TCG Review

サイト内検索

経営環境を自ら変えるための長期ビジョン策定
藤井 健太

1 / 2ページ

consultant_reviewbanner
2021年5月号


 

 

【図表1】大和ハウスグループのミッション

出所:大和ハウスグループホームページよりタナベ経営が作成

 

 

「VUCA」時代の到来

 

近年、企業を取り巻く環境を表す言葉として、「VUCA」というキーワードが浸透しつつある。VUCAは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとった言葉である。新型コロナウイルスの感染拡大、気候変動による災害、急速なデジタル化――。今、未来はどのように変化していくのかまったく予測できない状況にある。将来の経営環境を見通すことが、以前よりずっと困難な時代になったのだ。

 

企業は「環境適応業」。強い企業ではなく、環境に適応できた企業が生き残るというのが経営の原理原則である。しかし、コロナ禍以降、未来の変化は大きく、速くなる。急速に変化し続ける環境にその都度、対応するだけでは、経営は成り立たないだろう。

 

では、何をすべきか。自社を取り巻く環境を自ら変えていかなければならない。大きく変化する環境や顧客ニーズを予測し、先に仕掛けなければ生き残れない。これがVUCA時代の環境適応の仕方となる。

 

企業自らが社会へ新しい価値を問い掛け、新しい環境を創っていくことが求められる時代なのである。

 

 

ミッションを具現化するためのロードマップを作成する

 

数多くの経営者と話す機会があるが、未来が分からないことを理由に単年度方針・予算しか策定しない企業が少なくない。経営の価値判断基準は理念・ミッション・ビジョンの3つ。理念は不変の価値。ミッションは未来に向けた社会課題への貢献価値であり、変化させていく必要がある。ビジョンは企業の意志であり、理念実現・ミッション推進のためのマイルストーンになる。

 

これらの価値判断基準が存在しない経営はあり得ない。「環境が変わる」ということは「顧客の求める価値」が変わるということでもある。ミッションは顧客ニーズや変化する社会課題に応じて再定義しなければならない。

 

コロナ禍で苦境に立たされているクライアントは多い。ビジョンと現実のギャップが拡大しており、不況というトンネルの出口もまだ見えていない。しかし、クライアントの中にビジョンを諦めている企業は1社もない。なぜなら、前述した通り、社会課題を解決したいという強い意志があるからだ。トンネルを抜けるだけでも苦しく、ビジョンの実現は当面困難だろう。だが、企業のトップ・社員がその意志を曲げない限り、必ず実現できると信じている。

 

事例を1つ紹介しよう。大手住宅総合メーカーである大和ハウスグループ(大阪市北区)は、自社の固有技術を生かせるマーケットを「ア・ス・フ・カ・ケ・ツ・ノ」に絞り、それをミッションとして定義し、未来の社会課題に対する事業を次々と生み出している(【図表1】)。長期ビジョンを15カ年、中期ビジョンを3カ年で策定するロードマップを展開し、結果として、ビジョンを前倒しで実現している。

 

また、同社の成長をけん引していた一般住宅事業の売上高の比率を10%強まで下げた。他のさまざまな事業を成長させ、見事な事業ポートフォリオを描いている。各事業で社会課題へのソリューションを生み出すことで、企業としての幅や奥行きが拡大していることが分かる。

 

大和ハウスグループの事業ポートフォリオの展開パターンは、タナベ経営主催の「2021年度 経営戦略セミナー」で示した【図表2】の4パターンのうち、左上の「複数ドメイン×複数ブランド」と言えるだろう。自社の事業展開パターンの参考にしていただきたい。

 

 

【図表2】事業ポートフォリオの展開パターン

出所:タナベ経営「2021年度経営戦略セミナー」テキストより筆者が加工

 

 

 

1 2