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【特集】

建設テック

「Construction(建設)×Technology(技術)」の融合で、建設業の生産性向上と技術革新を図る動きが活発だ。AI 活用やドローン 3D測量、XRなどの最新技術を建設現場に全面導入し、土木・建築・設計の常識を覆しつつある事例を紹介する。
メソッド2020.01.31

建設業が勝ち残るナンバーワン戦略~ICT型モデルの展開~:竹内 建一郎

 

 

建設業を取り巻く外部環境の変化

 

建設業を取り巻く課題は大きく二つある。今後の建設投資市場は縮小に向かうことと、人材不足がさらに深刻化することである。

 

建設投資市場の縮小については、①利益が出る案件の減少、②地域格差のさらなる拡大、③価格競争の激化といった面で、すでに傾向が表れている。例えば②について、首都圏では「2030年まで十分に仕事が見込める」と話す建設会社の経営者は多いが、地方の場合、「今後の建設需要は見込めない」とこぼす経営者も多い(ただし、首都圏においても利益の出る案件数は少なくなってきている)。

 

また、マーケットが縮小すると入札で価格競争に陥り、単価が下落する③の流れは、これまでも建築・土木市場が繰り返し経験してきた通りだ。

 

建設業界が直面するもう一つの課題、人材不足のさらなる深刻化については、総人口・就業者数の減少、高齢化、採用難の三つの要因がある。

 

1.総人口・就業者数の減少

 

日本の人口は、2063年に9000万人台を割ることが見込まれている(国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」2017年推計による)。各産業で人材の獲得競争が激化していくことは必至であり、建設業の人材不足は今後も引き続き課題であると言えよう。

 

さらに、これまでの20年間を見ると、建設業就業者数の減少は顕著だ。1997年のピーク時に685万人いた建設業就業者数は、2018年には503万人へ減少(約20年間で182万人減)。また、1997年に464万人いた建設技能者数は、2018年には331万人へ減少した。どちらも約20年で約7割まで減少したことになる。

 

2.高齢化による影響

 

建設業では高齢化と若年層の減少が続いている。1999年には24.5%だった建設業における55歳以上の比率は、1999年の24.5%から2018年には34.8%へ増加。一方、29歳以下の若年層は1999年には21%を占めたが、2018年には11.1%まで減少している(全産業の場合、2018年の55歳以上比率は30.2%、29歳以下比率は16.5%)。

 

つまり、日本全体の人口が減少する中、建設業はこの進行がいっそう顕著であり、その現実へいかに対応していくかが求められている。

 

3.採用難の深刻化

 

人材獲得力(採用力)の低さは、建設業を悩ませる最大の課題と言っても過言ではない。全業種の有効求人倍率(常用、パートタイマーを除く)は1.43倍(2019年10月)だが、建設業関連職種の有効求人倍率は6.80※1に上る。こうした現状を打破するため、建設業界では「新3K」(給料、休日、希望)の実現を目指す動きも広まっている。

 

建設技能者の採用が難しい現状を踏まえ、近年、海外から技能者を受け入れる企業が増えている。ある建設会社では、海外(エジプト、マレーシア)からインターンシップ生として技能者を受け入れ、一定期間後に正社員として採用している。

 

ちなみに、インターンシップ生の海外人材の多くはICT業務に従事しているが、彼ら・彼女らのICT技術は日本の学卒社員よりも高い。海外からのインターンシップ生は、何十倍もの倍率をくぐり抜けて実習に参加しているため、モチベーションの高い優秀な人材が集まっており、その多くは現場で即戦力として活躍している。

 

※1 「建築・土木・測量技術者」「建設躯体工事」「建設」「土木」の有効求職数合計に対する有効求人数合計の割合

 

 

 

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Profile
竹内 建一郎Kenichiro Takeuchi
タナベ経営 経営コンサルティング本部 大阪ファンクションコンサルティング本部長。大手メーカーで商品開発の生産マネジメントに携わった経験を生かし、経営的視点による開発・生産戦略構築から現場改善まで、多くの実績を上げている。モットーは現場・現実・現品の「三現主義」。
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