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アフターコロナにおける新規事業開発の方向性
命を守る事業分野×事業の多角化=新市場の創造
巻野 隆宏

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2021年5月号

 

 

この1年間、コロナ禍との戦いの中で浮き彫りになったのは「命を守る事業分野の価値の高さ」「事業が多角化されている企業の強さ」だ。経営の原理原則にあるように「卵を一つのかごに盛らない」ビジネスモデルの重要性を今改めて感じる。命を守る分野とは、医療はもちろん、健康、介護、食品、物流、教育、情報、エネルギー、デジタル、セキュリティーなど多岐にわたる。ゆえに、ウィズコロナ・アフターコロナにおける新市場を創造する新規事業開発の方向性は「命を守る分野への事業の多角化」だと言える。これはコロナ対策だけではなく、異常気象、台風、地震など何十年に一度クラスの災害が頻発している近年において重要なキーワードだ。この方向性に従って、新たな市場を創造するために重要な5つのポイントと3つのアプローチを紹介する。

 

 

Point1 ミッション
貢献をミッションの中心に据える

 

まずは「事業に明確なミッションはあるか」「そのミッションに『貢献』という要素は含まれているか」が最も重要である。ミッションなくして新規事業開発に成功している企業は私の知る限り存在しない。

 

ミッションを実現するためのビジョンは、自社らしいソリューションで世の中に「新しい価値」をプラスするものでなければならない。「ビッグビジョン・スモールスタート・クイックインパクト」、つまり、大きなビジョンを掲げ、小さく取り組み始め、早く成果を出す。そのスタートがミッションの策定である。今一度、ミッションとビジョンについて、「貢献」を軸にしっかりと掲げていただきたい。

 

 

Point2 カスタマー
実在の顧客を幸せにすることへ取り組む

 

2点目は、実在する顧客をターゲットにした具体的な課題認識とソリューションを創り上げることである。実際、自分の困り事を解決できるソリューションがなく、自分で創業したスタートアップが多いことからも、具体的な顧客を想定した上での課題設定が必要であることが分かる。幸せにする顧客を決めて向き合うことから始めるのである。顧客が明確であれば顧客から速く、多くのフィードバックを受けることも容易になり、小さな開発サイクルを速く回すことができる。新規事業開発のスタート段階では、プロダクトづくりの前に、課題発見へ注力することが大事だ。そのためにも顧客を明確に定めることは重要な要素になる。

 

 

Point3 テクノロジー
共感できるパートナーと進化する先端技術で協働

 

3点目は、アライアンスで最新のテクノロジーを活用することである。テクノロジーの進歩は速いため、内製化で対応しようとしても追い付けず、外部とのアライアンスが課題解決の近道であることも多い。大切なのは、ミッションを同じくするパートナーと協働することだ。技術を共有する前に価値観を共有することが重要である。進化する先端技術は、これまで解決できなかった課題を解決する代わりに、また新たな課題を生むとも言える。半歩先回りした課題発見に覚悟を持って取り組めば、ホワイトスペースを見つけられる可能性が高まる。

 

 

Point4 ブランディング
事業拡大にはブランディングが不可欠

 

4点目は、インナーブランディングとアウターブランディングに取り組み、事業を拡大することである。優れたソリューションであっても、顧客に分かりにくいものは受け入れられない。価値を直感で伝える「新たな価値の可視化」が必要だ。

 

まったく見たこともないような、新しいものは出現しない。これまでの何を新しくしたものなのかを分かりやすく伝えるのである。Appleの「iPhone」でさえ、当初は「電話を再発明する」「電話に革新的な新しいユーザー・インターフェースを提供する」と発表していた。

 

ここで考えるべきブランディングとは、最初から大多数を取り込むためのものではなく、少数の「熱狂顧客」をつくるための取り組みである。それにはストーリーあるブランディング戦略の展開が欠かせない。誰に熱狂してもらいたいか、そのためにはどんなストーリーで新しい体験価値をイメージしやすく伝えるか。しっかりと考え、表現していただきたい。

 

 

Point5 チームビルディング
同じ熱量を持つ必要最小限のチームが成果を生む

 

5点目は、成果を生むチームビルディングとして、「同じ熱量である」「役割を異にする必要最小限のチームである」という2つのポイントを押さえておくことである。チームの中に嫌々参加している人が1人でもいれば、成果への大きな障害になる。無理やり人数を集めるのではなく、熱量の高い少数で実施することをお勧めする。

 

また、役割分担は明確な方が良い。例えば、どんどん動いて情報を取ることに長けた人、俯瞰して冷静に分析できる人、デジタルスキルが高い人、情報発信力が高い人など、個性や能力に応じた分担をする。

 

初めからそろわなくてもよい。必要に応じて柔軟にメンバーへ追加していくためにも、どういった役割が必要かをはっきりさせておくことが重要である。加えて言うならば、企業横断型の共創できるチームがイノベーションを生むため、社内外を見渡して、真に機能するチームをしがらみなく組成することが重要である。

 

 

 

 

 

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