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メソッド2020.08.31

アフターコロナで求められる「見える化」:デジタルコンサルティング事業部

 

【図表】新型コロナ禍による価値観の変化

 

 

コロナショックで加速した社会の変化

 

新型コロナウイルスの感染拡大から半年以上が経過した。休業要請や従業員のテレワーク(在宅勤務)、移動制限などへの対応に奔走していた企業は徐々に現状を受け入れ、未来に向けた議論を進めている。

 

今、多くの企業に求められているのは、「働き方」に関する取り組みだ。「生産性の向上」「労働集約型からの脱皮」「働き方改革関連法への対応」など、昨今企業が取り組んでいる改革の現時点での進捗状況が、そのまま表れたと言っても過言ではない。新型コロナ禍で企業に求められた対応力は、近い将来、価値観の変革として再度企業に求められるだろう。

 

とはいえ、ほとんどの中堅・中小企業は、まだ頭を抱えているのが現状だ。アフターコロナで加速する(求められる)変化は、これまで企業が「何から始めたらよいのか分からない」代表格であったDX(デジタルトランスフォーメーション)やSDGs(持続可能な開発目標)が大きく関係しているためである。

 

その中でも、本稿はDXに焦点を絞り、アフターコロナに向けて企業がまず取り組むべき「見える化」について考察していく。

 

 

アフターコロナの働き方と見える化の必要性

 

新型コロナ禍の影響によりさまざまな価値観の変化が起こったが、大きくは【図表】の三つに分けられる。

 

①「人が動く」ことへの抵抗感増加
②デジタルツール使用の心理的ハードル低下
③リスクヘッジに対する重要度増加

 

これらの変化によって、企業はどのような対応を求められているのか。結論から言うと、「誰に・何を・どのように」のうち、「何を・どのように」の変革が必要となる。

 

「何を」の変革については、業界全体として「付加価値」の置き所が変わってくることが想定される。BtoC企業であれば、「在宅サービス」の付加価値増加が分かりやすい例である。BtoB企業においても、働き方が変われば企業が求めるサービスも変わる。

 

次に「どのように」だが、これは個人の働き方の変化に起因するところが大きい。高度化・自動化・離散化・合理化といった変化が想定される。先述の価値観の変化を踏まえると、人が動く業務は自動化され、働く場所と時間は離散的になる。人を動かすこと(上司が部下を、営業社員が顧客を、など)はより合理的になり、思考や判断はさらに高度なものが求められる。

 

ここまでの総論段階で見える化の必要性が見えてくる。企業が提供する付加価値を変革する中、社員は離れて仕事をしており、上司はそうした社員を合理的なコミュニケーションで動かしていかなければならない。このような状況下で、チーム一丸となり成長する姿を想定すると、ビジョンから現場のPDCAまで全ての情報が見える化される方向に進むのは自然なことと言える。

 

また、今回の見える化の議論と併せてデジタルツールの活用も重要な要素であることを忘れてはならない。デジタルツールの活用を前提とした見える化が今後の重要課題になるからである。

 

 

 

 

見える化を進める4ステップ

 

見える化は次の四つのステップに分けられる。

 

(1)自社の価値をリ・デザイン

 

想定されるリスクと機会を抽出し、「誰に・何を・どのように提供するか」とバリューチェーンに沿って定義するとともに、社内の役割や組織活動の意義を再定義する。

 

(2)新たな価値に基づいた「ニューノーマル(新常態)」設計

 

現在の業務フローを見える化し、再定義した価値に基づいて新たな業務フローを設計する。「人が動くことに価値があるか」を判断基準とし、自動化業務・アウトソーシング業務を選定する。

 

(3)個人別の役割とマネジメント方法の設計

 

対面でのコミュニケーションが減少することを前提に、個別の役割とその進捗把握・評価システムを設計する。短期的な成果や目前の職務のみならず、人材育成など中長期的な事業継続に対する貢献も役割として定める必要がある。

 

(4)ベンチマーク指標と検証方法の設計

 

業務フローのデザインとともに、ベンチマーク(目標基準)となる生産性指標と検証方法を設計する。生産性向上の目的を見失わず、またそのやり方が有効かどうかを検証するためには、生産性指標を定めることがポイントとなる。

 

ここで留意すべきは、(1)および(2)の上流工程は一気通貫で全体設計が必要なのに対し、(2)の下流工程から(4)にかけては、トライ・アンド・エラーでPDCAを回しながら素早く意思決定することであ。

 

これはDXの構造と酷似している。つまり、ビジネスモデルの変革、基幹システムの入れ替えなどは入念に検討する必要がある一方で、RPAなどのアジャイル型(機敏かつ柔軟に対応するためのソフトウエア開発手法)の開発においても、一定の知識を有した意思決定者が現場のプロジェクトに参画していなければならない。中堅・中小企業でDXが進まない原因は、この構造に対応できていないことにあると私は考えている。

 

 

素早い意思決定で環境適応力の底上げを図る

 

見える化の手順について説明したが、最終的に明暗を分ける要素は、冒頭の「計画性と実行力」に他ならない。今回の新型コロナ禍において対応が後手に回った企業は、アフターコロナにおいても変化に対応できない危険性が非常に高いと言える。

 

自社の価値と業務フローの見直し(計画性強化)はすぐに実行していただくとして、実行力強化に向けて全社員の働き方改革に対するデジタルリテラシーなどの強化、および意思決定者(CDO:最高デジタル責任者)の育成を急ピッチで進めていただきたい。

 

 

※ロボティック・プロセス・オートメーション: ソフトウエア型ロボットによる業務自動化

 

 

 

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