをする上では、「何のイノベーションが必要か」を考えることが必要です。製品なのか、プロセスなのか、ビジネスモデル自体なのか。製品のイノベーションでは、他社に勝ったとしてもあっという間にまねされてしまったり、特許を迂回(うかい)されてしまったりします。トヨタの生産システムのような、プロセスそのものの位置付けにならない限りは、別の技術を用いて同じことを実現されてしまう事態が起こります。プロセスがビジネスモデルにまで成長すれば、さらに広げることができます。
 
村上 簡単に模倣できなくなりますね。いずれ模倣されるにしても、模倣にかかる時間が長い。先行者としてかなり差をつけることができるので、その間に、また新たなことに取り組めます。
 
 

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