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自律型組織を実現する「わがこと感」
峰村 和磨

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2019年4月号


 
持続的成長を目指すために
 
いよいよ東京オリンピック・パラリンピック開催前年である2019年度がスタートした。日本は本年度に「五輪関連需要のピーク」「消費税増税による駆け込み需要」という大きな山が訪れ、来年度以降の国内経済は下り坂に入るといわれている。
 
こうしたマクロ的な環境要因に加え、技術革新と消費者の価値観の変化、異業種や海外からの競合参入など、私たちを取り巻く環境は日々、目まぐるしく変化を続けている。
 
このような変化の早い時代において、企業が持続的成長を目指すためには、訪れた変化や社内の指示・命令に対応するだけの「他律型組織」ではなく、一人一人が変化を予測し、協力して物事に取り組み、目標達成に向けて主体的かつ柔軟にPDCAサイクルを回す「自律型組織」をつくる必要がある。
 
本稿では、自律型組織づくりに不可欠な「わがこと感(わがこと意識)」を高める3つのポイントについて、事例を交えながら紹介したい。
 
 
ビジョン・ミッション・コアバリューの浸透と共感
 
タナベ経営では、従前より「経営のバックボーンシステム」を提言している(【図表】)。この構築と社員への浸透の重要性をあらためて認識した、エレクトロニクス系商社であるA社の事例を紹介したい。
 
A社は、かつて日本のお家芸ともいわれた産業を軸に事業を展開、海外現地企業のM&A(合併・買収)なども進め、働けば働くほど業績は右肩上がりで成長を続けた。
 
しかし、海外の新興企業の台頭によるエンドユーザーの業績不振や技術革新により、A社を取り巻くサプライチェーンのドラスティックな変化などに見舞われ、売上高・粗利益率は大きく低下。企業として目指すべき方向性を見失い、巻き返しを図るための「戦闘」が先行し、社員の業務負荷は増大した。組織力が低下し、離職率も上昇するなど企業として大きな革新が必要な状況に陥った。
 
そこでA社は、変化が激しく先の見えない時代だからこそ、羅針盤となる5年後の中期ビジョンを策定することにした。これまでの成長の軌跡、社会に対してのミッション、自社のコアバリュー(組織の中核となる価値観)をまとめて冊子化。海外グループ企業も含めて全社員に配付し、四半期に一度、営業日を丸1日使って中期ビジョン・ミッション・コアバリューを日々の業務レベルに落とし込むための議論の場を設けた。
 
特に、それまでの企業の成長をけん引し、コアバリューが染み付いているベテラン社員と、自身の成長・自己実現を目的に入社する傾向がある若手社員との価値観の相違は大きく、当初は困惑の声も多かった。
 
しかし、営業日を犠牲にしてでも時間を設けたことや、日常レベルに落とし込めるまで丁寧に根気強く議論や分科会活動を続けたことが奏功し、3年目に入るころには共通の価値観を基に社員が主体的に判断し、日々の業務に目的意識と納得感を持ってチームとして取り組めるようになった。結果として、社内公募によって生まれた高粗利益の新規事業を第2の柱とすべく、現在、組織横断型で収益拡大に向けた活動を行っている。
 
業績不振に陥ると、社外への活動量の増加に目が向きがちであるが、社内を見直して組織力を強化することで、結果として業績向上につながることも多い。ビジョンが明文化されていない企業は明文化を、浸透に自信がない企業は冊子化や浸透の仕組みづくりの検討をお勧めしたい。
 
 
【図表】経営のバックボーンシステム
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