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メソッド2021.06.01

ウェブサイトリニューアルの成功ポイント:マーケティングコンサルティング本部

 

 

 

 

サイトリニューアルは半数以上が逆効果!?

 

最近、クライアントから「ウェブサイトをリニューアルしたい」と相談いただく機会が増えた。ウェブサイトのリニューアルとは、見た目だけでなく、集客、販促、経営課題や事業戦略の構築に役立てるための大規模な改善を意味する。だが、表面的なリニューアルにとどまり、改善の成果が出ていない企業が少なくない。

 

サイトのアクセス解析やウェブマーケティングを手掛けるWACUL(東京都千代田区)の社内研究所・WACULテクノロジー&マーケティングラボが発表した「WebサイトリニューアルとCV・CVR向上の相関関係についての調査」(2019年7月)によると、ウェブサイトのリニューアルを行った企業の7割はCVの改善がなく、半数以上が逆効果だったという。

 

しかし、企業のブランディング・マーケティング活動において、ウェブサイトは重要な役割を果たしていると言わざるを得ない。紙媒体に比べてコストが低く、表現できる幅は広く、施策の結果を全て数値で管理できるからだ。

 

加えて、数カ月以上も更新されていない、またはデザインのみにこだわりユーザーの使いやすさを考慮できていないウェブサイトは、顧客の信頼感に悪影響を与える。前述の調査ではリニューアルを「表層的変更」と「構造的変更」の2種類に分類しており、「効果がない」「逆効果」だった企業は、表層的な変更がほとんどだった。自社の商品やサービスを分かりやすく伝え、ユーザーの信頼を勝ち取るには、構造的なリニューアルが不可欠なのだ。

 

だが、構造的なリニューアルと一言で言っても、やるべきことは多岐にわたる。専門部署がない場合、何から行えばよいのか混乱するのは当たり前だ。本稿では、自社サイトのリニューアルの基本的なポイントを紹介する。

 

 

目的を明確にしゴールは数字で設定

 

最も重要なのは、リニューアルの目的を明確にすることである。主な目的と言えば「顧客集客」「採用活動」だが、ウェブサイトの運用を効率化するための改善で終わってしまう企業が少なくない。「ウェブサイトを立ち上げて時間がたったからリニューアルしよう」「新商品やサービスができたので、とりあえずウェブサイトを構築しておこう」など、目的を明確にしないまま進行しているケースが大半である。事前に経営層と現場でリニューアルの目的を共有しておらず、意思決定にズレが生じているのも原因の1つだ。

 

このような事態を発生させないためにも、企業の事業戦略や営業戦略に基づき、「事業の目的達成に向けてウェブサイトをどう貢献させるか」という視点でリニューアルの目的を検討する必要がある。例えば、事業目標が売上高増加であれば、「集客のための情報訴求」「自社の強みと考えているキーワードからの流入数増加」などがある。自社ブランディングが目的であれば、実績、サービス紹介、従業員の働く姿を掲載し、信頼・安心感を伝えていく。

 

次に、リニューアル前のウェブサイトの課題を洗い出す。営業・総務・人事部などの部署ごとに確認することで、リニューアル時に修正すべき項目が明確になる。デザインや写真などの視覚的な情報だけでなく、「問い合わせ数を〇%増加させる」「就活ポータルサイトへの誘導を昨対で〇名増加させる」など、より具体性のある数値を設定する。

 

 

※コンバージョン。ウェブマーケティングにおける成果指標。EC(物販)サイトならコンバージョンは商品購入。また、アクセスしたユーザーが商品購入に至った割合をCVR(コンバージョン率)という

 

 

 

 

適切なタイミングでリニューアルする

 

リニューアルの目的を達成するためには、タイミングも重要である。

 

1つ目のタイミングは、周年行事や新規事業立ち上げ、CI(コーポレートアイデンティティー)策定、VI(ビジュアルアイデンティティー)策定、経営刷新など、自社にとって節目となるタイミングだ。これらの行事は、顧客へ情報を訴求することが重要であり、ウェブサイトをリニューアルすることでタッチポイントを増やすことができる。

 

例えば、周年行事であれば、コーポレートロゴの変更や事務所移転などの更新情報をウェブサイトに掲載する。リニューアルのタイミングを営業担当者に共有することで、しばらく取り引きのなかった休眠顧客への営業ツールとしても活用できる。

 

また、リニューアル時には、これまで使用していたツール全体を見直していただきたい。パンフレットなどの紙媒体の情報は新しいが、ウェブサイトの情報が古いということがあってはならない。逆のパターンもしかりだ。オフラインとオンラインで訴求内容を統一しておかなければ、自社も顧客も混乱してしまう。節目となるタイミングで全社的にリニューアルすることで、ツールごとの訴求内容の違いを防ぐことができる。

 

2つ目は、自社ウェブサイトの機能低下を感じるタイミングだ。これには、「ウェブマーケティングの問題」と「システムの問題」の2つが考えられる。

 

(1)ウェブマーケティングの問題

 

資料請求や商品への問い合わせ数の減少などである。ウェブサイト開設当初は問い合わせや資料請求が多かったものの、次第に減少してしまったというパターンは多い。コンテンツを更新・拡充しても成果が出ない場合は、コンテンツの企画そのものや、UI(ユーザーインターフェース)を見直す必要がある。

 

例えば、資料請求や問い合わせのページを、ノウハウの共有や製品説明会系のセミナー、成功事例集の紹介ページに変更する。併せて、無料見積依頼やAIチャットなどさまざまな施策も検討しておく。また、ターゲットユーザーの役職に応じた施策を打てば成果は出やすくなる。どのような情報が必要なのか(ニーズ)は、立場によって異なるからだ。

 

(2)システムの問題

 

システム機能の老朽化、不十分なセキュリティー対策が挙げられる。システム機能の老朽化で多いのは、ウェブサイトのスマートフォン表示への未対応である。パソコン用のウェブページが表示されてしまう使いづらいサイトを、スマホで見たことがないだろうか。情報収集のデバイスとしてスマホの存在は大きいため、顧客の利便性を考えるのであれば、表示をスマホに対応させ、ユーザビリティーの向上を目指すべきである。

 

また、検索エンジンサービスを手掛ける米Googleは、ウェブサイトがスマホに対応しているかを認識し、対応しているサイトを検索結果の上位に表示するアルゴリズムを用いている。ウェブサイトのスマホ対応は、検索結果の表示順位に大きく影響を及ぼすため、早急に対応いただきたい。

 

不十分なセキュリティー対策で代表的なのは、SSL(Secure Sockets Layer)化の未実装だ。SSLとは、送受信しているデータを暗号化する通信手順のことで、第三者による個人情報の流出や改ざんを防ぐことができる。自社サイトがSSL化されているかはURLで判断することができる。「https://」から始まっていれば対応できている証拠だ。

 

SSL化もスマホ対応同様に、検索結果の表示順位に影響する。また、場合によっては「このホームページは保護されていません」と警告が表示されることもある。顧客のイメージ低下につながりかねないため、こちらも早めに対処すべきだ。

 

リニューアルの目的を明確にし、自社にとって節目となるタイミングを見つけ、ウェブサイトのリニューアルを進めていただきたい。

 

 

 

 

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