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Vol.3 ワークマン

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2021年7月号

 

 

 

 

客層拡大に成功した
「ワークマンプラス」のブランディング戦略

 

現場作業者向けの「ワークマン」から一般向けの「ワークマンプラス」、そして女性を重視した「#ワークマン女子」と、次々に新業態を展開するワークマン。客層拡大を続ける背景には、独自の経営と商品開発、マーケティング、そしてブランディング戦略があった。

 

 

“思わぬ発見”が客層拡大のヒントに

 

ロードサイドでよく見かける「ワークマン」店舗の看板が今、急速に「ワークマンプラス」に置き換わっている。看板には「プラス」という言葉が加わっただけだが、店内を見ると客層は大きく異なる。厳密に言えば、昔からのコアな客層である現場の作業者に加えて、一般の女性客が足を運んでいるのだ。わずか数年で大きな変化が起きたワークマンに、いったい何があったのだろうか。

 

発端は2008年のリーマン・ショックにさかのぼる。ワークマンは、群馬を拠点にスーパーマーケットやホームセンターなどを運営するベイシアグループの一業態として、1980年に1号店を開店。その後はテレビCMに演歌歌手の吉幾三を起用するなどして、知名度を高めながら、「職人の店」として全国へ展開していった。

 

同社は、「しない経営」を徹底してきたことで知られる。仕入れメーカーには「売れ残りの返品をしない」、フランチャイズ加盟店には「対面販売しない」「ノルマもない」、そして社員は「残業をしない」「仕事の期限を設けない」。こうした「しない経営」により、社員・加盟店・メーカー・自社の「四方良し」の経営で成長を遂げてきたのである。

 

ところが、リーマン・ショックを境に、それまで右肩上がりを続けてきた業績はストップしてしまう。売り上げ拡大策として始めたのが、オリジナル製品の開発だった。

 

「基本的にワークマンは常連の職人が来店する店です。そんな常連の方々の購入機会を増やすことで売り上げの増加を図りたいと考え、PB(プライベートブランド)製品を手掛けるようになりました。

 

その1つが、防水・防寒機能に優れた『イージス』というブランドです。北海道や東北など寒い地域での屋外作業や、雨の日の作業を想定したウエアを開発して購入機会の増大を図りました」

 

ワークマン広報部チーフの鈴木悠耶氏は、PB製品の開発を始めた背景をそう説明する。イージスは過酷な気象条件で作業する人を想定して開発した防寒服だったが、すぐに予期せぬ反響が生まれた。バイクに乗るライダーから、大きな支持を得たのだった。実際にイージスを愛用するライダーが、ブログなどで優れた防寒性を紹介し、運転時のウエアとしての利用が広がっていったという。ライダーとワークマンの双方にとって、まさに“思わぬ発見”であった。

 

この発見で、ワークマンは「職人」だけでなく「一般向け」としてもビジネスが成り立つことを知る。それが、一般向けの店舗である「ワークマンプラス」へと発展することになっていった。

 

 

アウトドア市場のブルーオーシャンを開拓

 

イージスで新たな客層を発見したワークマンは、その後、異なるカテゴリーのPBを立ち上げる。防水・防寒機能に優れたイージスのほか、アウトドアウエアの「フィールドコア」、スポーツウエアの「ファインドアウト」という3ブランドである。こうしたブランド展開により、ワークマンは職人だけの店舗ではなくなっていった。

 

「当社の経営戦略は『顧客拡大』です。同時に、他社と競合しないという経営方針もあります。職人に限定してきた市場で圧倒的なシェアを占めていた当社は、PB製品の開発・販売によりアウトドアウエア市場に参入することになったわけですが、そこは既存の有名ブランドがひしめく激戦区。ですが、徹底的に市場をリサーチした結果、ブルーオーシャンを見つけることができました」(鈴木氏)

 

空白だったのは「高機能」かつ「低価格」の市場だ。有名アウトドアウエアは高機能だが高価格。逆に廉価なアウトドアウエアは低機能なものがほとんど。そこでワークマンは、高機能でありながら低価格のPB製品開発に乗り出し、アイテム数を増やしていった。そして2018年9月、大型商業施設・ららぽーと立川立飛(東京都立川市)に初出店したのが、一般向け高機能ウエアを充実させた新業態「ワークマンプラス」である。

 

「当初はアンテナショップの位置付けでしたが、ふたを開けてみると、開店初日から行列ができるほどの盛況ぶり。まさしく予想外の反響で、社員も驚いたほどですが、同時に手応えをつかんだ瞬間でした」(鈴木氏)

 

ワークマンプラス専用の製品は一切なく、ワークマンでも扱うPBの3ブランドを中心に一般受けする製品に絞り込んでいる。この製品戦略も「高機能」「低価格」の秘訣と言えるだろう。実際、ワークマン店舗で1700アイテムを扱うのに対し、ワークマンプラスで扱うのは320アイテム前後。客層を比較すると、ワークマンは男女比が8:2だが、ワークマンプラスは5:5と一般女性の支持を得ている。

 

1号店の出店以降、積極的にワークマン店舗をワークマンプラス店舗へと業態変更してきたワークマン。その結果、3年足らずでワークマンプラスは272店舗(2021年4月現在)に増加し、アウトドアウエア市場に独自の地位を築いた。

 

 

 

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