TCG Review

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Vol.8 組織と個人に働き掛ける勇気づけ1

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2020年6月号

 

 

【図表1】「褒める」と「勇気づける」の違い

 

 

技能オリンピックで前年の1.5倍のメダル獲得という結果を導いた「勇気づけ」とは?「勇気くじき」との比較で分かりやすくお伝えします。

 

 

そもそも「勇気づけ」とは

 

前回(2020年5月号)は、2014年に私がメンタルコーチを務めた、大手A社の技能オリンピック参加プロジェクトのケースを取り上げ、指導に当たる人たちが勇気をくじく言葉を発しがちなことに触れました。ところが、その反対の「勇気づけの言葉」を使っていると、その人たちの価値が高く見直され、自己肯定感が高まり、その波及効果として互いの信頼関係が生まれるだけでなく集団の活力も向上するのです。

 

そもそも「勇気づけ」とは何なのでしょうか?私は自著『勇気づけの心理学』(金子書房から2002年に発刊、現在は『勇気づけの心理学 増補・改訂版』)で、アドラーの言葉などを詳しく吟味しながら「勇気」を「困難を克服する活力」とし、「勇気づけ」を「困難を克服する活力を与えること」と定義しました。

 

こう書くと、「褒めていれば、勇気づけなど必要ないのでは?」という質問をいただくことになりそうです。しかし、私に言わせれば「褒めること」と「勇気づけること」とはまるで違います。確かに相手のプラス面を見てうれしい気持ちにさせるという点では、少しばかり共通点があるように見受けられますが、「褒める」になくて「勇気づける」にあるのは、今までに述べてきた「尊敬(リスペクト)」「信頼」「共感」「協力」です。

 

「褒める」の中には、極端に言うと「ブタもおだてりゃ木に登る」のように、相手を喜ばせて自分の思惑通りに操作しようとする態度が潜んでいます。それに対して「勇気づける」は、いったんは厳しい態度で臨んだとしても、長期的には相手に活力を与えるものです。そもそも勇気づけは技法である前に、相手との間に信頼の架け橋を築く態度なのです。

 

「褒める」と「勇気づける」の違いを対比してみると、【図表1】のようにまとめることができます。

 

 

 

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