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「学び方改革」の進め方
影本 陽一

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2019年10月号


 
 
学び方改革が必要とされる背景
 
最近、「働き方改革」「生産性改革」について相談を受けることが多い。このテーマを掘り下げると、働く社員の「学び方改革」が“ 待ったなし” であることに直面する。
 
相談内容は次の三つに大きく分類される。それぞれの背景を整理する。
 
(1) 後任人材への継承推進
 
2015年までに定年退職し、再雇用された「団塊の世代」の嘱託社員が、2020年ごろから次々と退職を迎える。その人たちが持つ熟練技術や経験値、人脈などを誰にどう引き継ぐか。計画的な継承推進策が必要となっている。
 
(2) デジタル技術の導入検討と教育
 
“ 超スマート社会” 実現を目指す政府の基本指針「ソサエティー5.0」が2020年度に最終年度を迎え、デジタル革新が本格化するとみられている。既存業務を見直し、「やめる」「改める」「追加する」ものがないかを検証する。次にAI(人工知能)やRPA(ロボット技術による業務自動化)などデジタル技術を導入し、人間の業務と代替できないか検討する。それが可能ならば、導入教育を行う必要がある。
 
(3) 早期戦力化への対応
 
「働き方改革」に伴う休日の増加や残業削減で、OJT(オン・ザ・ジョブトレーニング)を中心とした人材教育時間が縮小している。さらに、2020年(中小企業は2021年)4月1日から「同一労働同一賃金」が施行される。非正規社員(パート・アルバイト、派遣社員など)・正社員にかかわらず、同じ職場で同じ仕事に従事する人の待遇差・賃金格差を解消することが求められる。若手や非正規社員の早期戦力化への取り組みが必要となる。
私はこのうち、(3) の早期戦力化について多くの企業から相談を受ける。このテーマの成功ポイントは「背景・目的・手段」を共有化することだ。次に、事例と留意点を挙げていく。
 
 
背景・目的・手段の流れで共有化する
 
(1) 「背景」の共有化
 
製造業A社で現場(生産、営業)の学び方改革が始まった。当初、ある部門長は改革に消極的だった。「なぜ今、この改革が必要なのか」という背景の理解がなく、目先の業績や自部門の都合しか見えない近視眼的な状況に陥っていたことが原因だった。
 
そこで部門長以下、現場のリーダーを集め、A社を取り巻く経営環境の現況と今後の理想の働き方について、「学び方改革」の進め方意見交換を行った。その上で、理想の実現のために何が必要かを考えてもらい、学び方改革に取り組む必要性を共有化した。
 
(2)「目的」の共有化
 
次に、早期戦力化を行う目的を共有した。まず、「自社の存在価値は?」「どのような顧客に、商品・サービスを通じていかにお役に立つか」「そのために必要な取り組みは何か」を踏まえ、その上で自社の経営理念や年度方針を再検証した。そして、「今後どうしたいのか」という未来志向と、「自分たちに何ができるか」という当事者意識を共有した。
 
改革の意義を自分たちで考え、目的への理解を深めることで、「やらされ仕事」ではなく主体的に取り組む姿勢をつくることができる。
 
(3)「手段」の共有化
 
手段については、他社の成功事例を学び、どのような取り組みが自社に適しているかを検討した。内容の他に進め方や期待される効果についても意見交換し、実施内容をスケジュール化。プロジェクトメンバーの役割などを決めた。
 
この後、仕組みと運用ルールを設計するため、教育体系の現状確認と改善策の立案を行った。その過程で出てきた課題と取り組みを次に整理したので、生産性向上のポイントとして確認をいただきたい。

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