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特別対談 インフラ・イノベーションが強くて豊かな国をつくる
京都大学大学院 教授 藤井 聡 氏 × タナベ経営 山本 剛史

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2021年2月号

 

 

 

 

社会を形成するインフラとスープラ

 

山本 小さな漁村が首都圏を支えるエネルギー拠点へ変遷するとは興味深い事例です。

 

藤井 それを演出したのは公共投資です。小名浜港湾イノベーションは、小さな種から大きな花が咲いたモデルケースであり、適材適所にうまく公共投資を行っていくことで地域は大きく発展し、国家に貢献することを教えてくれる事例と言えます。

 

山本 インフラ投資がいかに大事か。それがよく分かります。

 

藤井 インフラが重要なのは、人類史や生物史にも共通しています。あらゆる生物史は、環境を整え、その環境の中で発展し、発展した活力を使って環境を整えるという繰り返しです。アリやハチ、トラ、サル、そしてヒトも同じ。住みやすいすみかを作って、その中で適切な活動を行って発展し、発展した種族がそのエネルギーを使って、すみかや環境に働きかける。環境と生態との間の無限循環が生物の活動です。

 

山本 すみかというインフラを整えてこそ、政治や経済、文化をはじめとする、あらゆる活動が盛んになる。社会はインフラというベースの上に成り立っているわけですね。

 

藤井 それを、「インフラ」と「スープラ」と呼びます。インフラは国土を意味する下部構造を指し、スープラが人類の活動そのものを指しています。例えば、経済や政治、文化などはスープラであり、上部構造となります。下部構造と上部構造の循環を通して発展していくのが生物であり、その循環がより高度化していくと人類はより豊かに、幸福になっていきます。

 

そして、循環を高度化する最大の技術が土木技術なのです。土木技術がしっかりとしていれば、火星や月にだって住むことができますよ。もちろん、アフリカや熱帯地域、極寒の北極や南極であっても、土木技術がしっかりとしていれば人類は発展し、社会をつくり上げることは可能です。

 

山本 インフラによって暮らしが大きく変わる。それは、イノベーションとも言えますね。

 

藤井 住む場所だけでなく、農業土木が進歩したことで人々は太陽の恵みから大地の恵み(コメなどの作物)を得ることができます。それはエネルギーも同じ。ダムを造る土木技術があるから、水力発電によって巨大なエネルギーを取り出すことができるのです。

 

つまり、与えられた自然環境を暮らしやすいように組み替えていくのが土木技術と言えますが、その発展がなければ原始時代、あるいは中世のままの社会が続くことになる。その意味で、人類の発展の上限を決めているのは土木技術であり、それを進化させることで幸福の水準を上げることが可能になります。

 

それにもかかわらず、そうした面が理解されないまま、公共事業やインフラ投資が抑制されていることは非常に残念です。

 

 

 

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