TCG Review

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Vol.1 freee

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2021年1月号

 

 

「自社らしさ」を全員で認識・醸成する
freeeのリブランディング

 

 

freee
Brand Studio
クリエイティブディレクター小川 哲弥氏

 

 

誰もが「自社らしさ」を語れ、統一されたブランドコミュニケーションを取れる――。そんな状態を目指し、freeeがリブランディングに着手したのは2017年。当時の取り組みとポイント、今後の展望を聞いた。

 

 

「freeeらしさ」をつくるブランディングに着手

 

freeeは、中小企業向けの事務管理クラウドサービスを展開するフィンテック企業だ。Google出身の佐々木大輔氏を中心に2012年7月に設立。翌2013年、全自動のクラウド会計ソフト「freee」をリリースすると、その使いやすさが反響を呼び、わずか2週間のうちに約1600事業所で採用され、2万7200件の明細処理を実行した。その後も、クラウド給与計算ソフト、開業支援ソフト、意思決定をサポートするサービス、事業用クレジットカードなどを続々とリリース。急成長を遂げ、創業時3名で始まった同社は、5年目の2017年の秋には、350名を数えるまでになった。

 

その年の6月、代表の佐々木氏は自社の認知拡大に向け、ブランドコミュニケーションチームを立ち上げた。現在クリエイティブディレクターとして活躍する小川哲弥氏が入社したのも、同時期のことだった。

 

小川氏は出版系のデザインスタジオでグラフィックデザイナーとして活動したのち、自動車部品メーカー・デンソーに移り、アートディレクターとしてリブランディングに参画。

 

「面接時に当時のCMO※1からは『freeeらしさ』をつくってほしいと言われました。経営者と一緒に、ブランド構築を最上流からアウトプットまで携われる仕事は、面白いと感じましたね。自分の経験を生かしたいと思い、入社を決めました」(小川氏)

 

だが、いざ入ってみると、問題の多さは想像を超えていた。同社の場合、集客のほとんどはウェブ経由。SEOやリスティング広告で興味を持った経営者らをランディングページに誘導し、そこでクロージングまでを行うオンラインマーケティングを集客の柱にしていた。しかし、出稿されるデザインは担当するデザイナーによってバラバラ。ツバメが飛んで「freee」と軌跡を描くロゴマークこそ共通していたが、その色でさえ6色ものバリエーションがある。何より、ウェブ広告を読んで受け取る印象は同じ会社のものとは思えず、「らしさ」とは程遠かった。

 

「べンチャーでボトムアップ組織の当社には、手を挙げればどんどんアウトプットをしていける風土があります。ABテスト※2を繰り返して、より効率よく集客できる表現をどんどん開発していくわけです。それが会社の急成長を支えるエネルギーとなっていたのは事実です。

 

しかし、当社にはIT系出身者、金融業界出身者、コンサルティング系出身者、私のようなクリエイティブ系出身者など、さまざまな背景を持つ社員がいます。その出自によって価値観も当然異なりますし、広告で伝えるべきポイントにも違いが出る。加えてデザインもそれぞれ派遣のスタッフが担当したり、ツテをたどって見つけたデザイナーに依頼したりで、良くも悪くも自由な状態でした」(小川氏)

 

 

顧客にどんなメッセージを届けるか
経営陣とともに丁寧に言語化

 

文字の書体やロゴのカラー統一など、デザインのルールを作るよりも難しいのが、ブランディングの根幹に当たるコミュニケーションの設計である。顧客にどのようなメッセージを届けるか。どのような企業として認知してもらいたいか。そこがブレていたら、表面を取り繕ったところで、効果的なブランディングを行うことはできない。

 

しかも、これには社員の意識改革も必要になる。ただ売ることを目的とするだけでなく、そこから一歩引いてでも会社の姿勢を伝えるメッセージを作るよう、社員一人一人が頭をリセットする必要があるのだ。いわゆるインナーブランディングである。もちろん、一筋縄ではいかないが、小川氏は「この会社ならできるのでは」と感じていた。

 

「面接に対応してくれた役員、社員は5、6名いたと思いますが、みな同じ言葉を口にするのです。それが『スモールビジネスに携わるすべての人が創造的な活動にフォーカスできるようにする』という当時のミッションです。全員がミッションへ共感しているので、そこからアウトプットまでの道案内を整えることさえできれば、コミュニケーションをデザインすることができると思いました」

 

小川氏がまず行ったのは、社員に対するヒアリングだ。アウトプットを多く出していてキーパーソンと目される社員、デザインを担当している内外のスタッフなど、連日のように1対1で向き合い、どのような表現を行っているか、何を目的として広告を作成したか、どんな課題を持っているかをインタビューしていった。同時に経営陣やコアメンバーと週に1回2時間のペースでデザインの道案内となるフィロソフィーの言語化を丁寧に進めていった。

 

 

※1…最高マーケティング責任者
※2…インターネットマーケティングで行われる、施策判断のためのテスト

 

 

 

 

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