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中堅・中小製造業にIoTがもたらすインパクト
山内 優和

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2018年1月号


 
市場を一変させる可能性を認識しているか
 
これから労働人口が減少していく日本にとって、第4次産業革命は極めて重要な位置付けを占める。なぜなら、生産性をダイナミックに向上させない限り、売り上げ・利益を伸ばすことができないからだ。
 
しかしながら、中堅・中小企業の多くは、IT化に関心はあるものの、なかなか投資に踏み込めないというのが現状である。その要因はいくつかある。1つは、IoTがもたらすビジネスチャンスや脅威といったインパクトに対し、経営者自身が気付いていないことが挙げられる。
 
東京商工会議所が2017年3月にまとめた報告書によると、会員企業1087社に最新のICTに関して利用意向を尋ねたところ、IoTを実際にビジネスで活用している、または今後活用したいと回答した中小企業は合計20%にとどまった。「活用したいが方法や効果が分からない」とする“予備軍”を合わせても35%である。
 
残りの企業は「導入する予定はない」(28%)や「無回答」(19%)、「活用すべき分野がない」(18%)などであり、情報産業が集積しICTへの感度が高い都内の中小企業ですら、IoTがもたらすビジネスチャンスや脅威に気付いていないということである。(【図表】)
 
人材不足の問題もある。IoTに強い関心がありながら、具体的にはどうすればよいか分からないという状態の会社は多い。IoTについて理解している人材が社内にいないため、話が進まないというケースも多い。
 
IoTがもたらすインパクトとは何か。それはビジネスにおけるさまざまなジレンマを解消し、ダイナミックに生産性を向上させることにある。
 
一般的に考えると、商品・サービスの高機能化や品質の向上といった「付加価値向上」を図ろうとすると、その分、労働時間も増え、業務効率は下がりがちである。一方、業務効率を追求し過ぎるあまりに、コストダウンや労働時間の短縮などを強引に進めた結果、商品・サービスの“付加価値削減”につながってしまうケースも散見される。
 
このようなジレンマを解消しつつ、付加価値も効率化も追求し、生産性を高めるのがIoTのインパクトである。その一方で、IoTを活用し、ダイナミックな生産性改革を実現する中堅・中小企業が増えつつある。例えばA社は、各地に設置された自動販売機に取り付けたFOMAユビキタスモジュール※から機器の稼働状況を遠隔監視し、自販機の稼働率アップや顧客満足度の向上、メンテナンス省力化を実現。結果として業容を拡大させている。
 
またB社は、これまで手書きで伝票を作成し、エクセルに手入力していた在庫管理を、今ではスマートフォンで代用している。バーコードや各種機器などの大規模投資を行わずに運用しており、生産性を高めている。
 
C社は、工具をデジタル化することによって、リアルタイムで加工状態を数値化・可視化した。そのため従来、ベテラン工員の経験と勘に頼っていた加工を、新人工員でもベテランと同様に加工することが可能となり、生産性を高めている。
 
※ NTTドコモが第3世代移動通信システムFOMA(Freedom Of Mobile multimedia Access)の無線パケット通信用に開発した小型の通信モジュールの名称。法人向けに提供され、企業が製品の在庫管理のような情報管理体制を築くこと容易にする
 
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