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特別対談 インフラ・イノベーションが強くて豊かな国をつくる
京都大学大学院 教授 藤井 聡 氏 × タナベ経営 山本 剛史

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2021年2月号

 

 

タナベ経営 執行役員 経営コンサルティング本部 本部長
建設土木の新規事業、ヒト、社会インフラづくり研究会リーダー
山本 剛史(やまもと つよし)

 

 

投資削減の背景にある社会的罠と空気の支配

 

山本 「公共工事は税金の無駄遣い」といった論調は盛んです。メディアがその一端を担っているところもありますね。

 

藤井 短期的なものに目がいきがちになるのは、人間なら誰もが持っている性質です。ただ、最近はマスメディアが刺激的な報道に走ったり、物事の1つの側面を強調したりする傾向が強まっており、それが社会的罠を深刻にする一因になっていると思います。

 

また、社会的罠だけでなく、「空気の支配」も短期的な思考に陥る要因です。特に日本人は場の空気やムードに流されてしまう傾向があります。ここ20年ぐらい、「インフラは悪」「インフラは無駄」「インフラは利権と関わっている」といった紋切り型の空気がこの国を支配しており、それと刺激的な報道に傾くマスメディアが結び付いて、「公共工事は不要」といった世論が強化されています。インフラ投資の落ち込みが、社会学的な集団心理現象によってもたらされていることは問題です。

 

山本 そのような状況を変えるために、藤井先生はインフラ投資や土木技術の必要性についてメディアなどで積極的に発信されています。

 

藤井 土木技術が人類や国家の水準、その発展の水準を決める点を鑑みると、今の状況は多大な国家的損失をもたらしていると言わざるを得ません。少しでも世論の空気を是正するには、ラジオやテレビ、さらに私の主宰する雑誌を通した言論活動によって、世論のゆがみを改善していくほかありません。私がメディアなどで発言するまでは、インフラ問題について言論活動をする人はほとんど皆無でしたが、最近はインフラを加味した上で言論を展開する人が増えています。

 

山本 そうした活動が増えていくと、公共事業を取り巻く環境も変わっていくはずです。そのために個人や企業ができることはありますか。

 

藤井 ジャーナリストや有識者のモラル、国民の良識があれば、公共事業バッシングの暴走を止めることができます。まずはご自身が、インフラ事業が地域や国の発展、国民の幸福にとっていかに重要かを知ることが大切です。インフラについて分かりやすく解説した新書も出ていますし、雑誌の購読や企業であれば講演会のスポンサーになって言論活動を応援する方法もあります。

 

また、そうした情報をSNSなどで紹介することも、空気を変える一歩になると思います。特に、インフラ事業に関連する業界の方には、周囲の人や子どもたちに重要性を伝えていただきたいです。

 

 

 

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