TCG Review

サイト内検索

Vol.5 令和の時代に実現すべきマインド

1 / 2ページ


2020年3月号

 

 

前回(2020年2月号)は、「リスペクト(尊敬)」と「信頼」に続く大切な要素として「共感」を取り上げ、それが必要な理由を説明しました。今回は、「尊敬と信頼に裏付けられた共感」を支柱とする経営マインドについてお伝えします。

 

 

平成の時代に終わらせられなかった恐怖によるマネジメント

 

新元号・令和の時代に入って2年目を迎えました。「令和」を英語で表現すると「美しい調和」を意味する“ビューティフル・ハーモニー”だそうです。

 

思い起こせば旧元号「平成」の時代は、本誌2020年1月号(「2020年年頭指針」)の若松孝彦社長の表現をお借りすると「昭和の栄光の再来を期待し続けた時代」であり、特に日本経済は「失われた30年の時代」でした。

 

2020年(令和2年)はいよいよ東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。しかし、平成の後半には、昭和時代の再生動画を観るかのように、大相撲や女子柔道、女子体操、女子レスリング、ボクシング、テコンドーなど競技団体の組織運営で、強いタテ関係に基づく「恐怖によるマネジメント」の悪弊が相次いで報道されました。

 

スポーツ界だけではなく、経営の分野でも長時間のサービス残業強制や職場でのパワーハラスメントなど恐怖マネジメントによる不祥事が続き、克服できないまま令和の時代を迎えました。

 

ただし、恐怖に基づくモチベーション(動機付け)は、ある状況では自身と組織を守るために避けられない動機であり、短期的には効果をもたらす場合があることにも触れておかなければなりません。経営者は企業を存続させるために、幾多の恐怖の壁を乗り越えなければならないことがあります。

 

しかし、アドラー心理学のカウンセリング指導者である私は、なぜ恐怖がモチベーションとして長期的な効果をもたらさないかをお伝えしなければならない責務を帯びています。他者に対して恐怖によるモチベーションを用いると「三つのF」で始まる反応を呼び起こしてしまうことが、心理学で明らかになっているからです。

 

Fight(ファイト)……戦う
Flight(フライト)……逃げる
Freeze(フリーズ)……凍りつく(身動きが取れない)

 

「戦う」とは、「窮鼠猫を噛む」ということわざのように、ギリギリのところで自分の生命を守るために重要なモチベーションになり得ます。ただ、「24時間戦えますか?」。恐怖が続くと長期的にはヘトヘトになり、集団での離反を招きかねません。

 

また、恐怖による支配から逃れるために面従腹背することもあれば、コンプライアンス違反や犯罪行為に手を染めることにつながる場合もあります。

 

私が2019年2月に観た映画「七つの会議」(原作は同名タイトルの池井戸潤氏の小説)では、主役の一人である八角民夫(野村萬斎)が語るシーンで、恐怖に支配される企業風土は不正(データ偽装)に手を染めやすい構造であることが浮き彫りにされました。恐怖によって企業使命を忘れノルマ達成に走ると、企業犯罪に手を貸すかたちになってしまうことを、原作者の池井戸氏と監督の福沢克雄氏が告発しているように感じました。

 

最後の「凍りつく」という恐怖反応は、「蛇に睨まれた蛙」のように身動きが取れなくなってしまうことです。恐怖によるストレスからうつ症状を呈して休職に至るケースは、この反応の一つだと言ってもいいでしょう。

 

※三共(現・第一三共)の栄養ドリンク「リゲイン」のテレビCMのキャッチコピーで1989年に流行語となった

 

 

 

1 2