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【メソッド】

タナベ語録

タナベコンサルティンググループの経営コンサルティングの基盤となっている考え方を、各テーマに沿って紹介します。
メソッド2022.04.20

Vol.15 “プロ役員”の条件

 

「未来の業績に責任を持つ」のは誰か

 

未来の業績は、人材活躍、ビジネスモデル、イノベーションの掛け合わせで決まります(未来の業績=人材活躍×ビジネスモデル×イノベーション)。その「未来の業績に責任を持つ」のが、プロ役員です。

 

プロ役員に選ばれる条件として、①過去の実績、②勤勉、③誠実、④権限を乱用しない、⑤報告グセがある、⑥口が堅い、⑦健康、⑧セルフマネジメントができる、⑨役員の素養(事業センス・経営センス・リーダー力)がある、の9つがあります。

 

プロ役員の業務には、①経営理念に基づいた全社ビジョン構築への参画とトップの補佐、②担当部門のビジョン構築と方針・計画策定、③全社組織編成への参画と担当部門の組織編成(適材適所)、④部門間の調整と戦略推進、⑤部門長の部門運営サポート(業績対策、組織活性化、人事考課、人材育成など)、⑥部門長に対する評価と指導、⑦リスクマネジメントの実践(全社、部門)があります。

 

プロ役員に必要な能力

 

経営者には2つのタイプがあるといわれています。固有技術を生かして新たなマーケットを開拓し、事業を興すことが得意な事業家タイプと、管理技術、財務技術、人材をうまく使い企業を優良企業に育て上げることが得意な経営者タイプの2つです。

 

例えば、本田技研工業(以降、ホンダ)の創業者・本田宗一郎氏、ソニーグループ(以降、ソニー)の創業者・井深大氏などはまさに事業家タイプの典型でしょう。事業家タイプのトップの才能により事業が成長しても、企業経営は安定しません。

 

優良企業に成長させた創業者には、必ず補佐役としての名経営者がついていました。本田宗一郎氏には藤沢武夫氏という補佐役としてついていたからこそ、「世界のホンダ」と呼ばれるまでに成長しました。同様に、井深氏にも盛田昭夫氏が補佐役としてついていたからこそ、ソニーが世界的企業にまで発展したと言えるでしょう。

 

プロ役員に必要な能力は、経営者のタイプによって異なります。自社のトップが事業家タイプなのか、経営者タイプなのかをしっかり見定め、トップを補佐すべく自分の強みを生かし、役員の責務に取り組むことが大切です。

 

「いい社風」は役員がつくる

 

役員の究極の仕事は「良い社風」をつくることです。社風とは「土壌」であり、良い土壌が「良い木」を実らせます。

 

タナベ経営は「Step to Success(成功への階段―STSプログラム)」という手法を提唱しています。社風づくりという長い時間の軸で考えたとき、STSを踏まえ、戦略や経営行動を積み重ねていかなければなりません。

 

 

人事考課力は強い組織に必須

 

人事考課は、競争力のある社風を築くための人材づくりにつながります。そのためには、社員個々人の強みと課題を的確に把握することが必要です。

人事考課において役員に求められるのは「評価の一致」「部門長に対する評価」の2点です。

 

「評価の一致」について、トップと役員、部門長による社員への評価が一致しなければ、評価ルールそのものの信頼性を損ね、部門長の評価に対するトップ・役員の介入にもなりかねません。しかしながら、部門長による評価は部門内での判断に陥りやすいのも事実です。人事考課の最終決定は全部門長が参加する会議で行うなど、トップ、役員、部門長の評価を一致させる仕組みが必要です。

 

「部門長に対する評価」について、役員には担当部門の方針・目標の達成状況に応じて、適正に評価できる人事考課力が必要です。

 

 

計数センスとリスクマネジメント

 

計数という事実に基づき、次の手を打つのがプロ役員の役割です。目指していただきたい業績目標は次のとおりです。

 

【安定性】自己資本比率 50%以上
【成長性】売上高成長率 10%以上
【収益性】売上高経常利益率 10%以上
【生産性】1 人当たりの経常利益 300万円/年

 

リスクマネジメントについては、自社にどんなリスクがあるのかを確認した上でリスクを分析し、損失回避のための手を打っておくことが必要です。具体的には「発生頻度」と「重要度(影響度)」で整理します。

 

 

 

 

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